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2024.02/06 コンピューター

1979年ゴム会社に入社したが、ゴム会社は二つの文化(二つの問題解決法)が共存する会社だった。タイヤ関係の部門は先進的で柔軟な考え方の優れた管理職が多かったが、研究所は科学の哲学で固まった管理職ばかりだった。


タイヤ関係の仕事はKKDだと研究所では馬鹿にしていたが、当方は、その研究所のメンバーがバカにしていた組織から大変多くのことを学んだだけでなく、今の時代を生きていて、本当に良かったと思える風土だった。来年就職活動をする学生に一推しできる企業であるが、タイヤ開発を希望するようにアドバイスしたい。


なぜなら、プレゼンテーションの内容も学会のような研究所に較べると多士済々生活感のあるプレゼンテーションで役に立ったからである。大学では習わない典型的なQC手法の発表が多かったが、研究所がKKDとバカにする理由がわかるような発表が役に立ったのである。


仮説を立てて実験を行い、現象に潜む謎に挑む姿は、確かに素晴らしいが、それが否定証明になったなら何をやっているのかわからない。当方にはKKDであってもモノができる発表の方が、企業では否定証明よりも優れていると思っている。経営者は、この点に配慮しMOTをしなければ、研究所の運営がおかしくなる。


世界一のタイヤ会社の技術を支える技術者集団をKKD集団とバカにしてはいけない。眼力によりヒューリスティックなアイデアを即実行できる決断力の優れた技術者集団なのだ。同期の技術者を見ていても優秀な人ばかりだった。


彼らの問題解決法は、科学のそれとは異なるところがあり、それを科学で体系化したのが弊社の問題解決法である。古くから、データ駆動の研究開発手法がタイヤ部門では行われていた。


その合理性に論理性を加え、当方は研究開発をゴム会社で行ってきた。それが鮮明に現れたのが、電気粘性流体の耐久性問題である。


電気粘性流体の耐久性問題では、ゴムのケースに封入して用いる限り、界面活性剤の添加で解決できない、とした否定証明を本部長は、「世界に先駆け、電気粘性流体の問題を明らかにした素晴らしい研究だ、添加剤も加硫剤も何も入っていないゴム開発を急げ」と檄を飛ばし、当方に白羽の矢が立った。


当方はコンピューターを使った問題解決法を長年自腹を切って研究してきたので、タイヤ部門で学んだ知と合わせて一晩で界面活性剤を用いて電気粘性流体の耐久性問題を解決し実用化レベルへ持ち上げた。これはタイヤ部門のプレゼンテーションから学んだ知のおかげである。


タイヤ部門ではコンピュータを早くから業務に取り入れていた。RCOTやTCOTの商品開発はコンピューターのなせる業である。研究所ではコンピューターを使っていると遊んでいると言われた時代である。


コンピューターの良いところは、人間よりも早くデータを処理できるところである。8bitコンピューターでも5000件以上のデータを1時間程度で処理できた。電気粘性流体の耐久性問題は、科学とは何か、そして科学の時代に生まれたコンピューターの威力を知る大変良い問題だった。

カテゴリー : 一般

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