2025.06/10 HLBとSP、χ
表題について書こうとすると、FD事件を思い出してしまう。同僚にFDを壊されたり、ナイフが机上に置かれていたり、そして隠蔽化されたこの事件で同僚3人が転職している。
さて、FDを壊した犯人は、HLBを科学の形式知の範囲でとらえ、分子構造を同定した界面活性剤を用いて、電気粘性流体の耐久性問題を解こうとして、解けず、否定証明を行って大論文を書いている。
そして、科学で頭がいっぱいの本部長はそれを世界的研究と持ち上げて、当方に加硫剤も添加剤も入っていない加硫ゴムを開発するように命じてきた。当方はそれに対して、一晩で電気粘性流体の耐久性問題を解決できる界面活性剤を見出している。
データサイエンスの成果であるが、当時界面活性剤を見出すために8ビットコンピューターMZ80Kを用いている。10時間以上耐久する電気粘性流体は無かったので、一晩促進試験を行えば十分だった。
さて、すべてのHLBで検討しても耐久性問題を解けない、とした、研究論文は間違っていたのか。否定証明だったので、科学的には、正しい研究論文だったが、技術の観点ではゴミ論文だった。
40年近く前の実話だが、界面活性剤の議論で使われるHLBは、科学的パラメーターと呼ぶには怪しいパラメーターである。FDを壊した犯人が、分子構造既知の界面活性剤だけで検討を進めた理由を理解できるが、技術開発ではモノを開発しなければいけないことを知らないと、このような間違いを犯す。
高分子界面が関わる問題では、χパラメーターが使用されるが、この実体は自由エネルギーである。ただし、パラメーターを決める方法が問題となる。
SPは、エンタルピーから求められ、低分子から高分子までの混合を議論するときに使われる。最近はHSPがよく適合すると言われており、ハンセン球を用いた溶解性の議論が行われる。また、求めにくいχについて、SPから求める式が提案されたりしている。
HLBもSPやχも、界面が関わる技術の問題では、よく登場するパラメーターであるが、その意味は異なっている。また、いずれも形式知となっているが、怪しいパラメーターであることを知っておいた方が良い。
HLBについては、同僚3人が転職するような事件となった電気粘性流体の耐久性問題が事例としてある。χが0でなくても高分子が相溶した事例は、中間転写ベルトの実用化で実績がある。SPから発想したが、SPでは説明がつかない添加剤PH01の発明がある。
科学で何でも説明できると思っていると、せっかくの良いアイデアをつぶすことになる。この3つのパラメーターが関わるそれぞれの技術開発事例は、トランスサイエンスの問題だった。
(注)本日の話の身近な応用例は、ゼラチンを水に溶かすときに、50-60℃程度のぬるま湯に少し浸漬して膨潤させてから溶解するノウハウがある。このノウハウを用いるとゼラチンを分散した水溶液を容易に作ることができる。ゼラチンは親水性高分子として知られているが、コンフォメーションにより、疎水性の性質を示す。このことを理解できると高分子のSPやχが分子構造やコンフォメーションにより変化することがイメージでき、カオス混合でPPSと6ナイロンを相溶させてからスピノーダル分解が起きるときにカーボンの凝集構造が形成されてパーコレーションを制御できるアイデアが浮かぶ。これはレーザープリンターの部品として実用化されている技術である。
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