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2026.03/11 明と暗(4)

無機材質研究所へ留学した年に、係長クラスの昇進試験があり、10月1日にその結果が発表された。昇進試験と言っても事前に問題が漏れており、この年は、「あなたが推進したい新事業について述べよ」というのが研究部門の問題だった。

当方は、高分子前駆体を用いる世界初の高純度SiCを開発し、半導体治工具事業を展開するシナリオをまとめて準備していた。これを解答としたのだが、実はこのシナリオはゴム会社創業50周年記念論文に応募し、没となっていたシナリオである。

また、ファインセラミックスフィーバーの時代であり、このシナリオを研究企画として提案しても没となり、研究所はアメリカのバッテル研究所へ1000万円支払い、調査レポートを購入し、当方によく読むようにコピーを渡されていた。

当方はバッテル研究所の調査レポートは、クラシックセラミックスの延長線上のまとめであり、ファインセラミックスフィーバーの目指している方向と異なる、という感想文とともに、当方の高純度SiC事業シナリオを添付して再度提出している。

何度も研究所では否定されたシナリオだった。ゆえに昇進試験でどのように判断されるのか興味深々であるとともに大学院卒は落ちないという噂もあり、自信をもって答案として提出している。

10月1日には人事部長から無機材研所長室に電話が入り、ご指導いただいていた故猪股先生とともに昇進試験の結果を聞くことになった。人事部長から、昇進試験の結果は0点であり詳細を話したいので本社へ出張するように命じられた。

受話器を置いたときに、無機材研所長と故猪股先生は驚いた顔をされており、試験問題の解答にどのようなことを書いたのか質問された。そこで高純度SiCのシナリオをご説明したところ、1週間チャンスをあげるから、無機材質研究所の設備を使い、実証しなさい、と所長から命じられた。

故猪股先生は、本社へ明日にでも出張し、1週間の研究の許可と結果を無機材研から特許出願する許可をいただいてきてください、と依頼された。

このような経緯で高純度SiCの製造法の実証は、無機材質研究所でたった4日間の実験で完成している。そして今でもこの製造方法で愛知県の企業で半導体治工具事業が展開されているが、これはゴム会社から8年前に譲渡された技術である。

すなわち、昇進試験で0点をつけられたシナリオが、そのゴム会社で30年事業として推進されたのだが、研究所初の新事業としてはJSRの創業に次ぐ2件目の発明である。

若い研究者に告げたい。若者の描く未来を否定する年寄りはいつの時代でもいる。また企業では、組織でそれをつぶしにかかる場合もある。当方はFDを壊されたりひどい目にあっている。しかし、どこかに必ずその未来を認めてくれる年寄りもいる、と信じ、勇気をもって未来を切り開いてほしい。

カテゴリー : 一般

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