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2016.05/22 マネジメント(5)

研究所へ配属されて10ケ月過ぎたころに新人発表会が行われた。新人テーマとして樹脂補強ゴムとホスファゼン変性ポリウレタン発泡体の二つ発表できないか指導社員に相談したら、テーマは一つに絞るように指示された。
 
結局、技術者として最も充実した3ケ月間のテーマは無かったことになった。高分子の難燃化技術が技術者のキャリアとして残った。指導社員からは、たった3ケ月では試作もやっていないでしょ、と言われた。しかし、某自動車会社の防振ゴム技術に採用された、と説明したら、現在その仕事を担当しているのは研究所ではなく化工品部隊だから当方には関係ない仕事だと説明された。
 
会社のキャリアとして無関係と言われても多くのことを学んだ充実した3ケ月間だった。生まれてからの人生でこれほど充実した日々を送ったことはなかった。高純度SiCの発明を完成させた1週間も充実していたが、日々の楽しさが異なっていた。
 
指導社員のご指導に従って、新人発表は無難に終了したが、後日始末書騒ぎが起きた。課長(主任研究員)が化工品部隊に今回の仕事を説明した時に、コストが確定していない技術を試作までしたことが指摘され問題になったらしい。その場に出席していなかったので状況は不明だが、指導社員から当方が始末書を書くようにと言われた。
 
1年間の試用期間中における始末書と思いビックリしていたら、残業代はつかない期間だが試用期間ではない、という。だからテーマの責任をとるために始末書を書けという。訳の分からない説明で、試作まで成功し褒められるのが本当でしょう、と開き直ったら、とにかく当方が書くことに決まったので書けという。
 
賞罰はマネジメントで重要な意味がある、とドラッカーは書いている。試作まで大成功と新入社員発表会で報告した人間が、なぜ始末書を書かされるのか、とんでもないマネジメントだと思ったが、指導社員の説明では、新入社員がぜひやらせてほしい、と言ったテーマなので新入社員の責任である、と課長が答えたことで、当方が始末書を書かなければいけないことになったのだという。
 
自己責任の原則を理解していたので、その日は、さっそく書店に走り「人に聞けない書類の書き方」という本を購入し、始末書の下書きを仕上げた。始末書には、「今回のテーマについて大いに反省し、次は低コストで同等の技術を半年で試作まで行います」と書いた。指南書に従い、反省していることと、反省を踏まえた上のアクションを考えて短くまとめた労作だった。しかし、この始末書の内容で翌日一日つぶれることになった。
   

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