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2023.09/28 まず何から学ぶか(1)

当方がデータサイエンスのスキルを身につけた体験談を書いてきたが、30年ほど前までデータサイエンスに対する技術者の関心は低かった。また、高学歴で科学の方法を十分に学んだ人ほどデータサイエンスを毛嫌いしていた傾向が強い。


ゴム会社では、新入社員に1人50万円ほどかけて日本科学技術連盟のベーシックコースを1年間学ぶ機会を提供していたが、それでも研究所では統計手法は普及しなかった。それゆえタイヤ開発部門と研究所とはQCに対して意識の違いが大きくなった。


これは、非タイヤ部門の化工品事業で品質問題が多かったことと無関係ではないだろう(注)。研究所では非タイヤ部門のテーマが研究されており、タイヤ部門の基礎研究については、タイヤ基礎研究部という組織が存在していた。


すなわち、基礎研究部門がゴム会社には二つあり、タイヤの研究テーマを扱っていなかった研究所では、徹底して科学の方法が重視されていた。新入社員として配属された時に大学よりもアカデミックな雰囲気でびっくりしたぐらいである。


ゆえにアカデミアよりも研究レベルが高い分野も存在していた。とりわけ分析技術については世界一ではなかっただろうか。高分子の難燃化研究グループには、世界中の難燃性評価装置が揃っていた。


科学一色の中でデータサイエンスの研究を開始した経験から、まず何を学ぶべきか、と聞かれたならば、統計手法の基礎を勉強することが大切とお伝えしたい。


ただし、統計手法も全部を学ぼうとすると社会人ならば1年以上かかると思う。ちなみに日科技連のベーシックコースは1年で統計学の基礎を学べるようになっていた。


基礎のコースでも毎月の課題消化に大変だった。上司経由でテスト結果が届いただけでなく、修了証をもらえなかった場合には、研修でかかった費用を給与から天引きされるルールとなっていた。


ゆえにデータサイエンスを使いこなすために必要な統計学について、すべてを学ぼうとするとデータサイエンスを実務で活かせるようになるには3年かかるのではないか。


実際に当方は3年かかっている。3年かかって統計手法および多変量解析を自由自在に使えるようになって、科学で解けない問題を短時間でデータサイエンスで解けるようになった。


そしてそれだけのスキルを身につけたら殺されそうになったのである。会社方針を真面目に実践するのに、研究所では命がけだった。


その体験から言いたいのは、統計学でも学ぶべきことを選択し身につけてゆかないとデータサイエンスを使えるようになるまでに時間がかかってしまう、というアドバイスである。


また、データサイエンスについては、マテリアルズインフォマティクスのような側面と、科学で解けない問題を何とかして解きたいというニーズに応える側面とがある。


順次、これらについて経験談を書いてゆこうと思うが、すべてを書かないことを了解していただきたい。すべてをここに書いたら、弊社としてセミナーを開催している価値が無くなる。


弊社ではデータサイエンスを実務に適用しようと奮闘努力した経験から、そのスキルを短時間に身につけるカリキュラムを用意している。


(注)タイヤ部門のスタッフと化工品部門のスタッフでは、明らかに品質に対する考え方が異なっていた。研究所では品質を口にするだけで軽蔑される風潮があった。しかし企業の研究所がアカデミアよりアカデミックであることなど自慢できない。企業では、研究部門においても品質重視こそが重要で、そのうえでアカデミックであることを自慢すべきだろう。もし研究所の経営に困っている企業があれば、ご相談いただきたい。かつてU本部長が書かれた3冊の著書の続編にあたる技術経営について指南いたします。

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