「貴の乱はひとまず終戦になりそうだ。日本相撲協会は29日、東京・両国国技館で理事会を開き、一連の騒動を起こした貴乃花親方(45)に、委員から年寄への2階級降格処分を下した。」
「貴乃花親方がもっとも恐れていたのは、「解雇」による部屋閉鎖や、降格より軽い処分の「業務停止」で弟子の指導ができなくなることだった。協会執行部への対立姿勢を一転させて謝罪し、土俵際で態度を変化させたことが評価され、“最後の砦”だけは守った。“命ごい”をするかたちとなったが、名を捨てて実を取った。」
以上は某ネットニュースからの引用である。多くのニュースがこのような論調なので、日馬富士問題の収拾が難しくなったときに、先日この欄で指摘したようなしかるべき人物が貴乃花親方にコーチングしていたならば、貴乃花親方を救うことができたのではないか、と思えてならない。
45歳の元大横綱といっても組織人としては素人である。また、日本相撲協会の理事の面々もマネジメント能力が優れているわけではないのだ。さらには、TVで映し出された騒動の様子を見る限り、基本的なコミュニケーション能力にも問題のある方々である。
単なる組織運営のアドバイスだけでは日本相撲協会は今後も珍事件が起きると思われる。このような組織ではマンツーマンでコーチングなりアドバイスをする「作業」が重要である。一応そのような役割の方々がおられるようだが、肩書だけで役割を果たせるスキルの無い方々であることが今回の日馬富士問題で明らかになった。
日本相撲協会に限らず、企業の組織にもこのような問題があるのではないか。ゴム会社と写真会社の二つの異なる企業で仕事をしてみて感じたことは、技術だけでなく組織運営も含めスキルやノウハウの伝承をOJTで行うことの重要性である。
ゴム会社では毎年のように組織管理者が代わったり、2年ほど一人で業務を推進しなければいけない立場だったこともあり、多くの偉い方々から指導やアドバイスを受ける機会に恵まれた。その結果住友金属工業とのJVという形で事業立ち上げに成功するのだが、写真会社では、自らスキルやノウハウを求めない限りそれらを獲得することができなかった。
どちらもOJTで情報を得られる状況だったが、自ら求めなくても周囲が問題を発見しスキルやノウハウを提供していただけたようなゴム会社の風土が当方には適していたように思う。
また、この経験から、組織内で新しいことを行ったり、あるいは別組織から新任管理職が赴任してきたときなどは、しかるべき年長者がその組織内に伝承されている職務遂行のコツなどを伝承するのが好ましい姿のように思う。
日馬富士問題を相撲社会という特殊な環境で起きた事件として捉えるのではなく、一般的な組織の抱える問題が特殊な事件として現れた、と捉えると、新入社員以外にも組織人としてのOJTを各階層で行う必要があるのではないか。
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この3ケ月間に下記講演会が予定されております。弊社主催ではございませんが、割引価格でご提供できますのでお問い合わせください。
「ゴム・プラスチックの劣化・破壊メカニズムと寿命予測および不具合対策」につきましては、弊社へ参加申し込みをしていただければ、すぐに請求書を発行させていただき、振込確認後参加証を送付させていただきます。
記
1.ゴム・プラスチックの劣化・破壊メカニズムと寿命予測および不具合対策
(1)日時:2018年04月17日(火)10:30~16:30
(2)場所:江東区産業会館 第1会議室
(3)主催:R&D支援センター
(4)参加費:弊社へお申し込みの場合には45,000円
2.高分子材料の難燃化技術と配合設計・プロセシング
(1) 日時:2018年5月18日(金)10:30~16:30
(開催場所、料金等後日掲載)
3.伸張流動に関する講演会
4.ゴム樹脂の混練技術に関する講演会
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貴乃花親方は妥協するタイミングを失っていた。あのような場合は、誰かがうまくコーチングにより妥協すべき方向と方法を示すべきだった。FD事件が起きたときの上司のアドバイスは「組織から出ていけ」だった(注)。すなわち、事業として立ち上がったので当方は不要である、というのだ。
