2020.04/10 高分子は易しくない
金属材料やセラミックスは高分子材料に比較して学びやすい。なぜなら大学で学ぶ固体物理学あるいは材料力学の知識をそのまま用いることができるからだ。
しかし、高分子材料に関しては、大学で学んだ形式知から外れる現象に実務で遭遇する機会が多い。
それがプロセシングの影響であることに気がつくまで、かなりの経験を積む必要がある。また経験知を蓄えていても気持ちの悪い現象が起きたりする。
この原因は、高分子が紐の集合体であり、さらにその紐の長さが分布を持っており、結晶よりも非晶質部分が物性に影響するためである。
力学物性だけでなく電気電子物性までも同様で、それをうまく説明できる完璧な形式知が存在しない。
2成分以上の高分子をブレンドするときに使われるフローリー・ハギンズ理論にしても、実務ではほとんど役に立たない。
また、この形式知に固執していると、実務では間違った判断をすることもある。
例えば、退職前2005年に担当したPPSと6ナイロンブレンド系をマトリックスに用いた中間転写ベルト開発では、フローリー・ハギンズ理論では説明できない相溶系マトリックスとして設計しなおし成功している。
但し、前任者から引き継いだ配合組成を変更していない。コンパウンドを某有名一流メーカーから購入していたが、それをそのまま当方が3ケ月程度で立ち上げたコンパウンド工場で生産するようにしただけである。
配合組成は全く同じでもプロセスが変われば、まったく異なるコンパウンドに仕上がる。これが高分子材料の難しさの一例である。
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