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2025.03/03 自己組織化

表題のテーマは1990年前後から無機高分子研究会で議論されるようになった。1980年前後には無機材料関係の研究者の間で貝やサンゴの組織構造が話題になっていた。


無機材料の研究では結晶が主人公となるが、高分子材料では結晶構造が物性を制御している例だけではないので、古くから高分子については高次構造という言葉でひとくくりになっていた。せいぜいDNAのらせん構造が二次構造と呼ばれていたぐらいである。


また、その結晶構造の研究が進んだ結果、高分子で現れる結晶構造はラメラの集合体である球晶であり、無機材料のように多種の結晶構造が出現するわけではない。また結晶成長の速度論はアブラミ一決である。


ところで物性と構造との関係において、無機材料では、強相関材料が古くから概念としてあったが、高分子では2000年前後に強相関ソフトマテリアルという言葉がようやく使われるようになった。


材料の物性や機能が、構造により制御されていることが明確になれば、その構造設計を行うことで自由に材料の機能や物性を制御できることになる。


無機材料では、結晶構造の制御で機能性材料を創製する技術が進歩したが、高分子材料では、どちらかと言えば氷壁という小説がベストセラーとなってナイロンの結晶構造が社会から注目されたり、私がスキーに連れて行ってもらったら骨折しちゃった(注)という不幸な出来事から組織構造の科学が進歩したように思える。


そして高分子分野では1990年前後から積極的に自己組織化を研究するようになったのだが、これが面白いのは、自己組織化でどのような機能が現れるのか、研究者が明確にそれを保証せず、ただ組織を組み立てることに夢中になっている。


だから30年経っても高分子関係における自己組織化という研究テーマは、セラミックスフィーバーのようなあるいはナノテクブームのような材料のイノベーションの主役となっていない。


どちらかと言えばナノテクブームにおいて便乗商法的な研究が多い。今月のゴム協会におけるシンポジウムではここまでの厳しい表現をせず、考え方のヒントを提案する。


(注)「私スキ」はバブル期1980年代末のヒット映画だが、その直前には、ABS製のスキー靴が簡単に壊れ骨折する事故が多発している。しかし、原田知世の方が有名となったが、ABSスキー靴の問題は忘れ去られた。ABSの改良がなされ、安全でファッション性のあるスキー靴となり、映画がヒットしたのである。

カテゴリー : 一般 高分子

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