一方その事件が起きる二年前に研究開発本部長だったU取締役からは、学位取得を勧められていた。SiCの速度論についてまとめ終わり学位としての体裁を整える自己実現努力の途中に事件は起きた。仮に貢献の役割は終わったとしても、自己実現のために問題を隠蔽化し妥協する考え方もサラリーマンとして残っていた。
そのようなアドバイスを当方にしてくださった方もいた。しかし、目の前に起きていた問題は過去に形を変えて繰り返されていた組織の問題だった。
妥協して異動すなわち組織を出ていく選択を考えていた時に、まったく専門分野が異なるので、それまでのキャリアを捨てることになるが、ヘッドハンティングのコンサルティング会社より写真会社を紹介された。
人事部に同期の担当者がいたことも決心の方向を決めることになった。転職の決意をして、彼にそれまでの組織で起きた事柄を一部始終話した。
それから20年以上たち、起業後この研究開発本部からお誘いを受け講演をする機会に恵まれたが、その時感じた雰囲気は、タイヤ開発部門で研修したときの印象に近かった。20年間に職場の風土が変わっていたのだ。
研究所長にはゴム会社の同期がその職に就いており、彼はタイヤ材料開発部門の出身で、問題のあった組織、すなわち研究開発本部の生え抜きではなかった。自己変革できる企業は持続的な成長が可能である。
今、社内で不祥事が発生すると些細なことでも社長が謝罪会見を開くようになった。その結果、社内では再発防止策を余儀なくされる。これは、ある意味、問題のある組織にとっては良いことである。
不祥事が起きない組織が理想だが、組織で活動しているのが人間である限り、過ちは避けられない。過ちを隠蔽することなく過ちとして認め、対策をすぐにとれるかどうかは誠実なリーダーが組織にいるかどうかに依存する。
ネット社会となり、不誠実なリーダーは内部告発に晒されるリスクが高くなった。しかし、不祥事があれば匿名で何でもかんでも内部告発する、という昨今の風潮は、健全な妥協の感覚を鈍らせ、貴乃花親方のような社員を生み出す懸念がある。もう少しこのあたりの知恵を社会で考えたほうが良いように思う。
(注)高分子学会賞を受賞したプラスチックロッドレンズの技術開発では、事業として日の目を見たときに開発の創始者が研究部門を異動していたという。受賞対象の筆頭となった三菱レーヨンU氏は、その人も受賞者の一人として加えたと高分子同友会で説明されていた。企業風土の品格の高さを示す逸話である。
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日馬富士問題に端を発し日本相撲協会で起きていた問題は、貴乃花親方一人が悪者になって解決したようだ。日馬富士問題は、貴乃花親方がかたくなな態度をとらなくても最初に協会の隠蔽しようとした動きは組織で仕事をした経験のある人には知られてしまう。
池坊氏を議長とする外部委員会が十分な機能を果たしておらず、貴乃花親方を救うことも、また指導することもできなかった。貴乃花親方のここに至る一連の稚拙な言動を見れば、しかるべき人が彼を指導すべきと多くの常識人は感じたのではないか(注)。
貴乃花親方は組織に残りたいのなら最初の処分で行動を慎むべきだった。一方相撲協会は、貴乃花親方の一連の行動を問題として考えるならば本来追放処分とすべきである。どちらもおかしな判断をしている。暴力体質と隠蔽体質は、日馬富士問題の処理プロセスから見えてきたように、貴乃花親方の思慮の無い行動で問題の本質が隠蔽され改善されそうもない。
日本相撲協会は貴乃花親方の人気を捨て去る決断ができなかった。貴乃花親方は、いい年をして稚拙な行動しかとれなかった。実は、このようなおかしなことは、どこの組織でも起こりうる。ドラッカーは経営において健全な組織の重要性を述べているが、どのような組織がよいのか具体的なモデルを提示していない。それを考えるのが経営者の責任として宿題を残したような書き方をしている。
