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2016.05/11 帯電防止とインピーダンス(1)

昨日の記事で、帯電防止の評価技術に関する質問があった。すなわち「灰付着テスト」と相関する評価技術とは、という質問だが、以前この活動報告でも紹介している。また学会発表もした。そして、若い部下が、この評価法で日本化学会から講演賞を受賞した。また会社としてはこの評価技術で開発した帯電防止技術について日本化学工業協会から技術特別賞を頂いている。
 
ゆえに、公開情報が多いので少し詳しく書く。まずフィルムの帯電のしやすさを評価する技術は、直流を用いた評価法がほとんどである。残りの評価法は実際に帯電させて評価する方法で実技評価である。最初に着想したのはこの点である。
 
フィルムの帯電しやすさを評価する方法は、研究開発において伝統的に複数の方法が使用されている。理由は一つの評価法で、市場で起きる帯電故障を予測できないからである。市場で故障が起きない品質かどうか複数の評価法を使用しなければ品質保証できない、ということは、科学的な評価法でも自然現象の一部を見ているだけということになる。さらに実技評価法を組み合わさなければ行けない状況は、実験室で科学的な方法により現象のすべてを表現できていないことを示す。
 
フィルムの帯電機構にしても複雑で多数の論文が出ている。しかし、実技テストの中でも「タバコの灰付着テスト」は、市場の品質問題とうまく適合することが多いので、開発段階で必ず取り入れられている。しかし、この実技の方法と直流を用いている科学的な測定方法とがうまく相関しない。
 
フィルムの帯電防止処理が同じ系の中では、うまく相関する場合もあるが、仮に相関していても不安がある、というのが現場の意見である。タグチメソッド風に言うと、帯電防止処理を誤差としてロバストの高い「実技と相関する科学的方法」を求めよ、というのがニーズとして存在する。
 
直流を用いた評価法のどれもが実技評価と相関しないのだから、交流を用いて評価したらどうなるかを試してみた。フィルムのインピーダンス測定に用いる電極を購入し、測定器の全周波数でインピーダンスを測定した。ありとあらゆるフィルム100種類ほどを集めて、過去に測定されたタバコの灰付着距離との相関を見ていったところ、低周波領域のインピーダンスの絶対値が相関係数0.99となる高い相関を示した。
 
このあたりの実際のデータ処理では多変量解析を用いているが、とにかくインピーダンスの絶対値というパラメータが灰付着距離と高い相関になることが分かった。ただし、100Hz以上の高周波数になってくると相関係数が下がるので100Hz未満のどこかの周波数におけるインピーダンスの絶対値を使うことになる。周波数によりインピーダンスの値は変化するので、規格とする場合には、この周波数は一つに決めなければいけない。

カテゴリー : 一般

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