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2023.07/31 イノベーションに適した風土

昨日やや暗い書き方になったが、日本の大企業でもイノベーションを起こしやすい風土がある。今もその風土が残っているのか知らないが、早期退職するまでの5年間在籍した職場は、快適だった。


昇進とか処遇の問題は、定年前の年齢であり諦めていたが、最後に一発ぐらいホームランを打ちたかった。それが2発も3発もチャンスが巡ってきたのである。


打っても報われないホームランとわかっていた3発目だが、ダイヤモンドを廻ってくれた後輩が、社長賞の記念品を退職した当方まで送ってくれた。これには少し涙が出た。


特許にも当方の名前を残してくれていたので報償金が今でも届く。このような組織もあるのだ。ただ、会社全体がそうではない。その組織だけかもしれないが、一つの会社で異なる風土の組織が生まれるのは大きな会社では起こりうる。


さて、早期退職前に単身赴任した組織だが、それは事業統合した会社にあった複写機の生産技術を研究から調達まで担当する組織だった。商品発売まで半年しかないところで、生産歩留まりが10%もいかない仕事のリーダーを代わってくれと言ってきた部長がいた。


植木等のような調子のよい部長である。うまくゆけばその方が偉くなれるが、うまく行かなければ当方の責任となる。統合前当方が所属した組織の部長なら、マイナス条件を隠しおだてて依頼してくる。説明された業務内容は当方にとって良いことは何もない。


しかし、解決策について基盤技術も何もなく、さらに世界のトップクラスのメーカーが供給しているコンパウンドの設計が誤っていることがわかったので、その部長が言うように世界を探しても当方以外の誰もできない仕事であることは明白だった。


成功しても評価されない仕事を引き受ける人などいないだろう。それも当方の考えた解決策が成功しなければ失敗することが確実な仕事であり、大ホームランを打てるチャンスだった。


単身赴任して驚いた。あと半年しかないにもかかわらず、その組織に悲惨さが無いのだ。当方が単身赴任したことで、問題が簡単に解決するとメンバーの大半が信じている。


解決策についてコンパウンド供給メーカーにも技術が無いので、自前でコンパウンドの設計をやり直す以外に問題解決法は無いのだが、3か月でコンパウンド工場を建てる計画(この計画自体混練技術を理解しておれば笑っても良い計画だが)に反対したのはただ一人、統合前の当方と同じ会社出身の課長だけだった。


ゆえにその課長の気持ちと考えていることをよく理解できた。たとえ失敗してもうまく仕事をまとめたかったのである。当方はチャレンジすることの説得を最初から諦め、上司を口説く戦略を練った。


しかし、風土を信じてストレートにチャレンジ案を説明したら上司のセンター長は、問題解決できるなら決裁権限上限までの予算を使ってよい、と気前よく賛成してくれた。


それで中途採用で若い技術者一人採用し、現場で退職前の技能員一人異動してもらって、プロジェクトを立ち上げた。反対した課長に当方の権限を委譲しマネジメントを任せたので全面協力が得られた。


そして、当方は週末根津にある混練機の会社メンバーとともに装置開発を行い(東京までの交通費は自腹を切っているが、混練機の勉強をするには良いチャンスだった。)、無事3か月でコンパウンド工場を子会社の敷地で稼働させることができた。


カオス混合が可能な最新工場で、そこで生産されるコンパウンドを使用すると10%以下の製品歩留まりが一気に100%になった。大ホームランである。コンパウンド会社ではない写真会社でこれは大きなイノベーションだが、高純度SiCの事業化経験を大いに活かすことができた。


この仕事では、ドラッカーが言っていたように、貢献と自己実現の働きとなったが、サラリーマンの最後は睡眠時間を忘れるほど勉強できて気持ちよく仕事もまとまった。すなわち、統合相手の組織は、このようなチャレンジに協力的でQMSの問題も各部門の部長が解決してくれたのである。


企業内のイノベーションが成功するためには風土が極めて大切である。たとえ反対者がいたとしても、チャレンジを支える組織風土さえあれば、成功確率は高くなる。


野球のホームランはバッター一人の力量の問題だが、業務でのホームランは、それ以外に組織全体の協力があって初めてホームランとなるのだ。ゆえに組織風土が大きく影響する。


ビッグモーターではゴルフボールで傷をつけると儲かることが分かり、それを歓迎する風土だったため今回の事件になったのである。

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