当方も組織人としてその振る舞いで正しい在り方にこだわりゴム会社を転職するに至ったが、それでも住友金属工業とのJVを立ち上げるまではおかしな組織で持ちこたえた。その時の体験では、社長はじめ多くのアドバイザーに恵まれたことが、事業成功まで至る一つの要因だったと思っている。
会社を辞める決断をしたときに、引き留める人がいても当方の判断を否定する人はいなかった。ドラッカーも指摘しているように組織の価値判断に個人が合わせられないときには、その個人が組織から離れる以外に選択肢はないのだ。
今では、例えばコンプライアンス重視という当たり前の価値判断が一般的で個人の価値判断が組織の価値判断と大きくずれることは少なくなったと思われるが、20年以上前は、全社にそれが浸透していない悪事が組織にはびこるような状況が稀に見られる時代だった。
貴乃花親方は、日馬富士問題が決着したときに組織を辞めるのか、あるいは自己の価値判断を組織に合わせる妥協の道を選ぶのか選択すべきだった。働く意味は貢献と自己実現であり、その両者が健全に満たされる組織が働く人の理想である。また、働き方改革の本来目指すべき方向である。
(注)貴乃花親方にアドバイスをできる人は少ないが、池坊委員長はその役割の一人であったはずだ。今回の貴乃花の腰砕けの妥協姿勢を見ると、うまくアドバイスしていたなら彼を救うことができたのではないかと思う。組織の中で人材が育てられるのか、あるいは人材を逃がしてしまう組織になるのか、さらには人材を殺してしまう組織になるのかは、組織の問題とともに有能なアドバイザーをそろえられるかどうかである。今回の騒動を見る限り、日本相撲協会の外部組織は、ほとんど機能していないに等しいだろう。単なるお飾りになっている。
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PPS/6ナイロンのストランドがべとべとしていないのは、6ナイロン以外の添加剤がPPSに添加されていないからだ。そのうえ6ナイロンのTgが室温よりも十分に高いためである。
これは高分子添加剤がブリードアウト防止に使えるという一つのヒントを示している。しかし、高分子添加剤の問題点として常に改質対象となる高分子の改質ができるわけではないのだ。
換言すれば、改質したい高分子に相溶する高分子を見つけることが至難の業で、異なる高分子の組み合わせを相溶しようとしたときにフローリー・ハギンズ理論による制約をどのように乗り越えるのかという問題が出てくる。
そこで高分子の改質に低分子が用いられているのだが、なぜか低分子を用いるときにこのフローリー・ハギンズ理論を忘れている。少し物理化学に造詣のある人は、SP値でこの問題を考えようとする。
SP値で考えてることは、科学的視点で材料開発を行う時に間違ってはいない。しかし、SP値で選択された低分子を添加してもブリードアウトは起きてしまうのだ。
低分子では、室温以上で分子運動性が高分子よりも大きいので、改質しようとする高分子内部において拡散速度が速く、その結果内部に分散した低分子が、表面に移動してくることになる。
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ブリードアウトという現象は、高分子材料で成形体を製造する時に、耐久性や加工性向上のため添加した成分が成形体の表面に滲みだしてくる現象である。
少量であれば問題とならないが、べとべと感を感じるまで出てくると商品として使えなくなる場合もある。電子マッサージ器の電極パッドのように常時べとべとしていてほしい場合にはブリードアウトは大切な機能だが、多くの商品では気持ちの悪い手触り感となり敬遠される。
ブリードアウトという現象は、高分子材料に添加剤を用いる限りそれを0とすることはできない厄介な問題である。解決方法はブリードアウトしても手触り感が悪く感じない程度に工夫する以外に方法は無い。
添加剤を用いる代わりに、その機能を高分子材料の一次構造にグラフとした化合物で代用する、という技術や、添加剤のブリードアウトを遅らせるために高分子材料を化学修飾する方法は、良い方法だがコストがかかる。前者は一応ブリードアウトを0にできるが、いつも使える方法ではない。
