剪断粘度を高めて混練したいときには温度を下げればよい。ロール混練では、ロール間隙を変えても、あるいはロールの回転速度を変えても剪断粘度を高めることができる。
伸長粘度は剪断粘度の3倍あろうがなかろうが、剪断粘度を3倍にも4倍にもする方法は実用的にはいくつもある。これは二軸混練機も同様で、スクリューセグメントの変更や回転数のほかにも剪断混練という特殊な条件もある。
但し、剪断混練では、トルクオーバーに気をつけなければいけないが、L/Dが40前後の混練機で伸長流動を利用するよりも剪断流動に頼ったほうが確実に分散がうまくゆく。
当方の経験では、二軸混練機では剪断流動を重視した混練条件で混練を行い、カオス混合機を取り付けて伸長流動を発生させた方が混練効率は上がる。
カオス混合機についてはようやく国内で検討しようとするお客が増えてきた。複雑なポリマーアロイや高級エンプラの混練では不可欠だと思っている。
このあたりについて技術の詳細を希望される方が多いので、6名以下の参加者によるミニセミナーを弊社事務所で随時行っていますのでお問い合わせください。
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科学は、世界中が認めた一つの哲学であり、これが産業革命以降の技術の発展を加速したが、忘れてはいけないのは、科学が生まれる前にも技術が存在したという事実である。
この技術については、「マッハ力学史」やファーガソン著「技術屋の心眼」に詳しいが、科学が無くても技術開発は可能である。また、現在われわれの身の回りにある便利な道具がすべて科学の成果と思うのは間違いである。
例えば当方が開発したゴム会社の高純度SiCは、その製造プロセス開発に科学を用いていない。ただし、それが妥当な技術であることの証明には科学を用い、論理的に説明し学位を授与されている。
写真会社のレーザープリンターに用いられているPPS中間転写ベルトに至っては、PPSと6ナイロンを相溶させた科学では説明できない材料で技術を完成させている。
退職後科学的に自分の開発した技術を見直し、来年あたり本にまとめる予定だが、技術を生み出すために必ずしも科学は必要ではないと実感している。
ただ共通言語としての科学の恩恵にはこれまで十分に助けられた。その体験からアカデミアにおける科学的研究活動には敬意を払うが、一方人文学の衰退が著しい点を少し危惧している。
人文学の研究者から現在の技術に関する批判なりがもう少し活発に出てきてもよいように思う。人文学の視点で技術の向かうべき方向とかさらには技術開発の方法論まで出てくると面白いように思う。ゲーテの研究だけが人文学ではない。
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カオス混合機の見積もりのため、昔福井大学客員教授を務めた時期に、大学院で学んでいた中国人学生の勤務する金型メーカーにお願いしてみた。
詳細見積もりを見て驚いたのは、日本と変わらない加工費となっている部品と日本よりも安い価格に見積もられている部品とが存在したことだ。
いろいろ調べてみると、旋盤ですべて加工できる製品は、日本と同じ価格のレベルか、あるいは構造が単純な場合に若干日本が安い。
NC工作機械を使用する製品では、日本よりもかなり安い。カオス混合機は設計形状を工夫し旋盤で全て加工できる場合には価格差は出ないが、特殊なカオス混合機はNC工作機械でなければ加工できないので、その価格差から金型加工における中国と日本の事情を知ることができた。
中国のこの金型メーカーは、日本の某電機メーカーも活用している中国でもトップの金型メーカーで、作業者は皆若く、NC工作機械も先端設備が入っている。
知人の説明では、弊社の紹介であれば、成形加工用樹脂金型も特別安価に提供できるという。
もし、射出成形メーカーで金型のコストダウンを考えられている方は一度お問い合わせください。この中国の金型メーカーをご紹介させていただきます。
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新婚生活を始めたころ、生活圏内に日産自動車のディーラーが3軒、スバルが1軒、トヨタ自動車が2軒あった。今はレクサスが1軒増えて、日産自動車のディーラーは1軒になっている。
