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2023.05/04 データサイエンスの力

例題2において、5年以上の開発期間におけるデータを多変量解析で整理すると、典型的なもぐらたたき状態が見えてきて、開発開始時点からコンパウンドについて何も改良がなされていないことに気がついた。


開発開始前からコンパウンドメーカーより特許出願されていたPPSの靭性改良のためにナイロンを添加した程度の進歩が成果として認められてはいたが、その結果、パーコレーションの問題を複雑にしていた。


また、ナイロンを添加しなくても、PPSを非晶質で押し出せば、ナイロンの添加されたPPSと同程度のMIT値が得られたので、この仕事を引き受けたときにはコンパウンドメーカーの特許を大した発明に思わなかった。


ちなみに、当方が担当して半年後には、PPSとナイロンを相溶させて押し出すことに成功しMIT値が10倍になるベルトが完成している。靭性が10倍まで上昇すれば、それだけで大発明である。


パーコレーションの問題をデータサイエンスで解き、その目標を実現するためには、PPSとナイロンを相溶させなければいけない、と結論が出たので、それを実行しただけだが。


その結果、力学物性と電気物性の二律背反問題を一度に高いレベルで解決できた。ただしこれは科学の方法で考えていては出せない成果だった。


コンパウンドメーカーの技術サービス部長から素人は黙っとれ、と言われたので、黙ってデータサイエンスで解析し、コンパウンドメーカーも了解した工場を建てて、歩留まりが100%となるコンパウンドを原材料や配合を変更せずに実現したのである。


あれからもう20年近く経過した。今でも生産が続いている、と風の便りに聞いているが、データサイエンスで発明した高純度SiCと、このベルトのコンパウンドの発明は、データサイエンスの力なくして得られなかった成果である。高純度SiCの事業は、その発明から40年以上続いている。


データサイエンスによる問題解決法は非科学的であるが、科学の方法では当たり前の結論しか得られなくて問題解決に苦しんでいる人は、一度試してみることをお勧めする。当たり前の方法で集めたデータにとんでもないイノベーションを引き起こすアイデアが潜んでいるかもしれないのだ。

カテゴリー : 一般

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