2015.12/27 微粒子の表面処理
高分子に微粒子を分散するために、その表面を修飾する方法はよく用いられる。カップリング剤や低分子配位子が使用される場合が多い。しかし困るのはその副作用である。
化学修飾された微粒子と高分子の組み合わせによっては、混練プロセスで微粒子から化学修飾した分子がはずれる問題がある。高分子と微粒子だけを混練してストランドを押し出したときには何も起きなかったが、化学修飾された微粒子を用いたときにダイスウェル効果を起こす場合は、微粒子表面の分子が発泡現象を引き起こしている。
低分子カルボン酸や低分子アミンで酸化物微粒子を化学修飾した場合などとナイロン系の樹脂と混練するとダイスウェル効果を起こすことが多い。ポリエステル系の樹脂でも起きる場合がある。教科書には、このような副作用について述べられていない。実体験して分かる実践知である。
それでは、このような場合の微粒子の表面処理はどのように行ったら良いのか。カップリング剤は一つの答えであるが、カップリング剤でも現象が起きた経験を持っている。おそらく一番無難なのは高分子の吸着機能を利用した微粒子の表面処理だ。
この技術については、特許出願を20年近く前に行っているが、あまりPRしていない。重要な実践知であり、暗黙知でもあるから、という理由ではない。写真学会からゼラチン賞を頂いているが、高分子学会技術賞は受賞できなかった。もし受賞できていたら公開していたかもしれないが、落選したので公開する機会が無くなった。
しかし、中国で混練技術の指導をしているときにこの方法をいろいろ試してみると、副作用の無い大変良い技術手段であることが分かってきた。過去に超微粒子シリカを分散したゼラチンの改質技術だけしか実績が無かったが、超微粒子の分散など高分子の吸着現象をつかった表面処理方法は現在のところ失敗は無い。日本の某企業で技術を公開したが、残念ながら採用していただけなかった。しかし、中国では砂漠に水をまくが如く何でも素直に吸収してくれる。