セラミックスでは造粒と呼ばれるプロセシングノウハウが開発されている。
これは粉砕技術(ブレークダウン)の進歩や、ビルドアップにより超微粒子化したために取り扱いにくくなった微粒子を取り扱いやすいように、形状制御された凝集粒子を製造するプロセシングノウハウである。
このプロセシングノウハウを応用して、混練前に高分子とその他の添加剤とを用いて造粒することが可能である。
この前処理により、多成分を配合して製造されるコンパウンドを1台のフィーダーで生産する時に発生する組成ばらつきを抑えることに成功している。
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例えば、ポリエチルシリケートとフェノール樹脂の有機無機複合ポリマーアロイを前駆体に用いると、焼成条件を制御して1nmの超微粉から取り扱いやすい0.3μmまでの高純度SiC粉末を製造することが可能である。
このような粒子を製造するための前駆体(前駆物質や前駆プロセスを総称)を用いて超微粒子を製造する手法をビルドアップと呼び、逆に大粒な粒子から粉砕技術により超微粒子を製造しようとする手法をブレークダウンと呼んでいる。
超微粒子というターゲットに対して、このような両方向のプロセスからアプローチする手法は、加工される物質にプロセシングの視点を置くことから生まれている。混練についてもこのような視点の置き方は重要である。
前駆体を工夫し超微粉を製造しようというセラミックス粉体のプロセシングアイデアを高分子のプロセシングに取り込んだ事例がある。
例えば、粘土鉱物を前処理してから高分子と混練し、高分子にナノオーダーの粘土鉱物が分散した有機無機複合高分子を製造するプロセシング技術が開発されている。
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コンパウンディングで使用するフィラーは、その供給メーカーにより粒度調整がすでに行われている。
しかし、カーボンのようなストラクチャーを形成している粒子を添加する場合には、混練中にそのストラクチャーが破砕されて分散する場合もある。
このような粒子の粉砕理論については、1800年代にRittinger (1867年)とKick(1885年)により法則が発表されて以来研究されてきて、Bond(1952年)の仕事により形式知が完成したと言われている。
すなわち、固体の粉砕に必要なエネルギーとその粒径、あるいは生成比表面積との間には一定の関係がある。
ちなみに、粉砕による微粒子化の限界は、1987年頃0.5μmと予想されていた。しかし、現在では10-30nmの粒子を簡単に生成できるようになった。
ただし、一次粒子を小さくできても高分子にフィラーとして添加されるときには数μのアグリゲートとなっている。
粉砕による微粒子化には形式知から限界が見えていたので、化学合成や蒸発、晶析などを活用し、一次粒子の超微粒子化の努力がセラミックス分野で1980年代になされている。
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科学的ではない経験知から生まれたアイデアでも、形式知に基づく一流コンパウンドメーカーの技術レベルを越える技術に結びつけることができる。
そして、このきっかけになったのは、過去に経験したセラミックス粉体処理プロセスで学んだ伝統的形式知である。
これを参考にして、高分子中におけるカーボンの分散状態をパーコレーション転移の概念により考察した。すなわち温故知新の姿勢である。
セラミックス成形体製造プロセスにおいて、粉体処理プロセスは重要な技術であり、混合と分散に関する形式知についてセラミックス分野では古くから整理されている。
例えば、スラリーを製造するときに、「だま」の生成は注意しなければいけない、とセラミックスのプロセシング技術では指摘されている。
混練におけるフィラーの分散でも同様であるが、原料投入前に存在する「だま」の生成とそれがコンパウンドに及ぼす影響を見落としがちである。
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セミナー会社からの依頼で、来月8月末に5Gに関するセミナーを都内で開催いたします。参加ご希望の方は、弊社へお申し込みください。参加費用は5万円です。