これは、ゴーンが社長になったときのリストラの影響だが、ディーラーが減っても営業の努力があり、独身時代に乗っていたプレリュードを初代セレナに乗り換えてから今乗っているジューク1.6GTまで日産自動車である。
ジュークを購入する時、当初予定では他社に変更するつもりだったが、営業マンの熱心な勧めでジュークを買うことになった。日産車に面白い車が無いから、とことわったのだが、熱心にこの車の試乗を勧められた。
試乗してみてびっくりしたのは、みかけや車格から想像できなかった車の性能である。300万円前後なので、価格から見れば納得できるが、このクラスの車としてはあまり採用されないマルチリンクの足回りであり、さらに馬力は200馬力に近くトルクベクタリングもついて十分に面白い車に仕上がっていた。
ただジュークの売れ筋は1.5lであり、当初購入時に抵抗があったが、営業マンの至れり尽くせりの売り込みに負けて購入した。他のディーラーの営業マンはあっさりしており、トヨタに至っては、カタログを持ってきただけであり、レクサスのディーラーではカタログすら頂けず店内の口頭説明だけだった。
初めて新車を購入したときは、逆だった。トヨタの営業マンの熱心さに負けてセリカを購入している。今日産自動車が販売台数を伸ばしている背景に納得できる状況だが、ホンダの営業マンとこの30年会話をした経験が無いのも気にかかった。少し足を延ばせばホンダのディーラーがあるが、魅力的な車が無い限りそこまでわざわざ行こうとしない。
シビックは面白い車だが、車格と価格のバランスが悪く興味がない。ジュークも興味は無かったが、営業マンの努力で買うことになった。少なくともご近所のディーラーの営業マンのスタイルにこれだけの違いがある。
自動車は電化製品よりも高い。高価格の商品を選ぶときにやはりサービスは重要である。所詮社交辞令と分かっていていても至れり尽くせりのサービスにお客は弱いのだ。ジュークを購入した後、営業マンが退職するとわざわざあいさつに訪れた。某航空会社に転職するという。どこまでも丁寧な人だった。
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音楽の友社発行の7月号ONTOMO MOOKに付録としてついていたマークオーオディオ製スピーカーは、デスクトップスピーカーとして最良ではないか。
このスピーカー専用に設計されたバーチベニヤの箱キットを購入し組み立ててから1ケ月以上過ぎた。
毎日10時間は音楽をかけっぱなしなので、かなり音が落ち着いてきた。大変良い音がする。
トランペットはトランペットの生音が、ギターはギターの生音が聞こえてくる。老化した耳でも秋葉原で6万円ほどしたオルトフォンスピーカーとの差が歴然とわかる。
周波数ソフトをかけてみると、この小さな振動板の口径から信じられないが40Hz前後から音が聞こえだす。残念ながら老化した耳のせいでこのスピーカーの特徴である10kHz以上は聞こえなくなってしまったが。
しかし、まさにその楽器の生音を聴くようなスピーカーは、B&Wの100万円以上のスピーカーでなければだめだと思っていたが、このスピーカーはそれに匹敵する音が出ているようだ。
ただし、定格入力8Wと小型なので大音量で聴くことはできない。低音も大型スピーカーほどの迫力は無い。しかし、デスクトップスピーカーとして、広がり感やリアル感は、最高である。
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現象の概念化、そしてそこから機能を浮かび上がらせる方法は、その習慣化で容易にできるようになる。連想ゲームのように円滑にできるようになるとアイデアを考える時にも役立つ。なぜならアイデアを出す方法の一つにこの概念化がある。
故矢島先生のポリジメチルシランを用いたSiC繊維は、炭素繊維と同様の方法で繊維化が行われている。
これは、炭素繊維の製造プロセスを概念化し、そこで働いている機能、すなわち不活性雰囲気におけるポリマーの炭化機能、不融化処理の機能などを抽出する。その理解の後ポリマ-前駆体をポリアクリロニトリルからポリジメチルシランに置き換えて生まれたアイデアだ。
