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2020.06/16 カオス混合技術

学部の卒論には、当時流行歌だったシクラメンの香りの全合成を書いた(JACSにショートコミュニケーションが載っている)のだが、大学院はSiCウィスカーで有名な講座で無機高分子の研究を行っている。専門を聞かれたなら学位論文の中身を考慮すれば無機材料となる。あるいは、セラミックスである。


ゴム会社に入社して、最初の指導社員が優れたレオロジー研究者だったのは幸運だった。当方が無機材料の講座出身ということで3か月間毎朝3時間高分子材料について座学を開いてくれた。


ある時は大学教授のようであり、ある時は事業コンサルタントのようなバランスの取れた講義は、新入社員の指導講座として一つのお手本となるような内容だった。ただ、QC手法には批判的で独自の統計理論をご指導くださったのは役立った。


マテリアルインフォマティックスが今話題だが、データ駆動の高分子材料設計手法は40年以上前からその概念が存在したのだ。この指導社員は、いったい何者だ、という疑惑も生徒の立場として感じていた。


ダッシュポットとバネのモデルによるレオロジーを説明しながらも、このような手法は、あと10年もすれば使われなくなる、と言って分子論に基づく粘弾性モデルを説明してくれたが、どこにも書かれていない難解な内容で理解できなかった。


当時京都大古川先生や東北大村上先生らのケモレオロジーという考え方があった。指導社員によれば、高分子融体のレオロジーを検討するときれいな理論を組み立てられない問題が大きい、と説明してくれた。


今から思い出すと死ぬ気でこの指導社員の説明について勉強しておけばよかった、という反省になるが、毎日4時間以下の睡眠で死ぬほど樹脂補強ゴムのサンプルを混練していた当方には不可能だった。


指導社員の講義内容をすべて理解できなかったが、手帳に残った講義録をこの10年近く眺めて混練活用ハンドブックとしてまとめ上げた。難解なワラビやゼンマイについては書き間違いもあるといけないので省略し、数式を可能な限り文章で表現する努力をしている。


カオス混合技術については、指導社員から原理を学んだが、その実現方法が宿題とされたので、この本は40年前の卒業論文のような位置づけになる。


カテゴリー : 一般 高分子

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