半年後に製品化を控え、外部の一流コンパウンドメーカーから購入していたコンパウンドでは歩留まりが悪く製品化立ち上げが困難と判断して参加した打ち合わせにおいて、「素人は黙っとれ」と言われた話は以前書きました。
一流コンパウンダーの技術者やPPSを供給していた一流メーカーの技術者の意見と当方の見解が全く異なり、打ち合わせの途中で当方が追い出されるような事態になりましたのが、高価な本を数冊購入した動機でした。
混練りの神様から指導された内容が間違っていたのか、世間の混練に対する見解が間違っているのかは、形式知が書かれた書籍を読むのが一番確かです。
しかし、高い金を払って購入した書籍には、どれも混練の神様から伝授された考え方が書かれていませんでした。ひいき目で表現すれば、混練機を設計する人には役に立つかもしれないような本でした。
ただ、それにしても混練の形式知と呼ぶには貧弱で、混練機構をモデル化しやすいように考え出された形式知のようにも見えました。
そこでゴム会社時代の手帳を引っ張り出し、混練の神様から受けた授業のメモを頼りに自分で勉強しなおし、カオス混合のプラントを設計して、たった3ケ月でそれを立ち上げることに成功しました。
そこから製造されたコンパウンドで、中間転写ベルトの歩留まりを90%以上と飛躍的に向上させることができました。そのラインは現在でも国内で稼働しております。
この学んでから20年以上経過したゴム会社の基盤技術(注)を写真会社で復刻させた体験は書籍にも少し書かれています。
(注)ゴム会社でのキャリアは、高純度SiC事業化を業務としていたのでセラミックスである。ただ新入社員時代に3ケ月間樹脂補強ゴムをテーマにゴム技術を指導社員から伝承されている。毎朝座学で午後は実習だった。定時後は指導社員が管理されていた設備について自由に使用してよいと言われていた。スペクトロメーターにロール、バンバリーの3機種を自由に使えたのは知を学ぶために有効だった。
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先ほど表題の書籍について、2020年1月下旬発刊との連絡が出版元のゴムタイムズ社から正式に入りました。価格は1冊4800円とのこと。
昨日、本欄で書きましたように年内は割引価格送料込み4600円で頑張りたいと考えております。
さて、この本は2005年にPPSと6ナイロン、カーボンの配合によるレーザーカラープリンターの部品である中間転写ベルトの押出成形を前任者から引き継ぎました時に、読みたかった内容の本です。
当時8万円以上する専門技術書を自腹で5冊ほど購入しました。資金源は以前この欄で書きましたが、高純度SiCの基本特許に対してゴム会社が旧無機材質研究所に支払った使用料です。
このお金の出所につきましてはドラマがあるのですが、ケンシューを退職するときに公開したいと考えています。
怪しいお金ではありません。人情噺に近いかもしれない美しい話です。誠実真摯に生きておればよいことがある、という事例の様な実話です。
さて、高額な専門書を購入して勉強したところ、驚いたことにゴム会社に入社して樹脂補強ゴムの開発を担当した時にご指導いただいた混練の神様と呼んでも良いような指導社員から毎朝座学で習った内容と異なっていたのです。(明日に続く)
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昨日書籍購入を申し込まれた方にはお礼申し上げます。予想外の申込数ため、4000円のサービス価格は昨日だけですが、年内は送料込みで4600円で申し込みを受け付けたいと思っています。
おそらく来年には値段も確定し、1月下旬には全国の書店に並ぶかと思いますが、昨今の書店の倒産などの状況を考慮し、弊社のホームページでもt年明けしばらくは販売前のサービス価格でがんばろうと思っています。
発刊後は諸事情あり定価販売送料サービスとします。著者割引価格も決まっていない状況ですが、とりあえず年内は送料込み4600円として申し込みを受け付けることにいたしました。
1月下旬ころ出版され次第申し込まれた方には郵送にて発送いたします。本日は昨日申し込まれました方の整理の最中です。
昨日申し込まれた方にはお礼申し上げるとともに、発送が1月下旬になることをお許しください。なお、定価は5000円前後となりそう、と昨晩連絡が入りました。
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今年内の出版を目指し準備を進めている本がある(先ほど出版社から発売が1月下旬になるとの連絡が入りました。申し訳ございません)。多くの方に読んでいただきたいので、可能な限り安く出版していただきたい、とお願いしているが、1冊4500円前後になりそうである。
