活動報告

新着記事

カテゴリー

キーワード検索

2024.08/03 AIがフラクトグラフィー

生成系AIが話題になって2年近く経過した。当初ワイドショーなどで取り上げられた時には、披露宴の祝辞や営業メールの代書が話題となったが、ハルシネーションの問題から、研究開発者には見捨てられたようなところがある。


しかし、情報調査に関してインターネットにつながったAIを用いると、ハルシネーションの無い整理された情報が得られる。ただし、そのためにはプロンプトデザインが重要になる。


AIが登場した時には、プロンプトエンジニアリングという職業が生まれるなどと言われたが、そこまでは必要が無く、「デザイン」さえできればよい。


これにはコツがあり、オブジェクト指向の理解が不可欠である。オブジェクト指向については、TRIZから生まれたUSITでも展開されたが、DXが定着した社会では常識となった。


このオブジェクト指向も取り込んだ質問でAIに樹脂の破面の写真を解析させるとフラクトグラフィーを実施した結果が出力される。破壊力学がもう少しで高分子分野でも科学として用いることができる見通しが得られている時代だ。AIは、最先端を理解している。


8月7日にシーエムシーリサーチでこれらの知識の復習と生成系AIを研究開発の武器とする使い方のセミナーが開催されます。弊社へお申込みいただきますと割引がございますのでお問い合わせください。

カテゴリー : 一般

pagetop

2024.08/02 分散技術の難しさ

水へ塩を溶解するような感覚で砂糖を溶かしていては、おいしいアイスコーヒーを飲めない。インスタントコーヒーの粉末が溶けにくいからである。


砂糖とコーヒー、少しのお湯無ければ水で最初によくかき混ぜて、滑らかなペースト状にする。まったく凝集物が無くなってから、攪拌しながら所定の冷水を入れると、おいしいアイスコーヒーが完成する。


必要に応じて、ミルクと氷を入れる。アイスコーヒー1杯飲むのにも攪拌プロセスは大変である。やはりアイスコーヒーは、氷が入ったコップに、コーヒーを抽出しながらいれて、ブラックで飲むのが一番おいしい。


塩と砂糖で分散の手間が異なるように、高分子へ低分子と高分子、あるいは微粒子を分散する時にもそれぞれ手間は異なるが、意外と無頓着な人が多い。


タイヤ用のゴムのコンパウンドは、射出成形体用コンパウンドに比較するとアイスコーヒーを作る手間以上の差があるプロセスで生産されていることを知らない人は多い。


射出成型体のほとんどは、適当なアイスコーヒーの作り方に近くてもそこそこのものができてしまうが、タイヤ用のゴムでは加硫むらが起きるなど様々なトラブルが発生するので混練プロセスの品質管理は厳しい。

カテゴリー : 一般 高分子

pagetop

2024.08/01 高次構造と添加剤

高分子の高次構造は、今でも難解な対象である。例えば自由体積部分を観察しようとしても苦労する。その量について、DSCで測定されたTg部分のエンタルピーと相関すると言われている。


それではこの部分と成形体密度とが相関するのか、というと、球晶が内部に生成しているときには、球晶の量の影響を密度も受けるはずなので単純ではない。


球晶の量は、X線小角散乱で計測し、それで量を確認できないかなどと一苦労する。ポリマーアロイや低分子の添加剤を添加するとさらに話は複雑になってくる。


相溶は球晶部分で見つかっていないので、ポリマーアロイの少ない成分のポリマーや低分子添加剤の分散は、非晶質部分で起きていると思われるが、非晶質部分には、自由体積部分も存在するのでその分散状態の考察は難しくなる。


ブリードアウトがマトリックスへの溶解度で決まる、と説明されても、それを信じていると市場で品質問題を引き起こすことになる。その溶解度をどのように見積もったらよいのかという難しい問題があるからだ。


難燃剤の効果も高次構造の影響を受ける。ハロゲン系難燃剤は多少その影響の効果は表れにくいが、リン系難燃剤では、分散が悪いと適切な量が添加されていても、残ジンが起きる。ひどい場合には、見かけ、効果が現れなくなる場合も存在する。

カテゴリー : 一般 高分子

pagetop

2024.07/31 フェノール樹脂の高次構造

一次構造があたかもフェノールとメチレンとの重合が進行して生成したような構造をしているフェノール樹脂だが、触媒存在下フェノールとホルマリンとの付加反応で生成したモノマーを含むオリゴマー前駆体のメチロール基が反応し、縮重合して合成される。


ここで、フェノールとホルマリンとの反応は、触媒と反応温度等で制御されるのだが、フェノールのホルマリン付加体が1種類ではなく、多種類の混合物となる。


酸触媒が用いられた場合は、ノボラック樹脂となり、レゾール樹脂はアルカリ触媒で合成されるが、それぞれのフェノール樹脂前駆体の構造を合成時の反応で1種類に制御することは困難である。