このセミナーでは5G用材料につきまして、すでにナノポリスで弊社指導により開発を始めました材料についてもご紹介させていただきます。
また、今月中旬から下旬にかけて、セミナー参加申し込みをされた方で希望者には事前相談会(1時間、弊社事務所にて)も開催させていただきます。
別途ご契約が必要になりますが、セミナー開催までに特許の出願お手伝いもさせてさせていただきます。ただし、特許出願サービスにつきましては、ご希望により、先着順とさせていただきます。
すなわち、出願内容が同一の場合には、先に申し込まれた方を優先させていただきます。
また、ご契約内容によりましては、セミナーでの内容に影響が出る場合もございます。弊社セミナーでは、毎回新しいアイデアをご紹介しておりますが、今回は公知情報の整理になるかもしれません。
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例えば、カーボンのような超微粉の凝集体では、高分子中でアグロメレートからフロキュレーションまで進みにくい場合がある。
するとアグロメレートした状態で表面からアグリゲートが高分子中へ分散してゆくことになる。その結果高分子中のカーボンの分散状態はふた山の分布を持つ可能性も出てくる。
ちなみに、体積粉砕は粉砕が衝撃力や圧縮力により行われるが、表面粉砕では、摩擦力や剪断力(ずり応力)により粉砕が進行する。
セラミックスを超微粉砕するときに、セラミックス粉体へ機械エネルギーを与える時間を十分長くとることが可能であり、表面粉砕で進行しても超微粉砕を行うことができる。
しかし、二軸混練機によるコンパウンディングでは、混練時間が短いために高分子に添加されたフィラーの表面粉砕が進行したときにふた山の粒度分布ができる。
先日の経験談で紹介した一流コンパウンドメーカーの中間転写ベルト用コンパウンドでは、見かけでは分散混合が進んでいたが、電子顕微鏡観察を進めるとアグロメレートとディスパージョンの共存した状態だった。
ベルトの押出成形で用いた押出機内で混練が進みディスパージョンしたカーボンの分散状態を変化させたため、ベルトの表面比抵抗の面内ばらつきを大きくしていた。
このように、セラミックスのプロセシング開発で習得した経験知を活用して、コンパウンド中のカーボンの分散状態について押出成形前後の変化を評価した。
この評価結果に対する一流コンパウンドメーカーの言い分は、押出成形が未熟のためカーボンの分散が変化している、と説明していた。
しかし、混練が不十分なコンパウンドでは、押出機のスクリューにより発生する剪断流動でも混練が進み、安定な分散状態に変わろうとする。これは形式知から明らかである。
これを確認するために、押出成形されたベルトを粉砕し、再度それを押出成形したところ、抵抗の安定したベルトができた。
このような体験からカオス混合のアイデアが生まれているが、このアイデアを否定した一流コンパウンドメーカーの混練技術では絶対に中間転写ベルト開発のゴールを達成できないと判断した。
ちなみに、二軸混練機にダミーの金型をつけてコンパウンディングする方法を一流コンパウンドメーカーへ提案している。
このメーカーの技術者からこの提案を否定されたために、自ら中古機の二軸混練機を購入し、ダミー金型の工夫を試行錯誤で行ってカオス混合装置を3カ月で完成している。
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ゴム会社に入社し、半年間の研修生活の後に研究所へ配属された。研修では、半年は試用期間で10月の配属後が本採用とか、2年間は査定がつかないから思い切り頑張ってほしいとか、企業人としての基礎を教育された。
研究所に配属されて一年間の新入社員テーマとして樹脂補強ゴムを担当した。指導社員は当方が初めての部下と言うことで優しく丁寧に指導してくださった。
午前中が座学で午後が自由に仕事ができる時間、という毎日だった。研修期間とこの指導社員のおかげで、残業代がつかないとわかっていても、毎日深夜まで仕事をして、徹夜まですることもあった。
今で言うところの「やりがい詐欺」状態と言われるかもしれないが、この時の3ケ月は混練について生の貴重な勉強の機会でもあった。