本日弊社にお申し込みの方には、送料費込みで4000円で年明けに発送したいと思っています(注)。弊社としては赤字となりますが、皆さまへのクリスマスプレゼントです。
ところで、その本とは高分子の混練りについて経験知と形式知をまとめた内容で技術書です。当初その内容から一冊80、000円と言う意見もございましたが、社会への提案としたい気持ちもあり、可能な限り安くしてほしい、と出版社と交渉しました。
しかし、内容が技術書であり、巷の高価な書籍には書かれていない経験知が書かれているので読者が限られる、という理由でどうしても発行部数が少なくなり、価格を高くしなければ経営上難しい。
結局著者割引価格が決まらないまま現在に至り、弊社で赤字覚悟の本日限りの価格を公開した次第です。
内容は高分子の混練り技術ですが、専門外の方にもその香りを面白く読んでいただけるようセラミックスの話や、序文にはサイモンとガーファンクルやダスティンホフマンも登場する。
この本で目指したのは、高分子の混練り技術の教科書と同時にこの科学の時代に形式知ですべてを理解できない分野の存在を多くの人に知っていただきたい、という思いを伝えることです。
例えば2年前、大手で品質データの改ざん事件が相次いだのですが、なぜ気楽に現場で数値を捏造してしまうのかは、材料に詳しい人ならばすぐにわかると思います。
だから、材料に詳しい人が現場の管理者としていたならばあのような事件は起きなかったとも言えます。材料のことが分からず測定だけを行っておれば、捏造したくなる衝動が起きるのが高分子材料、という表現もできるかもしれません。
このような社会現象も懸念し、今回の高分子の混練りの本をまとめた次第ですが、内容が専門的になりすぎましたので価格を安くできないというパラドックスに陥りました。
(注)
弊社へ、住所氏名連絡先(Eメールアドレス)と混練りの本を4000円で購入したいと送ってくだされば、手続き方法を送付いたします。
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昨晩の全日本フィギュアの大会では、宇野選手が4連覇した。羽生選手のミス連発がこのような結果をもたらしたという解説もあったが、GPシリーズの宇野選手の不調を考慮すると、羽生選手のミスよりも宇野選手の復活にスポットライトを当てるべきだろう。
また、インタビューではコーチの重要性とその意味について彼が語っていたことから、彼の金メダルが羽生選手のミスではなく、コーチの寄与が大きかったことを示している。
昨日のサンデーモーニングでは、張本氏が元スケータ鈴木明子氏にコーチなんてどうでもいいでしょう、と言うようなことを述べていたが、フィギュアスケートに限らず、どのような分野においてもコーチの役割は必要である。
ビジネスの世界ではパワハラやセクハラが話題になっているが、実は役職者がコーチングスキルを持っていないためではないかと思っている。
平等や機会均等が当たり前になってきて、さらに自己責任が前提の社会になってくると、単なるティーチングよりも気づきの機会を増やすためのコーチングが重要になる。
昨晩、宇野選手はそれをわかりやすくインタビューで応えていた。自分の行動について良いところを承認し、行動の向かう方向が幸福の方向かどうか、考える機会を示すコーチが必要な時代である。
上司が単なる管理者で務まる時代は終わった。組織活動で個人の能力を最大限に引き出せるようなコーチングスキルを身に着けるためには訓練が必要である。
OJTでそれを実現しようとするならば、上司は最良のコーチとならなければいけない。最良のコーチとパワハラとは無関係であるが、組織のベクトルを合わせる厳しい視点は業務効率を上げるために重要である。
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今年のフィギュアスケート界は、フィギュアスケートという競技がスポーツとして特異な側面を持っていることを気づかせてくれる話題が満載である。
そして宇野選手の事件(労働あるいは仕事として捉えたときにスケート協会の大きなミスである!)からコーチングの意味を学び、マネジメントに活かした人もいるのではないか。
多くのスポーツ競技は、相手と戦うことで勝敗を決め勝者を称える。しかし、フィギュアスケートを世界との国別競争として捉えてしまうと、多くのスポーツ競技とその違いを見出せず、楽しみが半減する。
これは、現在放映されている全日本フィギュアスケートの中継を見ればわかるように、相手と戦うことよりも自分の力を最大限発揮することが求められている競技であることを理解できる。
具体的にはザギトワ選手の引退発言に対する反論や高橋大輔選手の全日本における演技がそれを示している。
