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2016.11/03 実験のやり方(1)

11月15日に開催される問題解決法のセミナー( https://www.rdsc.co.jp/seminar/161116 )について弊社へお申し込み頂ければ割引価格で受講可能です。今日はこのセミナーの内容について少し紹介する。
 
科学の世界では、仮説の正しさを検証するために実験を行う。ゆえに実験は仮説を確認するためだけに行え、と上司から言われている人も多いのではないか。ここで、ある現象は起きないので新製品に採用予定になっているこの機能は実現しない、という仮説を立てて実験を行った場合にどうなるか。
 
無事実験が成功し、狙った現象が起きなければこの仮説は正しいことになり、新製品に予定していた機能を断念しなければならない。これが否定証明である。イムレラカトシュが、科学で完璧にできるのは否定証明しか無い、と述べているように、これはスキルの有無にかかわらず誰でもできる。実験が下手でも失敗はできる。
 
否定したことが正しい仮説と信じて実験を行い、実験も否定的な結果となっているのだから誰もが満足する。当方は人生に一度だけこの否定証明を行い周囲の反感を買っただけでなく、プロジェクトから外されたが、これは、実験結果を出したのがプロジェクトスタート直後の時だったから、仕方がないとあきらめている。
 
このプロジェクトは結局二年後当方の予言通り失敗するのだが、プロジェクトリーダーは、最後まで小生がその機能を否定した一つの材料で技術開発をやり続けた。おそらく技術者としての意地があったのかもしれないが、小生が結論を出したのは熱力学第一法則と同じくらいの科学的真理だったから、太陽が西から上がるようにならない限り、そのプロジェクトの成功はないと思っていた。
 
ただし、このとき、ただ冷徹にプロジェクトの進捗を眺めていたわけではない。ポリオレフィンとポリスチレンを相溶させて透明な樹脂を作ってみたり、他の一次構造で耐久性がありそうなポリマーを提案したりしていたが、まったくプロジェクトメンバーに相手にされなかった。何故か知らないが、そのプロジェクトでは成功する可能性がほとんど無い、その一つの材料で開発を続けていた。
 
科学による技術開発を行う上での問題は、この否定証明である。科学的方法において否定証明は、実験も含めて完璧なロジックで進めることができる。一方で技術開発ではモノを創りださなければいけない。ポリオレフィンにポリスチレンが相溶する現象は、フローリー・ハギンズ理論に反する現象で科学的にみるとおかしい。
 
しかし、新物質を創りださなければならない技術開発では、正しい実験である。実際にそのときスペックに迫る性能をその新物質は示した。残念ながらスペックを満たしていなかったので採用には至ってないが、開発すべき方向を示していた。ただ、科学的におかしい現象と言うことで却下された。新しいモノはできていたが。

カテゴリー : 一般

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