すなわち、ノボラック樹脂もレゾール樹脂も、その硬化後の高次構造の正確な情報を前駆体から得ることが難しく、その結果物性制御は、プロセスと原料管理で行うことになる。


難燃性について品質管理活動により、LOI値の偏差で1以内に追い込むことは可能だが、一般の樹脂は、0.5以内で管理できることを考慮するとこの偏差は大きいと言える。


問題は、フェノール樹脂前駆体のスペックをどうするかであるが、これはフェノール樹脂メーカーのノウハウに依存することになり、40年近く前はそのメーカー間の力量に大きな差があった。


あるメーカーAとゴム会社は契約を結び、高防火性天井材の開発を行ったのだが、M社の難燃剤が添加されていないフェノール樹脂発泡体の防火性能と同等の発泡体を得ることができなかった。


リバースエンジニアリングにより、前駆体の品質制御が重要ということを理解できたが、A社にはそのような制御技術が無く、それゆえ難燃剤を添加して防火性能を補わなければいけなかった。


M社のフェノール樹脂は、ソフトセグメントがほとんどないのだが、A社のレゾール樹脂を使用してフェノール樹脂発泡体を合成するとソフトセグメントが5%以上必ず生成した。


このソフトセグメントの量が防火性能に影響していると推定されたのだが、レゾール樹脂を硬化させる反応をいろいろ検討してもM社のように5%以下とすることができなかった。


すなわち、レゾール樹脂合成条件まで踏み込んで研究しなければ高防火性天井材開発を難燃剤無添加で開発することは難しかった。

カテゴリー : 一般 電気/電子材料 高分子

pagetop

2024.07/30 フェノール樹脂

フェノール樹脂は、フェノールとホルマリンが縮重合した樹脂であるが、大半が2段階以上のプロセスで製造されている。古くからその耐熱性は知られており、絶縁性が要求される分野で主に使われてきた。


その製造方法は、フェノールとホルマリンとの反応でオリゴマーを合成する。そしてこのオリゴマーを前駆体として重合と3次元化を進め、硬い耐熱性樹脂とする。


すなわち、大半のフェノール樹脂は、まず一次構造を決定する前駆体を合成し、その前駆体を反応させて熱硬化性樹脂として完成させる。


前駆体合成時に、アルカリ触媒を使用した場合には、レゾール樹脂と呼ばれ、熱硬化性樹脂とするときには、酸触媒が使用される。


また、前駆体合成時に酸触媒を使用した場合には、ノボラック樹脂と呼ばれ、熱硬化させるときにアルカリ触媒を使用する。


すなわち、フェノール樹脂にはレゾール樹脂とノボラック樹脂の2種類が存在するが、熱硬化樹脂となった時には、いずれもフェノールとホルマリン由来のメチレンとの縮重合した樹脂となる。


それなりの製造条件で合成すれば、空気中で変色しながら250℃(280℃と書いてある論文も存在)まで耐えられるので耐熱性高分子として古くから知られていた。


空気中の加熱により150℃前後から変色するのだが、これはキノンの生成が原因である。このキノンの生成具合が、フェノール樹脂により大きく異なる。1960年代の耐熱性高分子に関する研究論文にはこのあたりのことが詳しく書かれている。

カテゴリー : 一般 高分子

pagetop

2024.07/29 難燃化技術開発のコツ

高分子の難燃化技術の開発を行っていると、時々冗談のような現象に遭遇する。その時、大笑いできれば精神衛生を健全に保てるが、科学で理解できると信じ、悩み続けると精神を病む場合もあるので注意を要する。


フェノール樹脂天井材の開発では、プロジェクトメンバーの一人が鬱で入院している。それにもかかわらず、メンバー補強の無いまま納期通りに完成することが求められた。


さらに残業時間の上限は、毎月20時間の制限付きである。当然この開発はサービス残業でこなすことになる。それだけではない。頭の固い上司の壁が、メンバーを苦しめた。


上司がマネジメントではなく、支配者として機能していた会社である。コーチングは1990年代から日本に導入されたが、マネジメント手法としての目標管理は、QC手法として日本で古くから実施されていた。


この目標管理のマネジメントを間違えると、最下層の担当者は地獄となる。管理者は、支配者となり、目標数値を達成できないのは部下の能力として評価を低くつけ、経営者に詫び許しを求めるようになる。


その結果、社内の有能な人物をアドバイザーとして招聘したり、コンサルタントを雇ったりする。すなわち、目標を達成できない原因がマネジメントにあるのではなく、周囲の能力にあると見せかけるのである。


