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2021.12/17 ニューイヤー駅伝優勝旗紛失

富士通が優勝旗を返還準備中に紛失していたことに気がついたという。これは「常識的な感覚から」全く信じられない出来事だ。優勝杯は残っているという。これも不思議なことだ。優勝旗と優勝杯を別々に保管していたことに驚いた(適当に扱っていた状況証拠でもある。普通の企業は名誉として皆の目のつくところに飾るので紛失や盗難にはすぐに気がつく。)。


ニュース記事を読むと廃棄した可能性もあるという。スポーツにおける優勝者の自覚と責任を発揮できないこのようなチームはニューイヤー駅伝から排除すべきだろう(厳しい表現だが、このような事件に対して社会全体が甘くなっている。実際には排除などできないので、富士通の責任者が誠実な対応として来年の出場を辞退するとか、今後の出場そのものをやめるとか言うべきだろう。)。


2m近くある棒に大きな旗がついた荷姿である。どこに置いてあっても目立つはずで、紛失の経緯を詳細に発表とあるが、どう説明しても誠実さの見えない出来事である。


記事にはさらに言い訳がいろいろ書いてあったが、このような事態は言い訳ですむ話ではない。優勝旗には初回からの歴代優勝企業の歴史が刻まれていた。


なぜこのような事件を本欄で取り上げたのか。それは現在問題になっている日大理事長の事件と共通する部分があるからだ。どちらも当事者の社会における役割とそこから生じる責任、義務を忘れてしまっているところに驚くのだ。


世の中には、なんでも謝罪で問題がかたずくと考えている組織人がいる。そのような人は組織の謝罪だけではかたずかない問題について配慮しない。優勝旗にただならぬ思いを寄せている個人もいるはずである(一方で、当方が憤りを感じ、本来ここで論じるような問題ではないので複雑ではあるが)。


今日のスポーツにおいて優勝者は優勝者の自覚を持つ暗黙の義務が大衆から求められている。少なくともスポーツにおける優勝者は戦いを盛り上げてくれた敗者に対して尊敬の気持ちを忘れてはいけない(そのような勝者を見たときにスポーツの感動を覚える。強者が率先して弱者を支える社会は、一つの理想の社会でもある。逆に強者がその力を自分のためにだけ発揮している社会はどのような社会であるかは説明の必要が無いだろう。そのために法律など明文化された規則が存在するが、暗黙の義務を強者が遂行できなかった時に社会は不安になる。優勝旗の紛失は単なるうっかり事件ではない。)。優勝旗にもそのような気持ちを持って管理してほしかった。


(注)本事件で心を痛めている人がいるはずであるが、ニュース記事の扱いでさえそのような人の存在が忘れられている。すなわちニュースの取り上げ方も問題なので本欄で事件の意味を書いている。例えば大会を主催する日本実業団陸上競技連合は紛失してもまた作り直すだけで特にペナルティーを与えない、という甘い回答を伝えていたニュースもある。当方は駅伝の選手でもなく、ニューイヤー駅伝とは無関係であるが、会社に飾られた優勝旗を見た経験があり、それを思い出しながら選手の気持ちを考えてみた。決して作り直せば済む話ではない(しかし、この事件の場合どのように問題を解決するのだろう。優勝旗はお飾りだからどうでもよい、という気持ちがニュースの報じ方から伝わってくるが、ニューイヤー駅伝はその程度の大会なのか。一年のスタートとしてそれにふさわしい大会と信じていたが関係者の発言や姿勢から、どうでもよいいい加減な大会であることを知った。過去に在職した会社も最近は頑張っていないようなのでそういう大会に変化したのかもしれない。新年の楽しみが一つ減った。観戦者の連れていた犬が飛び出して選手がこけそうになった事件があったが、それを負けた原因にしなかった素晴らしい企業のドラマが過去にあったが優勝旗を紛失しても役員が謝罪すればそれで済むという程度の大会に変わったとしたならば、残念である。大会の意味を社会に伝えるために、ここは富士通が自主的に参加を辞退すべきところかもしれない。そのくらいの大会と信じてきたが、またそのくらいの厳しさを発揮できる役員ならば半導体事業の復活も期待できるが期待しても無駄なのかもしれない。しかし、新年ぐらい引き締まった番組を見たいので富士通の今後の姿勢に期待したい。)。


(補足)ドラッカーは企業の盛衰に関わる因子の一つとして、誠実さと真摯さという抽象的な因子をあげていた。この事件は、まさに企業全体がその欠如を表現しているような出来事である。最近半導体事業の盛衰が話題になっているが、東芝の凋落を引き合いに出すまでもなく、経営陣の誠実さと真摯さの問題について取り上げなければいけないように感じている。ニューイヤー駅伝の優勝について経営陣が選手たちをねぎらい、会社としてその成果を誠実真摯にたたえていたならば、起きなかった事件でもある。GDPが上がらない原因がこのようなところにも表れているかもしれないと思い、本欄で取り上げた理由である。

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