2018.03/17 高分子の構造と物性との相関(2)
高分子の構造と物性との相関を考えるときにセラミックスと比較して難しい点は、非晶質相の物性への影響である。セラミックスでは、これが単純だ。例えばガラスならば非晶質の均一固体である。
ペロブスカイトの焼き物であれば、非晶質相が粒界に存在するがその影響は力学物性に効くかもしれないが、ペロブスカイトの結晶で現れる機能性に対して大きな影響は無いので結晶構造と機能性との関係を論じればよい。
SiC焼結体の熱膨張を40年近く前に研究したが、α-SiCでは結晶軸方向で線膨張率が異なっていたが、焼結体の線膨張ではちょうどその平均が観察され、大変理解しやすかった。
しかし、高分子材料における構造と物性との相関はセラミックスほど単純ではない。単純ではないが、経験知があれば、強相関ソフトマテリアルとみなした材料設計が可能となる。
このコンセプトで写真会社退職間際の半年間に難燃剤を使用せず、PETが80%以上含まれている樹脂でUL94-V2合格レベルの構造体として使用可能な靭性の高い樹脂を開発した。
この開発では事前にOCTAであたりをつけた素材が選ばれ、PET以外の5種類のそれぞれ機能が異なる高分子が検討された。強相関ソフトマテリアルというコンセプトで材料開発を行ったのだが、3ケ月ほどで目標の材料組成を見出すことができた。
この技術開発は、一応OCTAで材料設計してあたりをつけた処方の成功事例と言えるかもしれないが、残念ながらOCTAを使わなくても退職後この仕事を見直して考案した弊社が提唱する簡便法でも同様の結果が得られることが分かった。
シミュレーションのおかげでできたかどうかよりも、この材料の面白い点は、カオス混合を行うと射出成型性も良好な樹脂となるが、通常の二軸混練機だけの混練では射出成型性が不良の材料となることだ。
すなわち混練プロセス依存性の高い材料となった。このような材料は、その技術をブラックボックス化しやすい。また、プロセス発明でありながら、特許に抵触しているかどうかの検出も容易である。
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