「ロール混練ではカオス混合が行われているかもしれない。それを連続式混練機で実現できるのは君しかいない」と言ってくださった指導社員は、本気で言われたのか冗談だったのか知らないが、少し信じてみた。
恐らくマンツーマンの朝の座学の時間によく居眠りをしていたので、気合を入れるための一言だったのかもしれない。しかし、カオス混合と言う響きは40年以上も耳に残っている。
ゴム会社では、やりがい詐欺状態の末、FD事件で転職したので、おそらくこの会社で出した成果、樹脂補強ゴム、燃焼するとガラスが生成して難燃化する技術、フェノール樹脂天井材、電気粘性流体の耐久性改良技術、電気粘性流体を実現できる傾斜粉体はじめ3種の粉体技術、ホスファゼン難燃性油、30年続いた高純度SiC事業立ち上げについて特許等を証拠に訴えたらそれなりに報われたかもしれないが、訴えていない。
樹脂補強ゴムやフェノール樹脂難燃剤は、一人で担当していたわけでもないので、という理由からではない。これらの仕事で確実に自己実現できたからだ。
FD事件の舞台となった電気粘性流体の仕事ではいじめと言ってもいいような状態で、業務を担当しながら業務情報の詳細を見せていただけず、カヤの外で仕事をさせられた。
しかし、そのおかげで未知の業務で最先端の情報を得る方法を編み出すことができた。インターネットなどない時代である。すべてポケットマネーで活動しておりこの時の領収書もとってあるのでこのお金ぐらいはゴム会社からもらいたいと思っているが時効である。
ほとんどゴム会社では報われることのない、むしろ労働者としては大赤字状態だが、それでも「やりがい詐欺」と会社を訴えなかったのは、お金に代えがたい「知」を大量に指導していただいたからである。FD事件で退職と言う決断ができたのも当方を指導してくださった多くの方がいたからである。
セラミックスのキャリアを活かせない写真会社へ転職したのは、ヘッドハンティング会社から技術マネージメントができればよく、専門性は問わない、と言われた。200万円前後年収が上がる条件と将来の約束を提示されての転職だった。
転職先では、転職後にリストラとかその後会社の合併とか散々の状態で転職時の約束など反故にされて、出した成果に対してもそれはマネージャーとしての成果ではないと言われ、うやむやのまま。
この会社ではやりがいが無くなるような日々だったが、会社が倒産しそうだったので必死で働いた。管理職としてこのような感覚を味わえたのは貴重な体験かもしれない。
その結果、酸化スズゾルを用いたフィルムの帯電防止技術、インピーダンス法によるフィルム評価技術、フィルムの表面処理から射出成型まで環境対応高分子技術、ポリマーアロイコーティング技術、有機無機複合ラテックス技術、ホスファゼンの写真感材への応用技術、その他PPS中間転写ベルトやシリコーンLIMS改良など20年間十分すぎるぐらい貢献できた。
しかし、同じ時期に転職していた10歳年上の人ほど処遇されていない。この方は定年退職まで毎日何をされていたのか知らないが、会社の倒産リスクの高い情報を見ても我関せず、たいした成果を出さずに良い処遇を受けていた。
当方も最初はよい処遇だったので気がつかなかったが、日本のサラリーマンはどのように働けば出世できるのかと言う見本になるのかもしれない。ただし、日本のGDPはバブル崩壊後停滞したままである。
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日本語では微粒子が集まると粉体と呼んでいるが、英語では粒子の凝集体について、そのサイズにより呼び方が異なっている。
粒子の一個一個は、primary particleと呼び、これは一次粒子と日本語で訳される。この一次粒子が集まると日本語では凝集体であるが、英語ではaggregates(アグリゲート)とagglomerates(アグロメレート)に分かれる。
さらに溶媒中でアグロメレートは、粒子が十分に濡れ凝集体の中に全くボイドを含まないflocculation(フロキュレーション、凝集)となり、一次粒子が十分に溶媒に濡れて分散した状態までdispersion(ディスパージョン)する。
粉体の分散に関して、日本語よりも英語のほうが現象を表現する言葉が多い。それゆえ、実務の現場でもアグロメレートがフロキュレーションを起こし、しばらくしたらディスパージョンした、などといった会話が飛び交い門外漢には理解できない場合がある。
