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2022.08/30 情報化時代の技術開発(13)

情報化時代でも正しく評価できなければ、伝承されない技術があるという話。


PPSという材料は、ようやく普及期に入ったエンプラである。国内ではそれでもコモディティー化していない。リニアタイプPPSは2000円前後の価格で推移している。


これは寡占状態のためであるが、今中国では安価なPPSが流通している。架橋型では1000円前後のPPSも存在し、リニア型でも安い品種は1500円以下である。


中国製PPSが日本製よりも品質が低いのかと言うとそうではない。コンパウンド状態で比較すると、中国製のPPSコンパウンドが日本製よりも品質が高かったりする。


PPSの合成はそれほど難しい技術ではないので中国でも簡単に量産技術が確立されたのだが、コンパウンド技術になると合成技術よりも難易度が高く、コンパウンドメーカーによりレベル差が生じる。


PPSのコンパウンディングの難しさについては、この欄で紹介している15年以上前の当方の体験談で理解していただけると思う。すなわち半導体無端ベルトの押出成形用コンパウンド開発の話である。


押出成形で歩留まりを10%以上に上げられないので6年間国内一流コンパウンドメーカーと共同開発してきた前任者が当方に、リーダーの席を交代してくれと言ってきた話である。


さて、15年前一流コンパウンドメーカーの技術者に押出成形ではコンパウンドの出来不出来の影響が大きいから、当方の提案のように改良してくれ、と頼んだら難色を示された。


それで、仕方なく当方は中古混練機を買い集め頭に描いた技術でコンパウンディングを行い、成形歩留まり100%を実現できるコンパウンドを3か月で開発している。


それゆえ十分に製品化まで間に合ったのだが、この時の当方の技術について国内では知られていない。その結果、国内のPPSコンパウンド技術は、ほとんど進歩していない。


ちなみに、この時は瞬間芸的に技術が開発されたのであり、研究時間も無かった。それゆえ退職までブラックボックスどこらか、その中身も空っぽだった。ある意味、モノだけできたのだがどうしてできたのかわからない状態で退職している(注)


ところが退職前に某大学の副学長から学会賞の推薦を受けたので、あわてて当方の仮説も含めプレゼンテーションしたら、その審査会で非科学技術を理由に落とされた。


たまたま、部下に中国人がいて、国内で評価されないならば、中国ナノポリスで研究を続けたらと当方に提案してくれた。それでコロナ禍直前までナノポリスで新しい混練技術の研究ができた。


ただし、研究の成果は当方の頭の中にあるのだが、技術だけが中国で独り歩きしている。もし日本製のPPSコンパウンドで不満点があれば弊社にご相談ください。


カオス混合や剪断混練は、それを実現するためにノウハウを学ぶ必要がある。しかし、技術として真似るのは簡単であるが、それを科学で理解しようとすると実現できない技術である。例えば安直に剪断混練をしようとするとトルクオーバーが起きる。



(注)当方はゴム会社で混練技術をマスターしていたのでノウハウを熟知していた。すなわち40年以上前にゴム会社で防振ゴムの開発を担当した時に指導社員がカオス混合技術を教えてくれた。京都大学大学院を出られた一流レオロジストで大変頭の良い方だったが、ゴム会社で出世が遅れていた。そしてカオス混合技術について連続式混練機で実用化できれば、ゴムの混練を合理化できるかもしれない、それが当方の宿題だと言われた。写真会社で退職直前に宿題を完成できたのだが、この指導社員の教えを基にゴムタイムズ社から混練に関する書籍を出版している。

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