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2018.06/25 形式知の限界(3)

電気粘性流体がゴムからブリードアウトする成分で増粘する現象について、界面活性剤により解決できないという間違った科学的真理が導き出されたが、イムレラカトシュの指摘している否定証明により完璧な論理展開がなされていた。

 

さすがに優秀な研究員が担当した仕事だとわかる、模範的な技術報告書が書かれていた。転職する直前に記念に読ませていただいたが、科学論文として素晴らしかった。

 

しかし、実際にはたった一晩の実験により見いだされた界面活性剤で問題を解決できたのである。論文に書かれた証明の論理に誤りは無かった。間違っていたのは、界面活性剤についてHLB値でその特性を表現できる、としたことである(注)。

 

これは界面科学の教科書にも書かれている形式知であり、間違いではない。しかし、界面活性剤のHLB値は、十分条件ではないのだ。同じHLB値でも界面における機能が異なる界面活性剤は多く存在する。

 

ただ、ゼータ電位を計測してもその差異が現れなかったりする。現物のマクロ現象だけに、その特性が現れる。すなわち、形式知ですべてが解明されているように教科書に書かれていても、現場では教科書と異なる現象が観察されることは技術の世界でよくある。

 

当方は好んでそのような現象を研究対象に選んできた。困難なテーマをなぜ好んで取り扱ったのかといえば、誠実真摯に現象に対応すれば簡単に問題を解けるからである。

 

というとかっこいいが、早い話が手間暇かけて実験さえ手抜きをせずに素直に行えば解決策が見つかるからだ。試行錯誤も一つの手段だ。ただし試行錯誤の場合には、形式知で否定されるような実験も含めすべて行うようにしている。

 

科学的方法が20世紀には推奨された。しかしAIが普及し始めた今日、当方が行ってきた技術的方法が重要だと思っている。山中博士は、技術的方法の一つであるあみだくじ手法でノーベル賞を受賞している。参考にすべきである。

 

 

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