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2019.04/12 フィルムのインピーダンス(1)

高分子の誘電率測定のために、フィルムを計測できる電極が販売されている。ただしその価格は150万円である。

 

また、この電極を使用するときには、フィルムの厚さを正確に計測する必要がある。そこで電極にノギスを付けてこの問題を解決している。すなわち、この電極は単なる電極ではなく、ミクロン単位の厚み測定器ゆえに、立派な箱に入れられて販売されていた。

 

電気計測では電極の形状因子が測定値に影響を与えるため、このような仕組みになっているのだが、それにしても価格が高すぎる。

 

この電極を用いなくても誘電率測定は可能であるが、大量のサンプルを簡便に計測する場合には便利な電極である。ゆえに高い価格が維持されてきたのだろう。

 

写真会社でフィルムの帯電防止技術開発を始めたときに、この高価な電極を購入して帯電防止フィルムのインピーダンスについて研究した。

 

帯電防止評価にインピーダンスを導入したのは特許状況を調べた限りでは当方が世界で初めてであり、当方の特許出願から1年後にドイツの写真会社でもAPSフォーマット用に研究開発を始めている。

 

高価な電極を用いた計測では、既に発表されていた樹脂の誘電率と同じ値が得られた。さらに誘電率の周波数分散などもこの電極を用いると簡単にきれいなグラフが描かれた。さすが150万円の電極である。

 

ところで、当時、この電極と組み合わせて計測される各パラメーターの周波数分散まで簡単にグラフ化できるインピーダンスアナライザーは500万円近くしていた。固定周波数のインピーダンス測定装置は100万円台で売られていたから5倍の値段だ。

 

そこで、PCとのインターフェースが充実していた200万円程度のインピーダンス計測装置にPC9801をGPーIB経由でつなぎ、500万円のインピーダンスアナライザーと同等以上の計測ができるようにした。(当時のインターフェースはパラレル接続がシリアル接続よりも高速転送できたのでGP-IBを使っている。今なら高速USBで簡単に接続できる。また、インターフェース部分のプログラムもMS-DOS時代と異なり簡単である。MS-DOSで用意されていたN88BAISCでも慣れれば簡単であるが、速度の問題を抱えていた。どのような計測をすればよいのか試行錯誤で実験を進めている。その結果Cでプログラムする必要性も出てきてプログラミング部分で悪戦苦闘した思い出がある。その後写真学会国際会議で研究成果を発表しているが、これは福井大学客員教授時代の成果で試行錯誤部分は消えている。短い研究発表の裏には多くの経験知が隠されている場合があることを理解してほしい。ある先生が手ぶらで質問に来た人には知らないと答えておくのが良い、と言われたお気持ちをよく理解できる)

 

ゴム会社では迷わず500万円の装置を導入していただろうと思いながら、実験をやっていた。しかし、プログラムを自作した結果、プログラミングスキルはゴム会社時代よりも向上した。それだけではない。プログラムに計算式を組み込まなければいけないので交流回路についても学ぶ必要があり知識も増えた。

 

若い時の苦労は金で買ってでもせよ、と親によく言われたが、まことに至言である。研究環境は恵まれている方が良いが、資金的に恵まれていなくても研究しようとする意欲さえあれば道が開ける。

 

高純度SiCの研究をゴム会社で企画した時、研究費用0からのスタートだった。その2年後2憶4千万円の投資を受けたのだが半年でこのお金は消えた。

 

貯めていた研究アイデアに使われたのだが、ヤミ研時代の苦労が報われた。お金がないときにはアイデアの貯金に励むことが重要である。フィルムの帯電評価を進めていた時にゴム会社で周囲に否定された負の誘電率のアイデアを展開していた。

 

 

 

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