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2016.11/18 模倣の勧め

イノベーションを引き起こす手法として、模倣と破壊が有効であることを技術開発の経験から見出した。問題解決法セミナーでも模倣によるイノベーション事例を扱っている。
 
無機粒子を焼き固めた材料をセラミックスというが、これを有機高分子から製造する技術を開発し、その技術は今でもゴム会社の事業として30年近く継続されている。製造プロセスが従来と全く異なるので、これは誰もが認める破壊的イノベーションで、日本化学会賞を受賞している。
 
破壊的イノベーションは、見てくれも良くイノベーションの効果も高い。しかし、効率はというと、ゴム会社における成果は、事業が立ち上がるまで6年、いわゆる開発のdeath valleyを歩くことになった。日本化学会技術賞を受賞したのは、研究開始から15年後だった。この時当方は写真会社にいた。
 
写真会社における最初の成果は、酸化スズゾルをもちいた帯電防止層の開発で、これは搭載された商品が印刷学会から、技術については日本化学工業協会の二カ所から賞を頂いている、イノベーションを起こした技術だ。
 
しかし、これはゴム会社の経験を活かし、破壊的イノベーションのスキルを封印して模倣によるイノベーションでどこまでできるのか試してみた成果である。すなわち特公昭35-6616という今は存在しない小西六工業という会社の技術をそっくり真似たのである。
 
ただ、当時は、「模倣してます」と大きな声で叫べないので「温故知新」戦略と言いながら技術開発を進めた。それも1950年代に数学者が議論していたパーコレーション転移を看板に掲げて温故知新と叫んでいた。古いモノを寄せ集めまとめただけの技術だった。ただし、それらは新商品に搭載されイノベーションを引き起こした。
 
昭和35年の特許を真似た技術は、開発を始めて3年で商品になり、5年後に印刷学会から、8年後に日本化学工業協会技術特別賞を受賞した。模倣は効率が良いのである。そして模倣でもイノベーションを引き起こせるのである。
 
温故知新という言葉は、まさに模倣によるイノベーションを推奨していると思っている。そして模倣されて優れた技術が生まれ、次の時代に語り継がれると、不易流行となる。その時、物事の本質が解ってくるのである。
 
酸化スズゾルの技術では、確率過程のパーコレーション転移がプロセスの中でどのようにばらつくのか明らかにされた。化学工業協会からの受賞はこの一点が評価されたからだ。模倣により技術を作り、科学で本質を探る技術開発は、弊社問題解決法が提案している一つの方法で、TRIZやUSITよりも問題解決力は高い。
 
模倣なら誰でもできる。さらに下手な人が模倣すればオリジナルと区別がつかなくなり、独創になるかもしれない。

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