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2012.10/05 問題解決法のヒント

上司含め3人で無機材質研究所へ訪問しました時に、田中無機材質研究所長と面会し、その時新しい問題解決法を思いついた、と先日書きましたが、その時の状況と問題を選択するときの判断基準について。

 

高分子の難燃化技術から生まれたセラミックスの前駆体高分子という技術シーズを活用してセラミックス市場に参入する、というシナリオは、ブリヂストン研究開発本部内で認知されていませんでした。また、ファインセラミックスフィーバーの中心の話題はセラミックス断熱エンジンで、エンジニアリングセラミックスの開発にセラミックスメーカー各社は競っていました。しかし、会社内ではエンジニアリングセラミックスではなくエレクトロセラミックスを研究開発すべき、という意見も多く、エンジニアリング分野かエレクトニクス分野かという大まかな方向も決まっていない状況でした。すなわち当時の研究開発本部のセラミックスに関する企画内容は、外部のシンクタンクのレポートをまとめ直しただけで、具体的な研究開発テーマまで絞られていませんでしたので、Y取締役は研究テーマを決めなければならない難問を抱えていました。

 

無機材質研究所の訪問は、上司にゆっくりと自分の考えているシナリオを説明できる良いチャンスでした。すなわち小平市の研究所から筑波にある無機材質研究所まで1時間半かかりましたので、社有車の中でゆっくりと高純度SiC開発シナリオを上司に説明することができました。

 

無機材質研究所に到着して驚いたのはY取締役と田中所長が過去に名刺交換された間柄であったことです。田中所長が大阪工業試験所長をされていたときに、ブリヂストンが接着剤の研究に多額の寄付をされたそうです。新しい問題解決法のヒントは、その時の話題に触れた田中先生の石橋氏に対する感謝の言葉にありました。すなわち、「タイヤで日本一になった企業ならば、誰も達成できていないSiCの高純度化技術で世界一を狙うべきだ、そしてブリヂストンならばそれができる。」、という言葉です。さらに、「高純度SiC粉末を開発できれば、エンジニアリング分野でもエレクトロニクス分野でもどちらでも勝者になれる。将来パワートランジスタやLEDが伸びるので高純度SiC半導体技術は、一大市場を形成する。だから、高純度SiCの開発をやるべきだ」と説明されました。

 

このような「べき論」の発想は、問題を分析的に眺めていても出てきません。そもそも、「問題」は、「あるべき姿」と「現実」の乖離から生まれます。この乖離を無くすことが問題解決ならば、問題を解決するということは、問題を分析的に考えることではなく、「あるべき姿」への道筋を示すことであり、そのためには道筋のゴールである「あるべき姿」の具体化が問題解決に重要な作業である、と気がつきました。

 

「問題」というものが静的な世界で生じて変化しないものならば、従来の分析的思考の問題解決法で答えを出してもよいのでしょうが、混沌とした世界で動的に変化している問題に対して静的に分析して得られた答えが正しい答えには思われません。そもそも問題そのものが時間の流れの中で変化していますので、静的な分析は答えを求める作業として不適切に思われます。

 

ところが一般の問題解決法で展開されている分析的思考は静的な分析法と思われます。ファインセラミックスフィーバーのような動的な世界における問題解決では、未来のある時間にゴールを設定し、そのゴールから問題の核心にせまる方法、すなわち未来から逆向きの推論を展開する方法こそ動的な分析法とみなしてもよい方法と考えました。

 

ところで未来のある時間にゴールを設定した場合には、時間の流れの中の優先順位を考える必要があります。この優先順位については、ドラッカーが、「経営者の条件」の中で「どの仕事が重要であり、どの仕事が重要でないかの決定が必要である」と述べ、次の四つのルールを秘策として示しています。

a.過去ではなく未来を選ぶ。

b.問題ではなく機会に焦点を合わせる。

c.横並びでなく独自性を持つ。

d.無難で容易なものではなく変革をもたらすものを選ぶ。

この四つのルールは問題解決法において課題を選択し順序を決める時の判断基準になります。高分子前駆体を用いた高純度SiC合成プロセスの開発というテーマは、この4つのルールを満たしており、無機材質研究所からの帰り道は、この話題で盛り上がりました。

 

弊社「なぜ当たり前のことしか浮かばないのか」(注)では、この時考えた問題解決法につきまして解説しております。

 

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