ザギトワ選手について4回転やトリプルアクセルができないので明らかにロシアの1歳年下の若手選手に勝てない。高橋選手に至っては33歳というその年齢から羽生選手に勝てないことは明らかである。
高橋選手はシングルをようやく引退する宣言をしたが、ザギトワ選手は周囲の引退発言を打ち消す声明を出している。
もっとも過去に引退を否定しながらも結局引退を余儀なくさせられた選手も多いので、ザギトワ選手の場合も今後は不明だが、彼女の発言や一部のロシアコーチたちの発言を聞く限り、選手を継続する可能性は高い。
勝てる可能性が低くても彼や彼女たちが選手として続ける意思を持とうとしているのは、フィギュアスケートが純粋に自己との戦いの競技であることを見出しているからに違いない。
ゴルフも自己との戦いだと言われるかもしれないが、ゴルフにはホールインワンのような運の要素が入ってくるが、フィギュアスケートでは、運の要素は明らかに低く、逆に運に頼っていては相手に勝てない。
例えば女子で初めて4回転ジャンプを成功したのは安藤美姫選手だが、彼女は運に頼って成功させたのかもしれない、というには無理がある。
確かに4回転成功後の彼女の成績を見ると4回転ジャンプを運の結果と捉える人もいるかもしれないが、その後の彼女の成績が落ちた原因はその私生活にあったのはニュースに報じられたとおりである。
フィギュアスケートを他のスポーツ同様に相手との競争と捉えてみていると楽しさが半減する。
このスポーツでは選手一人一人が自己の最大のパフォーマンスを追求し戦っている姿を観戦するところに最大の面白さがある。
また、その姿には働くときの自己の姿勢における、多くの学びのための教訓を見出すことができる。
例えば高橋選手がショートで見せた年齢を越えたやりすぎの演技は、逆にパフォーマンスを落とすことを教えてくれた。
年をとったなら年齢相応の動きでパフォーマンスを最大にできるよう努力しなければいけない。今日の彼のフリーの演技が楽しみである。
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昨日の全日本フィギュアスケート選手権男子ショートプログラムは見どころが多かった。
また、高橋選手の演技からフィギュアスケートというスポーツの過酷さを知る良い機会だった。
この視点では、今シーズンのザギトワが引き合いに出され、残酷さがクローズアップされてきた。
羽生選手がどこまで頑張るのか、あのプルシェンコが世界の舞台に再チャレンジできなかったことなど、過酷なスポーツなのか残酷なスポーツなのかは議論が難しいが、宇野選手からコーチングの重要性を学ぶことに関しては異論はないだろう。
また、コーチングの効果については、コーチ不在の状況時に彼自身も語ってきたので実務における先輩社員のコーチングスキルアップの参考になったと思う。
コーチングは恐らく人間特有の活動に違いない。いくら賢いチンパンジーがいたとしても、彼らがお互いをコーチングしていた、と言う話を聞いたことは無い。
コーチングは、ティーチングと異なることをご存知の方が多いと思うが、マネジメントで重要になってくるのは、ティーチングよりもコーチングである。
コンサル業務も同様にコーチングが重要であり、未経験の技術でも良いコンサルタントはその指導が可能で成果を出す(注)。
コーチングスキルが重要で効果を発揮するのはスポーツだけでなく実務でも同様なのだ。コーチングスキルにつきましてご興味のある方は弊社へお問い合わせください。
(注)技術について専門家でなければわからない、というのは間違いである。技術者であれば、どのような技術でもアドバイスできる。ただし、科学者は、技術者と異なり専門領域を離れると陸の上の魚状態になる。2005年に国内トップ企業のコンパウンダーへ技術者としてアドバイスしたところ相手は科学者だったようで、素人は黙っておれ、と一喝された。科学者の邪魔をしてはいけないと思い、独自にカオス混合を開発し半年後に立ち上がったコンパウンド工場で、外部のコンパウンダーの開発したコンパウンドと同一配合のコンパウンドでありながら高性能なコンパウンドを生産している。ただしそのコンパウンドは科学(フローリーハギンズ理論)では否定されるPPSと6ナイロンを相溶させた高次構造で設計されていた。技術は時として既存の形式知で説明できないものを創造する力がある。また、それをできる人が技術者である。
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混練の読みは、湯桶読みであれば「コンレン」であり、重箱読みであれば「コンネリ」である。
ただ物質を混ぜて分散するだけであれば、混合という言葉が存在する。混練は、混合と練りを行う操作であり、「コンネリ」のほうが読み易く意味も分かりやすい。
