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2013.12/26 パーコレーション転移制御技術

パーコレーション転移について材料科学の分野では未解明な部分が数多く残っている。数学的には確率過程で説明されるが、材料科学ではここへ材料固有の問題が加わる。すなわち高分子をバインダーに用いて導電性粒子をその中に分散し、半導体フィルムを製造しようとすると、溶融時の高分子の挙動が科学的に解明されていない場合には技術でこの問題を解くことになる。しかもKKDを働かせて科学的取り組みを行いながらモノを創り上げてゆく。


パーコレーション転移を材料設計で自由自在に使いこなすにはコツがある。詳細はコンサルティングで個別に請け負うことになるが、未経験で知識が無い場合にはカーボンと高分子1組成の単純な2元系のシステムでも隘路にはまる。


その結果、添加剤を加えて制御しようと試みる。パーコレーションに限らず材料のシステムは成分が増えれば増えるほど複雑になる。そもそも高分子という材料は多成分系である。そこへ全く構造の異なる物質を添加すれば見かけ上改善されても隠れた問題のために商品化で苦労することもある。


実際に問題解決を依頼されたケースでは、高分子AにカーボンXを添加して検討していたが抵抗が安定しないので高分子Bも加えて制御しようとした。2割ほど偏差が小さくなったが仕様に入らない。そこでXよりも微粒子のカーボンYを添加して凝集させようと試みたところ偏差が2元系よりも大きくなった。偏差が小さくなるときもあるので1年間タグチメソッドで最適化を試みたがロバストを上げることができなかった、という内容である。


故田口先生が聞かれたら、それはシステムが悪くタグチメソッドの責任ではない、と明快におっしゃるに違いない。パーコレーション転移の制御にはあたかも機械系のシステムのごとく最初にある程度の設計が必要である。カーボンの選択もその一つであるが、そのコツを書いた教科書や文献が無い。論文では現象の解説はあるが、解決方法を書いていない。


パーコレーション転移の問題は電気抵抗に限らない。実はフィラーを高分子に添加して力学物性を改善しようとするときにも現れる。しかしフィラーによる力学物性の改善は、せいぜい10倍程度なので電気抵抗のように100倍の偏差など生じない。それで問題になっていないだけである。


パーコレーション転移の科学は単純化されたモデルでうまく説明できるが、全ての材料システムに当てはめた科学理論、すなわち問題が発生したときに必ずこうすれば解決する、という理論はまだ無い。奥深い内容を含んだ技術の問題である。しかし、技術としてこうすれば良い、という経験則は存在する。ご興味のある方はご相談ください。


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カテゴリー : 一般 電気/電子材料 高分子

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