高分子材料が広く普及してから今日まで、ブリードアウトは困った品質問題としてその対策が検討されてきたが、いまだに解決できていないのが現状である。
単相だったPPS/6ナイロンが2相に分離した話を紹介した。この現象で面白いのは、6ナイロンがブリードアウトしていてもよいはずだが、白濁したストランドの表面を触ってみてもべとべとしていない。
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本日ブリードアウトについて書き始めたが、昨日のほとんど何も語らない森友問題の証人喚問の衝撃があり、忖度について改めて考えた。佐川氏の忖度は職務を離れても続いていたが、野党の質問があまりにもお粗末で、自民党丸川議員の佐川氏に配慮した質問が光った。
仕事の都合でインターネットに配信されている映像で確認したのだが、佐川氏は、良くも悪くもプロフェッショナルとして証言台に立っており、一部質問者の無能さをさらけ出すような結果となった。
恐らく佐川氏は、書類を書き直す直接的な指示を出していないと思われる。冷静に考えても、公的文書を書き直せ、などというバカな指示を出すような人に見えない(注)。ただし、間接的なパワーハラスメントがあったのかもしれない。そして、これは想像になるが、追い詰められた人が忖度して書類を書き直し自殺した、という構図だろう。
当方が高純度SiCの事業を6年間の死の谷を越えて、社長印をもらい住友金属工業とのJVとして立ち上げたのは、忖度以外の何物でもないと佐川氏の答弁を聞いて思い直した。
そもそも40年ほど前に社長方針として、電池とメカトロニクス、ファインセラミックスを3本の柱として事業を推進するといわれても、当時の研究所はファインセラミックスに対して具体的な貢献シナリオを描けなかった。
その背景で高純度SiCを提案し、2億4千万円の先行投資の決済を社長から直接頂き、スタートしている。その後、ファインセラミックス研究棟を電池事業に明け渡せとか、いろいろ研究所内で言われても、毎年社長訪問が研究所で実施されたときに社長が必ず研究棟まで足を運んでくださったのでJVまで持ちこたえた。
しかし、FD事件だけはまいった。解決の出口が無くなったのである。死ぬか生きるかの選択に等しい転職を忖度して選んだのだ。早い話が、組織で忠実にならんとしたときに、組織の責任者が誰も責任を取らない状態では、何もなかった状態を受け入れるしかないわけである。しかし被害者の立場で何もなかった、と忖度できるのは、一回だけの特殊な状況と我慢できる場合だろう。
財務省の自殺者の遺書に書かれた意味もそれに近い。おそらく、どうしようもない時に担当者が忖度して禁じ手をやった場合には、その後昇進できたのにそれができなかったから、というような意味が書かれていたという。忖度の連鎖がハッピーエンドに終わらなかったのが今回の事件の本質と思われる。
自殺された人に同情するが、業務上どうしようもできない時には組織を離れること、というのはドラッカーの遺言である。組織人として仕事をするときに、忖度をしなければいけない状況に一度はサラリーマンだれでも遭遇するだろう。
ただその結果が悪い結果として現れても決して死んではいけない。そっと組織を離れるべきである。当方は、1991年9月30日にゴム会社を退職し、10月1日に写真会社へ移った。年金手帳が写真会社に届いたのは、送別会が済んだ11月になってからである。ただし、高純度SiCの事業は今でも続いている。2011年3月11日という写真会社の退職日と同様に人生忘れることのできない思い出である。
(注)誰が考えても、状況によっては一つの答えしか選択できない場合が仕事として出てくる。そのようなときにドラッカーは「何もしない」というのも一つの選択であると語っている。すなわち、doで考えると一つの答えしかない場合でも、「何もしない」というもう一つの答えがある。ただ、この「何もしない」も選択できない、と考えるのかどうかは難しい場合はどうするか。もう組織を離れる以外にないのだ。責任者であれば辞職となる。我慢して居座るのも選択肢としてあるが、それが許されるのは、非責任者だろう。中間転写ベルトの開発では、外部からコンパウンドを購入していたなら絶対に成功できないことが、単身赴任してすぐにある結果として出た。センター長が8000万円の決済をすると決断してくださったので、子会社でカオス混合プロセスのプラントを建設し、業務を成功に導くことができた。リーダーの責任は、業務遂行において部下に忖度させるように迫ってはいけない。部下が仕事をやりやすいように決断してゆくのが優れたマネジメントである。
