2025.05/14 耐熱性高分子
耐熱性高分子の研究は1970年代まで高分子化学の中心的テーマだった。しかし、それが空気中で燃焼するという問題を克服できず、高分子の難燃化研究が生まれている。
1980年代にはリン酸エステル系難燃剤が多数販売され、1980年中ごろに臭素系難燃剤が発表されるや否や、臭素系難燃剤と三酸化アンチモンの組み合わせ難燃剤へ研究の関心が移ってゆき、一大市場を形成した。
しかし、環境問題の関心が高まるにつれ、ノンハロゲン系難燃剤へ、と市場は変化した。さて、高分子は空気中で燃えるので、高分子の難燃化技術は、電子部品で重要な技術であるが、科学の体系が存在していないことを御存じだろうか。
弊社は技術の体系を作り、それをセミナーで解説しているが、高分子の難燃化技術や耐熱性高分子はトランスサイエンスの問題である。なぜなら、有機高分子はセラミックスと異なり、高温度になれば必ず酸化され燃焼するのである。
耐熱性高分子も同様であり、不燃性の耐熱性高分子は存在しない。フェノール樹脂だって燃えるのである。ゆえに用途で決まる仕様に準じて高分子材料を設計することになるのだが、これが科学の形式知で簡単にできる世界ではない。
コストの問題まで考慮すると大変難しい問題となる。コツは仕様を明確にして妥協すべきところは妥協することになる。
今PPSの市場が拡大しているが、この材料の問題はTgが90℃前後と低い問題である。ゆえにLCPやPEEKといった材料がPPSの使えない領域で使用されている。
しかし、PPSのTgが低い問題は、アイデア次第で問題解決できるが、科学的では無いアイデアとなる。ここに書くと、なーんだあ、と言われそうなので書かないが、十分に100℃以上の耐熱性が必要な領域でPPSを使用することが可能である。
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