しかし、これはこの分野における短い日本語表現が無いためで仕方がないことである。
また、湿式粉砕では、一次粒子と溶媒との濡れという現象が重要で、一次粒子の表面が十分に濡れるようにするために界面活性剤の添加も湿式粉砕で行われる。
この時、焼結で必要な助剤と呼ばれる添加剤も同時に添加し、超微粉砕と混合が同時に進められる。
ここで注意しなければいけない現象がある。粉砕には、体積粉砕と表面粉砕の2つの現象がセラミックス分野で知られている。ところが、混練の教科書にこの問題が取り上げられていない。これは、混練でも起きる現象である。
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高分子へフィラーを分散した時に生じる現象では、フィラーと高分子との相互作用を考えなければいけないので複雑になる。
そのため分配・分散モデルによるシミュレーションが長年研究されてきたにもかかわらず、現実の系と一致する満足な成果が未だに得られていない。
ところで、このようなフィラーの分散と混合のプロセスで発生する現象に関しては、セラミックス分野でも類似の現象があり古くから粉砕技術として研究されている。
セラミックス粉末の分散では、溶媒が液体かあるいは空気である。緩和時間の長い高分子の融体を溶媒とした分散現象よりも緩和時間が極めて短いので扱いやすい。
セラミックスでは、一次粒子の形状と添加剤(焼結助剤やバインダー)の分散状態が成形体物性へ大きく影響するので、粉体に含まれる粒子を如何に小さく均一に粉砕し混合するのか、という命題を古くから技術者や職人が持ち続けてきた。
この命題の解答は混練でも参考になるので、以下にその要点について内容をまとめた。
A.ビーズミルやボールミル、ジェットミルは、メディアの衝突や粒子の衝突による衝撃で粉砕が進行している。
B.ローラミルは、圧縮力と剪断力により粉砕を行っている。
C. 粒子は微粒化により表面エネルギーが増加して凝集しやすくなる。乾式で粉砕を進めてゆくと数μmまでが限界であり、それ以下の粉砕を行うには湿式粉砕となる。
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混練プロセスでは、高分子をマトリックスとした混練物の「混合」と高分子の「練り」が進行している。
「練り」では、高分子の絡み合いが進むのでレオロジーも変化する。加硫ゴムでは、この絡み合いの効果が成形体の物性に現れるが、樹脂ではその効果が現れにくい。
中間転写ベルトの体験は、この「練り」の効果が樹脂に大きく現れた事例である。高分子の混練効果について一般に使われる分配・分散モデルについて説明する。
混練における分散については、二つの形態で考える。
一つは破砕分散(DispersionあるいはDistructive dispersion)で、剪断力の様な大きな力で行われる分散である。
もう一つは単純混合(Simple mixing)あるいは分配分散(DistributionあるいはDistributive dispersion)と呼ばれる分散である。前者を分散混合、後者を分配混合という場合もある。
また、混練では、分散される材料を分散相(Dispersed phase)といい、分散相を分散させたい高分子を連続相(マトリックスあるいは Base polymer)と呼んだりする。
溶液であれば、前者は溶質であり後者は溶媒に相当する。よく体積分率の多い方をマトリックスと称したりするが、分散相が無機フィラーの場合には高分子相(連続相)の体積分率が50%以下でもその高分子相をマトリックスと称する場合もある。
混練過程の分配・分散モデルにおいて、分配混練とは、位置交換を主体とした混練で、破壊を伴わない場合、と説明されている。
一方、分散混練とは、粒子が破壊されて分散が進む過程として説明されている。しかし、実際の混練ではこのような最終状態のように規則正しくならない。
高分子とフィラーを適切な条件で混練した場合には、フィラー表面が高分子でよく濡れるため、さらに高分子の緩和(後述する)もありフィラーの分散では整然とした分散状態の構造をとりにくい。
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