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23日の内容に驚かれたアカデミアの方は何人いらっしゃるだろうか。科学的ではないばかげた信頼のない情報とかたずけられた人は、イノベーションを起こせるような研究はできない。
特殊な混練プロセスでPPSと6ナイロンが相溶し、透明になったのは事実で、その時のストランドには分析しても結晶らしきものは見当たらなかった。今手元にある白いストランドについては分析をしていないが、おそらくそこにはPPSの結晶と6ナイロン相が観察されるだろう。
分析して科学論文にし発表するだけの価値のある内容と思っているが、面倒なのでそれをしない。ただ多少は貢献の意欲があるのでこの欄に紹介している。しかし、当方もまだコンサルタントとして仕事をしたいので、すべての情報を書かない。
この欄では知らリズム(昔の流行語チラリズムのパクリ)で世間に興味を持っていただけるような内容を紹介しているが、特許になるぎりぎりのところに関するキモの情報を書いていない。
PPSと6ナイロンの相溶については10年以上前に特許出願し、特許として成立しているので書いているが、脆いPPSがしなやかな材料になっていた。
このフローリー・ハギンズ理論に反する実験結果は、ブリードアウトとも関係している。しかし、そのすべてをここで書くつもりはないが、まだ知られていないぎりぎりのアウトラインの輪郭を明日から書いてみたい。
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イタリア・ミラノで行われた男子フリー。大会前に右足甲を痛めていた宇野選手はジャンプで精彩を欠き、転倒するなど苦しみながら演技を終え、リンク上でもインタビューでも涙を流した。
この宇野選手に対して、プロフィギュアスケーターの安藤美姫の、「痛かったよね…泣くよね…やり遂げたあなたは本当に強い」とたたえたツイッターが話題になっている。
安藤嬢は女子の公式試合で4回転ジャンプを世界で初めて成功させたスケーターだが、リンク外のニュースの話題が多くスケーターとしての功績が霞んでいる。ドラッカーが「どのように覚えられたいか、そう思って生きよ」と著書に書いていたことがよくわかる。彼女の今のような生き様では、彼女が偉大なスケーターであったことが忘れられてしまう。
安藤嬢が4回転ジャンプを成功させたときに、マスコミ界は真央ちゃんブームだった。それもあって、彼女の偉業はあまり知られていないが、その責任はその後の彼女にある。モロゾフコーチとの恋愛に走ったり、そのコーチのアドバイスに従い、4回転を封印し、プログラムの難度を下げロバストの高いプログラムに変更したり、と甘い人生を送っている。
浅田選手のトリプルアクセルも最初はロバストが低かった。「あの子は大事なところで転ぶ」と森元首相が発言し大炎上しているが、やがてそのロバストも上がり、キムヨナとの名勝負を繰り返すことになる。ロバストを求め努力を続けた浅田選手と、ロバストを求め難易度を下げた安藤選手とはスポーツに対する姿勢や考え方が異なるのだ。
トリプルアクセルに拘った浅田選手はその後、スケート選手として選手生命を左右する膝を痛め引退することになる。確かに安藤選手も脱臼に苦しんだ過去があるが、安直な選手人生を送った彼女に「痛かったよね」と言われても宇野選手は迷惑ではなかろうか。
一流を目指すスポーツ選手ならば、ロバストを高めるために、その技術レベルを下げるような取り組みをしてはいけない。浅田選手が今も国民に尊敬され愛されているのは、練習量を多くしロバストを上げ挑戦し続けたからである。
今回のK.オズモンドやネイサンチェンの優勝で終わった世界選手権は、転倒者続出の大荒れだったが、その荒れた試合を見ながらいろいろ考えさせられた。