矢島先生のご研究を改めて概念化すると、セラミックスの組成を含んだポリマーを熱処理して高純度のセラミックスを製造するプロセスを思いつく。
ポリマーの高純度化技術は、1000℃以上の高温度で行わなければいけないセラミックスの高純度化技術よりも経済的にできる。
問題はポリマーを用いることの経済性であるが、これは低価格のポリマーを選択することで経済性を上げることが可能となる。
すなわち概念化して考えているときに、SiCだのポリジメチルシランなど具体的な組成は必要ではない。
概念化せず、ポリジメチルシランからSiC化する製造プロセスを眺めながら経済性を論じると、前駆体ポリマーの低コスト合成のアイデアを必死で考えることになる。
これに対して概念化した場合には、すべてのポリマーが対象になるので、アイデアをたくさん出すことができる。例えば安価なポリマーとしてフェノール樹脂は代表的ですぐにその高純度化のアイデアまで出てくる。
ケイ素原は、シリカゾルやポリエチルシリケートが高純度低価格な材料として候補アイデアになる。
このようにして故矢島先生の技術を概念化して捉え、セラミックスの前駆体ポリマーをポリマーアロイで実現するアイデアが生まれた。
ただし、非相溶系ポリマーアロイでは、大きなサイズのドメインで相分離する問題が生じる。この問題解決の手段としてリアクティブブレンド技術まで考えた。
概念化しない場合には、ここまで考えを発展できないが、概念化し、その後具体的にアイデアを展開した結果問題点が見つかり、新たなアイデアの展開を強いられることになりリアクティブブレンドに至った。
これを概念化によるアイデア抽出法の欠点とみるのか、新たなチャレンジの機会を生み出す方法と捉えるのかは、技術者の資質に依存する。
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早朝のNHKの放送で紹介していたが、老化すると道具の使い方が分からなくなる「失行症」という症状を発症する人がいるそうだ。当方は逆に道具のいろいろな使い方のアイデアが出てきて特許を調べる時間が増え困っているが、おかげで特許の検索スピードだけは若い時よりも退職後向上した。
公開されている検索システムは慣れないと使いにくく、サラリーマン時代はあまり使わず、会社の検索システムを主に使っていた。あの無料の検索システムは誰が設計したのか知らないが、検索システムとして機能が貧弱だ。
ところでNHKの放送による失行症の説明では、人間が道具をどのように認識しているかの説明をしていた。それによると、目の前の道具を人間が見つけたときにまず目の前の「道具の使われ方シミュレーション」を行うという。
その後、手に取って道具を使おうとして、そのシミュレーション結果と照合し、使えるようになるという。失行症では「道具の使われ方シミュレーション」ができなくて、必要な道具を選べなくなるそうだ。
ただし、この失行症は脳の一部が老化してきたためにおきているので、リハビリによりそれが回復する。この失行症がリハビリで治る様子を実際の患者だったAさんの記録映像で説明していたのだが、それを見ていて、人が現象から新しい機能を見出す能力を高めるためにどのような訓練をすればよいのか思いついた。
そもそも中間転写ベルトの開発において、どのようにしてカオス混合装置を発明できたのか、その過程をすべて論理的に説明できていなかったが、目の前にある押出機を混練機の代わりに使う、という発想が最初であった。
なぜそのようなことを考えたのか不思議だったのだが、この失行症の説明で理解できた。すなわち技術者は目の前の現象、これは人工の現象であっても自然現象であっても何でもよいが、そこに新しい機能を見出した時に、その新しい機能を繰り返し再現できるシステムを無意識に工夫するのだ。
その後必要に応じて、目の前の現象を解析あるいは分析するのだが、この時今様であれば科学を道具として使うことが推奨されるが、ガリレオでさえ我流で解析していた。経験知があればわざわざ科学を用いなくても自由に目の前で見ている機能を動かせばよい。科学という束縛が無い分、良く動く。
