2022.04/11 高分子成形体の信頼性(2)
高分子成形体の寿命について、その予測方法がいろいろあることがあまり知られていない。大別すると統計手法による方法と時間・温度換算則を用いる方法が知られている。
詳細は本日と金曜日のセミナーで解説するが、寿命予測というとアーレニウスプロットという考え方では研究開発に失敗するリスクが高くなる。
また、アーレニウスよりもラーソン・ミラー法の方が精度がよい、と言っていては駄目である。両者とも時間・温度換算則の方法なので特有の問題を抱えている。
具体的にクリープ破壊を取り上げて説明すると、セラミックスでSiCのように拡散クリープで進行することが科学的に明らかな場合には、寿命予測精度をそれなりに高くできる。
しかし、高分子成形体ではクリープのメカニズムが科学的に解明されていない。さらにレオロジーについてWLF式による時間・温度換算則が考案されたが、20世紀末にダッシュポットとバネのモデルが破綻し、現在再構築中である。
このような科学的に未解明な部分を抱えている状態で寿命予測を行うとどうなるか。これは説明の必要は無いと思うが、予測された結果が非科学的であることを覚悟しなければならない。
それならば、統計学による方法の方がまだ信頼性が出てくる。金属材料でも、例えば御巣鷹山の飛行機事故のように寿命予測を失敗した事例が存在するのだ。高分子材料の寿命予測についてもう少し慎重に熟考した方が良い。
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