すなわち、目標の基準の誤りや目標実現方法の誤解など管理者の責任を隠蔽化し、すべて部下の責任と見えるように、管理者がアクションを取り始めると現場は地獄になる。


ロバスト確保のために難燃剤を添加した配合を認めて欲しい、と上司に説明しても、難燃剤を使用しなくてもライバルは商品化している、と譲らない。


上司の意味するライバルは、フェノールとフォルマリンの反応から、すなわち原料開発から行っている企業であり、原材料の品質制御も可能な環境で技術開発を行っていた。その発泡体の価格は、高価であったが力学物性が天井材の目標を満たしていなかった。


防火性以外にフェノール樹脂の力学物性改良とコストダウンがゴム会社では解決すべき技術課題として設定されていた。難燃剤の添加はコストアップとなる場合が多いので、その観点で上司は反対している、と考えるようにしていた。


ここで、仮に無能な上司であっても、有能な上司と信じることがコツである。本当に有能ならば、ヒントに結び付くアドバイスなりできるはずであるが、そのようなことが無くても、「自分が上司ならばどのように部下を指導するのか訓練している」とでも捉えると良い。


上司の能力に対してその不満まで蓄積してくると、難しい難燃化技術の問題では精神を病む恐れが出てくる。部下の立場では、上司を選べないことをまず悟り、ストレスを少しでも和らげる努力をすべきである。


基本機能が防火性にあり、そのロバスト確保は技術開発として当たり前であるが、科学こそ命の研究所では、難燃剤無添加でも目標を達成できる場合があれば、そこを目指せとなる。ロバストという言葉は死語であった。


ただし、レゾール樹脂を外部から購入するサプライチェーンの条件で、フェノール樹脂の高次構造を自由に設計し、ロバスト確保と高防火性を目指す開発は困難だった。


当時市販されていたレゾール樹脂は、ポットライフが短いだけでなく、品質のばらつきが大きかった。その問題を解決できない以上目標達成は困難だった(原材料メーカーとは共同開発契約が結ばれ、原材料の品質はそのメーカーの力量という条件で開発が進められていた。不幸なことにこのメーカーの力量が低かった。)。


すなわち外部からレゾール樹脂を購入し開発を進めるというサプライチェーンでは、ロバスト確保のために購入したレゾール樹脂に難燃剤を添加する以外の技術手段が無かった。

カテゴリー : 一般 高分子

pagetop

2024.07/28 小便小僧の思い出

高分子の難燃化技術で困るのは、開発過程で疑心暗鬼となるトランスサイエンス特有の問題である。例えば、耐熱性高分子として知られているフェノール樹脂は、その分子構造から空気中で自己消火性を示すように思える。


ところが、プロセス条件を制御して、空気中で面白いほど燃えるフェノール樹脂を製造することもできれば、マッチの火で着火さえも難しいフェノール樹脂も創り出すことができる。


すなわち、難燃性に高分子の高次構造が関わっているため、プロセスでその難燃性が大きく変化する。高分子の高次構造がその難燃性に影響していることをご存知ない方は多い。フェノール樹脂天井材の開発において、難燃剤を添加した配合をプレゼンテーションしたら、馬鹿にされた経験がある。


したり顔で高分子の難燃化機構の説明を聞かされ、それゆえ耐熱高分子の大半は自己消火性のはずだ、と説明してきた。科学的に推論を進めればそのような言い方もできるかもしれない。


そのとき、小便小僧の代わりを少女ができたか、と逆に質問して会場が大笑いとなったことがある。今ならば問題発言かもしれないが、当時は意味不明の発言として大笑いとなった。


何でも科学で説明できると考えている人には、意味不明の命題をぶつけると面白い。一緒に笑いだす人もおれば、突然怒り出す人もいる。


後者は、冗談を理解しない人であるが、科学で現象をすべて説明できる、と盲信している人も技術のプレゼンテーションの場で冗談を言っていることに気がついていない。


今ならトランスサイエンスという言葉も常識となったので、すべての現象を科学で説明できる、と信じている人は少なくなったかもしれないが、40年以上前の日本は、アメリカでトランスサイエンスが話題とされてもセレンディピティーだけ輸入するような時代だった。臭いものに蓋をしたのだ。

カテゴリー : 一般 高分子

pagetop

2024.07/27 実験のやり方(1)

科学の方法に従う実験のやり方では、仮説を確認するために一因子実験となり、その実験で仮説が否定されるように計画を立てる。統計で帰無仮説を設定するようにあらかじめ否定される仮説を立てて実験で確認する。


このように、一因子実験が一般的であり、さらに他の因子からの影響を受けないように実験を仮説の扱いに添うように管理して行わなければいけない。


科学の方法以外、すなわち非科学的方法には様々な方法があるが、仮にこれらを技術の方法と呼びたい。科学の方法は論理学の誕生により生まれており、技術の方法は、ピラミッド建設事例など古くから行われている。