また、解析さえしなくても妄想のごとく自然現象を見て心躍る想像をしてその機能が動作する様子を思い浮かべることもできる。これは、ファーガソンの言うところの「心眼」である。
昔授業中に冗談で、優秀な学者にはスケベが多い、と自己弁護されていた何事にも好奇心が強い大学教授がおられたが、失行症のメカニズムを知りこの迷言にいまさら納得した。学者にその傾向の人が多いのかどうかは知らないが、分野を問わず想像力が強くなれば、現象から新たな機能を取り出せる能力も高まってゆくだろう。
この能力を鍛える一つの方法に芸術による訓練がある。特に訓練を意識したことが無いが、当方は子供のころから絵画や彫刻が好きで、展覧会があると父親に愛知県美術館へよく連れて行ってもらった。
ゴム会社には創業者のコレクションが解放された美術館があり、これは就職先を決める動機の一つになった。あいにく当方には才能が無いのでせいぜいカメラがその表現のための道具だが芸術家の作品を見て感動が湧き上がるのも失行症の説明からうなづける。
70歳を過ぎたゲーテは18歳の少女に心奪われ「野ばら」に匹敵する詩を書いたと言われている。実績を上げた経営者が金に目を奪われ罪を犯すのに比べれば建設的だが、世間が許さない点は同じである。
しかし芸術家の作品から彼が見ていた世界を想像して感動するのは周囲にはばかる必要はない。もう芸術の秋は終わり冬になるが、まだゆっくりと作品を見て歩いていても今年は気持ちのよい季節である。
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ゴム会社に入社した時に指導社員から混練の教科書を読まないようにと言われた。そして毎朝午前中その指導社員から経験知をいろいろ教えていただいたのだが、これは今でも感謝している。
10年以上前に豊川へ単身赴任し中間転写ベルトの開発を担当しなければいけなかった時に、何冊か混練の教科書を買い込んだ。無機材研の先生が高純度SiCの発明に対してゴム会社が無機材研に支払った特許料を小生にくださったので、専門の高価な本を購入することができた。
しかし、それらを読んでみて現実に起きている現象を眺めてみて、昔指導社員から指導されたことが正しかったことに気がついた。教科書の記述がおかしいのだ。また、混練分野の論文にはおかしな研究が存在する。
例えば伸長粘度が剪断粘度の3倍になるという理論は、まず実用的にはあてにならない。また、この理論を支えに実験を行っている論文があり、その考察では、剪断粘度はうまくシミュレーションにあってくるが、伸長粘度がシミュレーションからずれる、と述べている。
このようなことは昔からゴムの混練経験のある技術者には常識なことだが、それが21世紀に公開されている論文に改めて書かれると、一言突っ込みたくなる。伸長粘度には弾性項が含まれるが剪断粘度は粘度の項だけで議論できることを知っているとこのことを理解できる。
ゴーンも含めた日産の役員報酬の総額が30億円と株主総会で認められたのに、実際に役員へ支払われた総額が20億円という話よりも簡単である。剪断粘度には弾性項が含まれていないのにそれを弾性項の含まれる伸長粘度と比較しようというのだ。複素数になるから30-20=10という簡単な計算ではないが、Trouton則は正しいのか?教科書にも疑惑の目を向ける必要がある。
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世の中すべてが科学的に説明できるわけではない。科学的に研究が行われていると思われている高分子の世界でも非科学的な実験が行われていることに研究者は気がついていない。
昔ものすごい光景を見た。ある部長がレオロジーで理論的に導き出したグラフに合うように部下にサンプルを作らせていた。
部下は、ロール混練条件をいろいろ変えて、なんとかグラフ上の点にあうようなサンプルを創り出した。すなわち配合が同じでも、プロセスが異なると物性が変化する高分子の特性をうまく利用し、上司の指示にうまく合うサンプルを創り出していたのだ。
これはサンプルの物性を測定すると測定値が再現するので捏造ではない。またロール混練条件を変えたと言っても、ナイフ作業や返しのテクニックでそれをやっていたのだから論文に掲載されない部分である。
