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2012.11/03 ホスファゼン変性ポリマーの難燃化機構

軟質ポリウレタンフォームをホスファゼン誘導体で変性したところ、他のリン酸エステル系難燃剤と異なり、燃焼後の残渣へリンが多量に残っている現象が観察された。また、ホスファゼン変性ポリウレタンの燃焼時の特徴として、発煙が少ないとか、ドリッピングが少ないとか他のリン酸エステル系難燃剤に見られない特徴があった。また、難燃効果もリンの含有率で比較してみると20%程度向上していた。しかし、この難燃効果については、プレポリマーで添加した場合であり、粉末として添加した場合には、他のリン酸エステル系難燃剤と同様の難燃効果であった。

 

この難燃効果については分散状態の差としてとらえると理解できる。すなわち分子レベルまで分散できた時の難燃効果は粉末の場合よりも20%程度向上する、と見積もれる。粉末で添加した場合に、発煙が少ないとかドリップしにくいという性質は見られ、残渣にリンが多量に残っている現象も同じであったので、純粋に分散状態の差として見てよいだろう。

 

以上は30年以上前の実験結果であるが、定年退職前にPETの難燃化を検討するチャンスがあった。さっそくホスファゼンを添加し、難燃効果を調べてみたら、他のリン酸エステル系難燃剤に比較して僅かに(LOIで5%以下の差)よい程度であった。二軸混練機でミキシングしたので、ポリウレタンの場合と同様の結果と解釈することができる。ゆえにホスファゼン誘導体の難燃化機構は、リン原子による炭化促進効果であろう、と推定される。また、ドリッピングの改善に効果があるのは、他のリン酸エステル系難燃剤と異なり、燃焼時の系内に留まり続ける為、増粘効果が発揮されドリッピングしにくくなるためと推定される。

 

このドリッピングに対する効果は添加量が少なくなると無くなるので、フッ素樹脂系のドリッピング抑制効果と明らかに異なる。ドリッピングを抑制するために必要なフッ素樹脂は、1%前後であり、また燃焼時の観察からフッ素樹脂は燃焼し溶融した樹脂の表面で薄膜を形成しドリッピングを抑制しているがホスファゼン誘導体ではそのような現象は見られない。ただしここまでの話に出てくるホスファゼンはすべてノンハロゲン誘導体であり、フッ素樹脂で変性したホスファゼンならば界面活性効果が異なるので、フッ素樹脂と同様の効果を期待できるかも知れない。

 

高分子シミュレーターOCTAを用いて難燃剤の分散を評価し整理してみると難燃剤の側鎖基により、樹脂の分散状態が異なる。SP値が変わるので当たり前の結果であるが、ホスファゼン誘導体の側鎖基を変化させることは容易なので、10%前後の難燃剤としての性能アップをホスファゼンで狙いたいときには、側鎖基のSP値をポリマーのSP値に合わせてやればよい。特にPC/ABSなどの多成分系ポリマーアロイではこの手法は有効と思われる。ただしコストの問題が残っているがーーー

 

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カテゴリー : 高分子

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