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2018.03/07 高分子材料の難解さ

高分子材料技術に関し門外漢が勉強しようとしたときにまず困るのは適当な教科書が無いことだ。絵解きの初心者用の書物も存在するが、それを読んでもすぐに実務では役立たないだろう。

 

実は最近絵解きの初心者用モータ技術に関する本を購入したのだが、これがたいへんわかりやすかった。そして読んだ後、すぐに新しいアイデアが浮かんだ。残念ながら思いつきのアイデアに関して最近類似の特許が提出されていた。

 

残念な結果ではあったが、このきっかけで、分かりやすい本とは、と考えるととともに、なぜ高分子材料にこのような本が無いのかと考えてみた。

 

同じ材料に関しても、金属やセラミックスに関しては材料からそのプロセシングに至るまでの初心者用の適当な書物があるのに、なぜ高分子材料に関しては普遍的と呼んでもよいような初心者用教科書が存在しないのか。

 

一つの原因として、日常接している高分子材料でできた製品の特長について一応の理解をするために、形式知だけで説明できないことが考えられる。

 

金属やセラミックスについては、形式知だけで何とか分かったような感覚になる説明が可能だが、高分子では例外事項が出てきて説明する側も苦労する。原因は、高分子の一次構造がそのまま製品物性に現れている事例が少なく、高次構造を持ち出さないと説明しにくいからと思われる。

 

その高次構造について形式知がどのような状況かというと、最近は階層化構造という認識が一般的であるが、研究者により微妙にその階層化構造のイメージが異なっている。困ったことに階層化構造の形式知が固まっていないのにメソフェーズの研究が盛んに行われていることだ(階層が分かりにくいのでメソフェーズ構造の研究がなされている、が正しい認識かもしれないがーーー)。

 

すなわち高次構造認識は、まだ確定した形式知が存在しないために、高分子研究者それぞれの思いの認識で研究が進められている状態と言ってもよいかもしれない。

 

セラミックスでも40年ほど前は研究者により材料認識が異なっていた時代があった。すなわち結晶を研究している研究者の認識と古典的に混ぜ合わさった焼き物を研究している研究者とは、大きく異なっていた。

 

焼き物の研究者の説明を聞いても門外漢にはさっぱり理解できなかったが、結晶の研究者の話は論理的でわかりやすかった。セラミックスフィーバーはこのような状況を一変した。そのフィーバーのさなか、古典的な焼結理論に関する激論があった。

 

自由エネルギーをもとに展開された新説を速度論と勘違いされている大御所の先生がおられた。思わず自分が無知であっても新説を素直に理解できたので自信がついた。やはり、科学では、まず論理的に現象を説明できなければいけない。論理的な説明であれば、偏見が無い限りその理解について勉強すればだれでも可能になる。

 

形式知の良いところはこのような点だが、高分子材料の形式知に関しては一次構造以外についてうまく整理されていないように思われる。だから、高分子材料に関してもセラミックスで展開されたような激論がなされるべきかもしれない。力学物性については、かなり情報がそろってきたように思われる。

 

 

カテゴリー : 一般 高分子

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