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2025.06/07 80万円のローン

初任給の年収が300万円を越える時代に、80万円のローンと言ってもそれほど悲惨には聞こえないかもしれないが、当方の新入社員の時の月給は10万円だったのである。上司の月給は手取りが50万円を越えていた時代である。


すなわち、今の管理職給与は新入社員の年収の2-3倍かもしれないが、当時の管理職は新入社員の年収の5倍以上だった。だから、OA委員長は部下に平気で80万円のローンを命じることができた。


この金額の大きさは、カローラDXが一台買えた金額と言った方が分かり易いかもしれない。一番安価なセリカは160万円である。レビンは120万円だった。


さて、80万円のローンで購入したMZ80Kで最初に開発したプログラムは、実験データをグラフとして打ち出すシステムである。実験データをFDにインプットし、第二精工舎のユニハンマー方式のプリンターでグラフとして打ち出す作業は、約30分かかった。グラフ用紙を使って手で書けば15分である。


ユニハンマー方式のプリンターは、画像を打ち出すこともできたが、その動作は文字よりも遅かったのである。これでは誰も使わないだろう、ということで、熱分析装置からデータを取り出し、それをグラフ化する提案を行っている。しかし、当時A/D変換し、グラフ化するところまで外部に依頼すると、300万円かかった。


測定装置が300万円前後でそのデータロガーが300万円であることを周囲から責められた。熱分析装置をもう一台購入したほうが良い、という意見まで飛び出し、なかなか何をOA化するのか、決まらなかった。


たまたま、安全委員会が消防署から薬品管理について指導を受けたことを聞き、薬品管理システムを提案している。実際にデータベースプログラムをBASICで作成し、寮までOA委員に集まってもらい、動作を見ていただいて、すぐにやろうということになった。


そして、ようやくソードのパソコンシステムを100万円で購入していただいて、薬品管理をそれで始めた。ソードのパソコンには、MZ80Kと同じ、Z80が二個実装されており、プリントしながら入力が可能だった。プリンターの動作も早かった。

OA委員会でアウトプットを出すために、新入社員に80万円のローンを組ませて、会社業務終了後独身寮でOA委員会の仕事をさせて薬品管理システムのアウトプットを出した上司は、大変評価されたが、80万円のローンを組み過重労働を行った担当者は評価されず、その後昇進試験に落ちて高純度SiC半導体治工具事業を立ち上げるチャンスが得られた。塞翁が馬はいい格言である。

降りかかる不幸に腐らず努力を続けることは重要である。働く意味を貢献と自己実現と定義づけたドラッカーは、20世紀の哲人と言われるのも納得できる。この80万円のローンがきっかけとなり、問題解決をコンピューターで行う方法について考えることが趣味となった。

また、当時食費以外手取りが残らない状態だったので、酒を飲み遊ぶこともできず、唯一会社でコピーをとった文献を読むことが暇つぶしとなった。勉強をしたくて勉強をしたのではなく、金が無いので勉強して時間をつぶしたのである。

カテゴリー : 一般

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