グラフ上にプロットされたサンプルについて、すべて同じ条件で作った時にどうなるかとかいったことをその部長は問題にしなかった。ただご自分の理論に適合したサンプルができたことに満足されていた。
しかし、理論に合うサンプルを配合を変えることなく、プロセスの工夫で創り出そうと苦労していた部下の悩みなど無視していた。新入社員であった当方は、先輩社員のその悩みやボヤキを聞くことで、高分子材料におけるプロセスの役割を学ぶことになった。
高分子材料の物性は、主に配合とプロセシングで決定されるが、このワンマン部長は、プロセシングの寄与やそれを工夫する難しさには目をつぶり、自分の理論に合うように部下にサンプルを作らせ、その科学の成果を椅子に座ったまま吸い上げていた。この科学の成果が事業にどのように寄与しているのか不透明であったが、科学がやがて盤石な基盤技術を作り上げると信じられていた時代である。
これは「ゴーン=日産」という構図と似ていなくもない。ブランドへの寄与という名目で高い報酬がどんどん高くなるだけでなく、海外にゴーンの豪邸が作られていった状況は今後解明されると思われるが、事業に対して本当の寄与がわかりにくい「こじつけ」ともいえるような成果なり経費は不誠実なリーダーにより生み出される。
ドラッカーは、その多くの著書で誠実なリーダーを選ぶことの重要性をいつも述べていた。日産の事例は長期独裁政権は必ず腐敗するというよりも、事業において、不誠実なリーダーを選ぶな、という事例だろう。
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この科学の時代でも世の中すべての現象を科学的に説明できるわけではない。例えばポリエチルシリケートとフェノール樹脂から作られたSiCの前駆体炭化物を当時の無機材質研究所で初めて1600℃の温度で加熱処理実験を行っていたときに温度コントローラーが暴走した実験がある。
この実験では、ただ暴走しただけではない。その時慌てて無機材研の先生を電話で実験室まで呼び、その先生がスイッチを改めて入れなおしたところ、その暴走状態が解除された。
驚いたのは一連の偶然の行動が生み出した温度パターンがこの前駆体の熱処理に最適の温度パターンだったことだ。この偶然は、今でも不思議な体験として忘れられない。
当方は、電気炉の前でただひたすら神様にお願いをしていた。親は大谷派の仏教徒だったが、その時無意味に十字を切っていた。しかし、キリスト教徒であったわけでもない。神に祈るとはそうすることだとキリスト教徒の友人が教えてくれたからだ。
しかし頭の中にはキリストなど現れず、出雲大社が描かれていたのだから、無茶苦茶なお祈りである。実験がうまくゆくように祈りながら一方で良い配偶者に恵まれることを考えていても神がかり的なことは起きる。
ここで大切なことは、STAP細胞と異なり、この時偶然得られた前駆体炭素の熱処理パターンで温度コントローラーのプログラムを組み動作させると実験結果を再現できたことである。
ただし説明できない不思議な出来事である温度コントローラーの暴走は、この時の一回限りで、その後起きていない。
一生涯の運をこの時使い果たしたような偶然がこの時に重なり、たった4日間の実験で製造された数100mgの高純度SiCに対してゴム会社で先行投資として24000万円が決定された。
さらに、その時から始まった開発テーマが今日まで30年以上ゴム会社で事業として継続されていることは世間から見れば最も不思議なことかもしれない。
さらに、住友金属工業とJVを運営していた時にFDを壊される妨害を受け、写真会社に転職した。退職直前に担当した中間転写ベルトの仕事で、ゴム会社の新入社員時代に指導社員から二軸混練機で実用化できたら凄い技術だと言われていたある技術を思い出した。
すなわち、中間転写ベルトの製造工程を経験知と暗黙知で眺めながらカオス混合装置をひらめいた。そして、そのプラントを建設できたことは、運命というものの「不思議さ」だと思っている。
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