フェノール樹脂とポリエチルシリケートとのリアクティブブレンドによる高純度SiCの開発において最初の実験は、配合の異なる4種類の前駆体を同一条件、同一水準の加熱処理で行われた。


しかも、温度コントローラーが途中で暴走したために非常停止して得られた特殊な熱処理条件となったのだが、これがベストの条件という、まさにセレンディピティーによる方法となった。


この方法をこの欄の読者に勧めても軽蔑されるかもしれないが、誠実真摯に生きていると、時々神様か仏様、その他人知の及ばない力に遭遇する。


例えば、PPS/6ナイロン/カーボンの配合をカオス混合で製造したコンパウンドにより、半導体無端ベルトの歩留まりが10%から100%に向上したのだが、これは、フローリー・ハギンズ理論で否定されるPPSと6ナイロンの相溶が起きたためである。


その結果わずかに生じたスピノーダル分解により、あたかも分配混合が進んだかのようなカーボンの分散構造のコンパウンドが製造された。

カテゴリー : 一般

pagetop

2024.07/26 実験の方法

1980年代にイムレラカトシュが、科学の方法を完璧に遂行したいならば否定証明となる、と指摘してから40年以上経過した。


この意味がどれほど正確にゴム会社で理解されたのか知らないが、基礎研究所から批判されてもKKD法でタイヤ開発を遂行し大成功を収めて世界のトップになった。


ゴム会社の基礎研究所同様に今も科学の方法で開発を進めている企業があるならば、実験のやり方を見直した方が良い。理由は簡単で、イムレラカトシュの言葉は、科学の方法で開発を完璧に遂行したならばモノはできない、という意味だからである。


実験方法のパラダイムとして、科学の方法とそれ以外の方法とがある。それ以外の方法にはタイヤ開発で行われている方法以外に同じく1980年代に日本で流行したセレンディピティーに頼る方法も含まれる。


このセレンディピティーなる単語は、サイエンス&トランスサイエンスなる記事が雑誌「サイエンス」に掲載された時に日本で流行している。


トランスサイエンスについて、深く理解できなかったアカデミアの研究者がセレンディピティ―のみ日本で流布している。学会の特別講演などで講演者がしたり顔で説明しているのを何度も聞いている。


セレンディピティーは犬も歩けば棒にあたるというような意味だそうで、アカデミアの偉い先生が自慢げに説明している姿を失礼だが正直間抜けに見えた。これを高分子同友会で某企業のCTOが得意げに用いて講演をしていたので絶句した。


本来は、トランスサイエンスを理解した上でセレンディピティーという言葉が生きる。当時日本でも科学論が盛んで似非評論家が本を書いたりしてデビューしているが、誰もアメリカで注目されたトランスサイエンスについて書いていない。21世紀になって、大阪大学の先生がようやくトランスサイエンスなる書を上梓されたが、遅すぎる。(明日に続く)

カテゴリー : 一般

pagetop

2024.07/25 信頼

オリンピックを辞退した宮田選手の話題が毎日掲載されている。やはり、それだけ社会に対するインパクトが大きかったのだろう。


ここで心配になってくるのは、体操協会はじめ関係者と宮田選手との信頼関係である。禁止されていた酒タバコをやっていた本人が辞退を申し出たのだから、何も問題は無いと思っていたら大間違いである。


日本体操協会は、現地における内部告発、と明確に言いながらも、告発者を守るためにそれを開示しないと言っている。しかし、現地にいる人間とNTCに出入りできる人間は限られている。


恐らく宮田選手は内部告発者に気づいているだろう。そこで問題になってくるのは、信頼関係である。指導する側と指導される側との信頼関係は重要で、それが崩れると指導効果は上がらない。特にコーチングでは信頼関係の構築が重要である。


これは、FD事件の被害者となっているときに指導社員として新入社員に3か月ほどで転職されて痛切に感じた。組織からいじめられている指導社員を新入社員がどのように見ていたのか。


偶然にもその新入社員が助手を務めていた大学と当方の転職先とで共同研究を行うことになり、偶然出会った。そして当方は彼のおかげもあり、客員教授に任命されている。


この時ぐらい、指導者がいくらつらい立場にあっても、それを隠して我慢して行動しなければいけない掟を痛切に感じたことは無い。当方は指導者として未熟だったと気づいた。


トヨタ会長の「日本を出ていきたくなる」発言が批判されるのは、このような気づきを学びに変えていない指導者の姿が見えてしまうからだろう。指導者に対して社会は聖人であることを求めている。


それだけに、宮田選手の将来が心配になってくる。指導者との信頼関係をうまく構築できなければ、体操選手としてだけでなく、人間としての成長も期待できない。今回の辞退が無駄になってしまう。

カテゴリー : 一般

pagetop