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2024.05/20 高分子の劣化

高分子成形体のトラブルで劣化は厄介な問題である。なぜなら金属やセラミックスのように破壊力学の形式知が整っていないからである。


今でも1-2件時代遅れの研究発表として、劣化と結び付けた高分子の酸化分解の研究がある。自動酸化という現象があるので、高分子の劣化が酸化分解で進行する、という説明は分かり易い。


しかし、500年以上前のゴムの塊について表面付近のゴムは酸化分解して低分子量化していたが、内部はそれほどの酸化が進んでいなかった事実を知ると、酸化劣化という現象を溶媒中で実験することにいくつか疑問が出てくる。


30年以上前にポリウレタンの加水分解が大問題とされたことがある。ポリウレタンの劣化現象は即座に解析され、対策の効果もすぐに現れたが、他のプラスチックについて未だに劣化現象の理解が進んでいない。


古いところでは、井上靖の「氷壁」を是非読んでいただきたい。これが高分子の劣化とどのように結びつくのか、一読していただければご理解いただけるが、これは作品が発表される1年前に起きた事件、実話をモチーフにしている。


すなわち、ナイロンザイルが結晶化して脆くなり切断し遭難した、あの事件である。当方が生まれて間もないころに起きた事件だが、その後何度も映画化されTVドラマも作られた。


滑落して死亡する小坂はその時代の二枚目が、魚津はニヒルなあるいは個性派の俳優によって演じられる形が定番となったドラマだが、ドラマ以上に実話はどろどろと展開している。


東洋レーヨンのナイロンを東京製綱がロープにした製品で事件が起きたのだが、安全基準ができるまでに20年以上かかっている。その間に20人以上もの登山者が安全基準のないナイロンザイルの犠牲になった。


次週火曜日に大阪で高分子の破壊と寿命予測に関する日刊工業新聞主催のセミナーでこのあたりの話も少し致します。最近の話題ではホンダのリコール問題を取り上げます。ご興味のあるかたはお問い合わせください。


上記セミナー詳細はこちら

カテゴリー : 一般 高分子

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