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2017.03/16 ブラックと疑われる大学の研究室

「不正を暴いて波風を立てることにメリットがない…
学生や研究員を追い詰めるような「ブラック研究室」は研究不正の温床になる。学生にとってはブラック研究室の実態を暴くことにメリットはなく、目標にはなり得ない。研究室から円滑に卒業し、就職やステップアップなど次の活躍の場を得ることがゴールだ。そのためには不正を暴いて波風を立てることは合理的でない。果たして倫理教育で学んだモラルはどこまで有効なのだろうか。」

 

以上は、昨日WEBニュースの記事の引用である。この記事では、先生の指示で実験を行っているが思ったような結果が出ない。どうも先生の仮説が間違っているようなので異なった実験で先生の意図されるようなデータを出して卒業した学生の事例なども紹介されている。

 

科学における捏造の問題は、20世紀末から多くなったのではなかろうか。記事に紹介されているような先生から請け負ったテーマでデータが出ないときに先生の顔をつぶさないようにデータを捏造する学生の話を聞いたことがない。

 

昔は学生と先生が対立することが多かったので、先生が無能と気がついた学生は、さっさと異なるテーマを立案し、研究を進めた。大学の先生も先生で、そのような元気のよい学生のご機嫌を損ねないように卒業させていた(注)。

 

大学のテーマ管理が今ほど厳しくなく、どのような研究内容でも論文が出ればよい、という研究室もあったくらいだから、捏造の問題は起きなかったのだろうと思う。今や研究費を獲得するために研究の競争が激しくなってきている。それが捏造を生み出す背景にもなっているように思う。

 

ただ、学生の姿勢にも問題があり、やはり不正は自らの卒業に心配があったとしても正すべきである。仮に卒業が危ぶまれたとしてもそのような学生を大切にする社会でありたいと思う。

 

(注)大学院に進んだときに教授から「ホスホリルトリアミドの重合」という研究テーマを頂いた。文献調査をしたところ、10年以上前に特許出願があったうえに研究発表も十分に成されていたテーマだった。助手の方から、さっさと他のテーマを研究した方がよいと言われ、当方もそのように感じて他の先生にも相談したりしたら、あの先生の出されたテーマで最後まで研究した学生は一人もいない、と言われた(このような状態でも大学教育が社会で認められていた時代でもある)。この一言で、教授の出されたテーマで論文を書いてみようという気持ちになった。ホスホリルトリアミドとホルマリンとの共重合体やホスファゼンとの共重合について研究し、修士論文は「ホスホリルトリアミド及びその誘導体の重合」というテーマでまとめるとともに、二年間に3報論文を発表することができた。この研究がゴム会社に就職したときに、ホスファゼン変性ポリウレタン発泡体やフェノール樹脂発泡体の無機高分子による難燃化研究に役だった。そして、30年以上も事業として続いた高純度SiCの前駆体高分子(ポリエチルシリケートとフェノール樹脂のコポリマー)の発明と実用化に至っている。科学の研究は捏造など考えず誠実真摯に行うべきである。当方の調査結果を基に、教授がどのような意図でテーマ立案されているのか直接説明を伺っても当方には理解できなかったので、さっさとテーマを放り出そうとも考えた。しかし当方は、まず教授を信じることにした。師と生徒の関係はまずそこから始まる、というのはそのときの亡父の名言である。その結果、有機金属化合物が多数研究されていても、当時それらは有機物から眺めた応用展開であり、無機物から眺めた誘導体の展開については一部のリン酸系に限られていて研究テーマの化合物の誘導体についてはまったく研究されていなかったことを見つけた。

カテゴリー : 一般

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