技術開発もこのスポーツと同様にロバストが要求されるが、その時に目標スペックを下げるシステムと、高い目標を狙いながらロバストをあげるシステムとどちらを選択するのかは技術者の責任である。
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昨晩ミラノで開催されていた「フィギュアスケート・世界選手権」男子フリーのライブ放送が夜8時から行われた。平昌五輪銀メダリストの宇野昌磨は昨年の世界選手権に続いて2位だった。
オリンピック終了後、靴を新調した影響か、はたまた右足故障の影響からかジャンプで転倒が相次ぎフリーは179・51点、SPとのトータルは273・77点で、300点越えはならなかった。
ただ、終盤にはジャンプを成功させており「失敗が多く終わったが、最後の方、何とか耐えられたのは練習の成果と考えたい」とインタビューに答えていた。銀とはいえ満足な演技ができなかったので悔しかったのか、その目には涙があふれていた。
出場枠確保の戦いでもあり、期待された田中刑事は13位だったにもかかわらず、宇野が2位、初出場の友野一希ががんばって自己ベストの記録で5位に入り、来年日本で開催される世界選手権の3枠を確保した。
ちなみに、オリンピックでその実力を根性で見せたネイサン・チェンは321・40点でダントツ1位だった。
1位と2位が大差となったのは、2位以下6位までの選手でパーフェクトに演技ができたのは友野一人で、彼はFSだけ見れば3位と健闘していた。
期待された4回転ジャンパーたちは、皆複数の転倒が相次ぎ、SP上位の選手が6位以下に沈み、転倒してもSP4位の宇野が銀メダルをとれた原因となっている。
同じ4回転ジャンパーでも安定性(ロバスト)が実力差として現れた。上位陣で4回転ジャンプを転倒せず飛べたのが、友野とネイサン・チェンだけだったのだが、友野はその実力の余裕というよりも初出場の挑戦者という真摯な姿勢が実を結んだ。
理論的には人間の能力で5回転ジャンプまでできるそうだが、現在の男子フィギュアスケートがその能力の限界ギリギリのところで戦っている状況を今回の世界選手権は見せてくれた。
荒れた大会は、女子も同じで、SP2位でスタートした平昌五輪金メダルのアリーナ・ザギトワはフリーで3度の転倒が響き128・21点と、合計207・2点の5位に終わった。
オリンピックで批判が噴出し、ルールの見直しが提案されるまでになった、後半に7本のジャンプを固め打ちする演技構成が、1.1倍の得点増を狙うという彼女の”せこい特徴”である。
その最初の高難度のコンビネーションのジャンプのトリプルルッツでまず転倒すると、ダブルアクセルからのトリプルトゥループも転倒。トリプルループにも果敢に挑戦したがこれも転倒するなど、まさかの3度の転倒となった。
解説によれば、後半にジャンプを詰め込んだために、ミスの立て直しが難しく、曲に合わせようとすると複数のミスが出るのは避けられないという。
これは策士、策に溺れる状態だが、引退した浅田真央がトリプルアクセルに拘ったチャレンジ精神と異なり、フィギュアに求められる芸術性を無視した得点増という狙いが見えすぎであり、同じ極限への挑戦だとしてもザギトワに対して世間の見方は厳しい。
ちなみにフィギュアスケート女子の成績についてSP首位のコストナーはFSで精彩を欠き、FS3位だったオズモンドが優勝し、樋口が2位、宮原が3位だった。
女子フィギュアスケートでは、人生において運が半分、という厳しさを毎年見ることができる。オズモンドの信じられないという笑顔が、その人柄も感じさせて、あのゴールドよりも一瞬美しく見えた。
かつて、キムヨナと浅田真央の熾烈な戦いでは、限界よりもロバストを追求したキムヨナが、スポーツゆえにチャレンジを重視した浅田真央に勝利回数で上回っている。しかし勝利しても、それが当然というキムヨナの姿勢(注)を思い出すと、勝利した時の浅田真央や今回のオズモンドの笑顔には何か救われるものがある。
(注)浅田真央が一位になっても、間違えてキムヨナが一位の表彰台に乗ろうとしたシーンも過去にあった。
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