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2025.04/18 AIブームと不易流行(6)

過去の2度のAIブームでは、例えば創薬のデザインなどの特定の専門分野に特化したエキスパートシステムを提供できた。しかし、今回のAIブームで登場した生成系AIでは、知を学習データに表現して人間のように柔軟に答えを出してくれるので、一過性のブームではなく、AIの本命と期待されている。


但し、データとなる知識を明文化しなければいけないので、形式知と経験知しか扱えない。それでも生成系AIに接していると、あたかも人間と話しているような錯覚になる。


しかし、人間のヒューリスティックな回答の動作とそれが本質的に同じかどうか不明である(注1)。現在のAI(大規模言語モデルLLM)は、推論型モデルを含めて、本質的に暗黙知を獲得することはない。



しかし、ChatGPTに搭載されているメモリ機能やRAG(検索強化生成)を活用することで、過去の情報を参照し、あたかも暗黙知から経験知を創り出しているかのような振る舞いを見せることはある。


ただし、これは人間の暗黙知による活動とは異なる。つまり、AIが暗黙知を持っているように見えても、その動作は外部情報の言語連鎖を活用した疑似的連想であり、技術(注2)や芸術の創造を促す人間の暗黙知とは異なる。


AIの本命と言われている生成系AIではあるが、人間が暗黙知から芸術や技術(注3)を生み出すような動作は、まだ確認されていない。


(注1)

ChatGPTのo1、o3モデル、GoogleのGemini Flash Thinking、Deepseek R1は推論型モデル(Reasoning Model)と呼ばれ、内部で「reasoning」という処理を行っている。これは一度生成した回答をそのまま確定させるのではなく、自己修正(Self-Reflection)や試行錯誤を繰り返し、より良い解を求めるように動作をしている。これは、従来の言葉の連想ゲームのような動作ではなく、探索木(Tree Search)のように「分岐して戻る」動作に近い。最近の研究(Aoki et al., 2024、https://arxiv.org/pdf/2406.16078)では、LLMが推論を行う際、まず直感的な推測(ヒューリスティック)を行い、その後、より論理的な精査を加える動作をしていることが確認されている。

(注2)

技術の中には、試行錯誤を繰り返し目標とした機能を生み出して出来上がった、科学の成果ではない技術も世の中には存在する。試行錯誤では、暗黙知の寄与によると思われる閃きで飛躍的な成果が生まれる場合がある。

(注3)

カオス混合装置や高純度SiCの合成法、FDを壊されたりする嫌がらせを受ける原因となった電気粘性流体の耐久性防止技術、写真学会から賞を頂いた有機無機複合ラテックスは暗黙知の成果で、瞬間芸のように技術が生まれている。データサイエンスによるデータ駆動の手法は暗黙知を刺激する方法である。

カテゴリー : 一般

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