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2016.10/06 技術テーマを見つける

科学の基礎研究テーマに比較して、技術テーマは立案しやすい。もし新事業のエンジンとなるような技術テーマがなかなか見つからない、と言うのであれば、それは、新技術の考案がしにくい特別な風土かもしれない。
 
ゴム会社では、ホスファゼンに高純度SiC、電気粘性流体の増粘防止技術、傾斜機能粉体、微粒子分散型粉体、コンデンサー分散型粉体、ホウ酸エステルなど新素材に関わる技術テーマを多数企画提案し実現した。これらのテーマは転職後も引き続き検討され、高純度SiCの基本技術などは30年経った今でも事業で使われている。
 
なぜこれだけ多くの素材の企画提案、そして実現ができたのかは11月の講演会で明らかにするが、写真会社では自ら最初に企画提案したのは、退職間際の仕事から列挙すると、射出成型可能なリサイクルPET樹脂、カオス混合プロセス、酸化スズゾル帯電防止層、インピーダンスを用いた帯電防止技術、ポリマーアロイによる環境対応下引き技術など。ちなみに写真会社には20年、ゴム会社には12年勤めている。
 
その他の写真会社の仕事は、既に過去から存在したテーマの改良か、部下が立案してきた企画を磨き上げたぐらいである。ゾルをミセルにしたラテックス重合はホワイトボードに書いた下手な絵がきっかけになり、部下がそれを見て成功した企画である。
 
ゴム会社では担当者であり、写真会社では管理職という立場の違いもあるが、緊張感の影響も少なからずある。カオス混合プロセスの企画提案は、それを実行しないと単身赴任してそのまま惨めな退職という結果になりかねず、どうしてもテーマを成功させなければいけない立場だったので新技術を自ら企画提案し、それを用いた世界初の混練プラントまで立ち上げた。
 
ゴム会社では、怖い本部長から”まずモノ持ってこい”と叱られ、新技術による新素材を携えプレゼンすれば優しく褒められたので、一生懸命新技術のテーマを立案し、自分でモノを作る習慣がついた。
 
写真会社は皆が優しかった。職場環境そのものが優しく、同じ時期に転職してきた上司など毎日机で新聞広げていても誰も注意しなかった。
 
さすがにそれはまずいだろう、と思い、年下ではあったが注意したところその人に憎まれることになった。サラリーマンは難しい。最近はパワハラやモラハラが言われるので、厳しい上司はいなくなったが、アイデアを出すのに、良い意味で緊張感は重要である。
 
ゴム会社の本部長や研究所長を皆怖がっていたが、成果を出せば優しさ100%だったので、大変仕事をやりやすかった。新技術を考案するには、ある程度の緊張感が必要である。緊張感の乏しい風土では、日々の仕事を流していたほうが楽なので新しい技術を考えようとしない。緊張感があれば必死で考える。凡人には、この必死で考え汗を流す瞬間が必要である。ただし冷汗はだめ。11月の講演では、アイデアを出すコツとしてこの緊張感を自ら制御する方法も説明する。今は各種ハラスメントが騒がれるので皆が優しい時代となった。アイデアを出すためには自らを「適度に」追い込む必要がある。
    

カテゴリー : 一般

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