英語になると、MixingやKneading、Blendingなどの言葉が存在し、調べてみてみても明確な定義が無い。
Mixerが混練機という言葉として用いられ、押出機であるExtruderのカタログにTwin Screw Extruder が載っていた。二軸混練機が欲しいならば、そこから選ぶことになる。
中国Coperion社の技術者に、押出機ではなく混練機のカタログが欲しい、とホワイトボードに漢字で混練機と書いたら、同じ機械だと教えられた。
日本が中国から漢字を習ったときに押出機と混練機とは別だったのではないか、と質問したら、その時は機械が無かったはずだ、と真顔で答えられ、さらに通訳は笑っていたので、気にする必要のない差異なのだろう。
その他に、同じような形をしたバッチ式の機械でも、かたや加圧ニーダーと呼ぶが、バンバリー社の機械はバンバリーと呼ぶ。
しかし、ニーダーとバンバリーは動力の大きさで分けられる、という説もあるが、ロールと組み合わせて用いる装置をバンバリーと呼び、それ一台だけでゴムを練り上げられる装置をニーダーと呼ぶ技術者が多い。
あるニーダーメーカーの装置を借りたときに、バンバリー型ニーダーがあります、と言われた時には、少し頭が混乱した。
そのバンバリー型ニーダーは、紛れもなく全体の形はバンバリーであり、ロータの付け根の部分はドライシールで、加圧ニーダーと呼んでもよい装置でもあった。
このような言葉の氾濫もこの分野を難しく感じさせる。
用語の難解さから難しいと感じるのは、レオロジーも同様である。ただし、難解に見えるが、高分子鎖の絡み合いとその運動あるいは分子量と粘度の関係などから、情報を整理してみると「何となく」見えてくるものがある。
レオロジーは、混練で起きている高分子の現象を理解する時に役立つので努力して使えるようにしたい。
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郵便局職員のかんぽ生命の保険販売における不祥事で、日本郵政、日本郵便、かんぽ生命の3社長が更迭されるという。
確かに今回のかんぽ生命の問題は、少なくとも3社長が責任を取らなければいけない、あるいは3社長の責任だけでは済まない問題だ。
事件の重大さを考えると3社長の更迭は避けて通れないが、その中の一人から早くも情けない泣き言が飛び出した。
「情報が入ってこない」という、先日この欄で書いた瀬古氏のようなことを言っているのである。社長にもなってそのような泣き言しか出てこないのは、本来社長を務める能力の無い人だ。
なぜか日本のリーダーにはこのような泣き言をいう人が多い。おそらくリーダーとは偉くふんぞり返っておれば務まるものと勘違いされている。
もしかしたら日本のGDPが横ばいなのは、日本の社長の能力が低いことが原因なのかもしれない。
松下幸之助や本田宗一郎、石橋正二郎といった戦後の経営者は皆活動的だった。みずから現場に情報を取りに行ったのである。
ゴム会社で高純度SiCの事業化を行っているときに、毎年の社長訪問があったのは心強かった。ある時から角銅専務と家入社長だけの訪問になったことを不思議に感じた。
しかし、大掛かりな買収があっても続けていてほしい、と言われた家入社長の言葉を信じて頑張った結果30年続く事業となった。
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温度変化で高分子は固体から液体まで状態変化をするのだが、レオロジーの現象論的な目的に温度は入っていない。
しかし、反応時間について温度をあげると短くなることを経験的に知っているので、レオロジーでは、時間と温度を変換できるのではないかというルール、時間温度換算則を取り入れている。
これは、周波数と温度の両方を変化させて粘弾性測定をすると、何万年という時間が必要となるデータが、実験室で短時間に得られる便利な方法である。
ここで、各温度のエネルギーに相当する高分子鎖の運動が起きていることを忘れてはいけない。
そこでは、結晶化や溶融という相変化、ガラス化という分子運動性の凍結などもこのルールとは無関係に起きる。
すなわち、ミクロの高分子鎖の運動からマクロの粘弾性の挙動まで、幅広いスケールで起きる現象を技術者が安心してシームレスに扱える完成された方法は、まだ存在しないので、形式知と経験知とをあわせて注意しながら混練プロセスの考察にレオロジーを活用しなければいけない。
それは、ダッシュポットとバネのモデルを紙に描きながらも、頭の中では高分子鎖のレピュテーション運動や局部の回転運動などを思い描くような方法である。このようにして高分子鎖のダイナミックな運動を夢想しながら混練の現象を眺めていただきたい。
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