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2026.05/16 実験データは企業資産(9)

毎朝書きにくいことを書いている。この目的は、企業の研究開発で生まれる実験の生データから実験者のディープスマーツも含め暗黙知に相当するものを取り出せる可能性が出てきたことを伝えたいからである。

50年近く前にゴム会社で出会った、混練の神様のような指導社員は、このことに気づいており、当方に実験生データ管理が最も重要と教えてくれた。研究報告書は、科学に基づき書かれており、当たり前のデータしか書かれていないので、誰も参考にしない。

これは、研究所の担当者は誰でも気づいており、企画調査段階で図書室に保管された研究報告書を利用する人はいない。

それでは、過去の技術調査はどのように行うのか。皆、文献検索で新しい技術を調査している。少し仕事のできる人は、大学の研究者へヒアリングする。わざわざそれを理由に海外出張する主任研究員もいる。

もっと仕事のできる人は、文献検索の前に過去にその技術に近い仕事を担当された方を探し、ヒアリングを行ってから文献検索する。

さらに仕事のできる人はどうするのか。ゴム関連の技術であれば、可能な限り手に入る週報を集める。生データに近い情報に触れることができ、当たり前ではないデータを見つけることができる。

高分子材料の研究開発では、当たり前ではない実験データに着目すると、新たな発明が生まれる、という発明のコツまで教えてくれた。

ホスファゼン変性ポリウレタンフォームの工場試作成功で始末書となった理由は、学会で議論がされているような先端技術を簡単に量産できるはずはなく、新入社員は何か間違いを犯した、という評価を本部長がした可能性がある。

当時始末書の悩みを相談したときに、混練の神様は、このように説明して当方を慰めてくれたのだが、今から思い出すと冗談ではなく、本当だった可能性が高いと内心思っている。

目の前に量産ラインで試作されたホスファゼン変性ポリウレタンフォームがあっても、本部長は信用できなかったのだろう。本部長は高分子合成の専門家で、ホスファゼンについても知識を持っておられた。

その知識から、半年もかからず新入社員が簡単にホスファゼン変性ポリウレタンフォームの工場試作を成功させた事実を信じることができなかった可能性がある。これは、その後高純度SiCの企画を提案した時にもフェノール樹脂とエチルシリケートのχを知っておれば、成功するはずがない、と力強く否定されていた。当方が立ち上げた(注)、この技術は今も事業として続いているがーーーー

昭和の時代は、このような研究所リーダーがいたのである。

(注)故無機材質研究所猪股総合研究官の手紙が証拠として残っており、当方の大切な宝であるとともに、技術がどのようなものであるのかを考える時の参考書になっている。

カテゴリー : 一般

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