ロケット開発は失敗を重ねて技術が出来上がる、とどこかに書いてあった。昨日の記者会見でもそのような姿勢が見え隠れし、今回の失敗に対する深い反省の姿勢を記者会見から感じられなかった。
まったくのパイオニアならば、失敗を重ねて、の言い訳もできようが、特許はじめ各種文献で技術を確認できる時代である。ゆえに今回の失敗は、開発設計段階の信頼性工学を導入していなかった、あるいはそれを使いこなせていなかったことが原因の可能性が高いのではないかと疑っている。
ちなみに当方は信頼性工学を勉強してから開発に失敗したことはない。例えば製品化まで半年、と言う難しい段階で、1億5千万円と1年半という見積もりが出ていた工場建設を、8000万円の予算と3か月の短期間で立ち上げている。
ロケットとコンパウンド工場とは難易度が異なる、という人がいるかもしれないが、予算や基盤技術0の段階からの3か月立ち上げに着目していただければ、多少は開発設計段階の信頼性工学の効用をご理解いただけると思う。
タグチメソッドも信頼性工学のツールの一つだが、FTAやFMEAを愚直に行うことが重要である。記者会見をこれまで聞いてきてこれらをやっていなかったのではないかと疑いたくなる発言、あるいは信頼性工学そのものを小ばかにしているような発言も聞かれた。
科学者は信頼性工学をバカにしたくなるものらしい。当方はゴム会社時代に周囲が科学者ばかりの研究所でバカにされながら愚直に日科技連で学んだ信頼性工学等を実践してきた。
科学者と言うものは、このような愚直な技術者をバカにするものだと当時学んだが、これまでの人生経験から、そろそろそのような考え方を改めて信頼性工学を真面目にJAXAは取り組むことをお勧めする。
H3の一段目は新たな開発ゆえ、と前回言い訳ができたが、2段目のエンジンは新規開発ではない(注)。元ロケット開発技術者のインタビューで、着火信号が出されなかった可能性が高いとの説明が他のニュースであった。
政府は、今回の失敗について責任者をどう処分するのか考える前に、今後もお金を出す予定ならば信頼性工学の導入と徹底をJAXAに迫るべきである。あるいは思い切って国として開発をあきらめると引導を渡すのも選択肢として考えるべきだ。
原因究明に時間がかかるようであれば、これまでの開発手法が間違っていたと判断すべきである。技術開発は科学の研究と異なり、機能が動作しない時の原因は以外にも単純であり、解明しやすい。また信頼性工学の導入によりそのように技術を組み上げることが可能だ。
少なくとも責任者の答弁において信頼性工学の香りが漂うレベルまでならない限り予算を出さない、という強い態度でJAXAに臨んでほしい。今のままでは税金がもったいない。次回失敗しないために信頼性工学を学びたいなら、弊社はいつでもご相談にのります。
(注)電気回路が新規開発の可能性があるが、電気回路であれば、ロバスト設計を行えばミスを防げる。どこまで信頼性確保のための努力を行ったのか疑問が残るところである。
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ラテン方格を用いるTMでは、実験計画法よりも因子の区分を厳しく行う。実験計画法では、いわゆる魚の骨を書き上げ、向上したい特性に大きな影響を与える因子を考察し、見出した因子をラテン方格に配置して実験を行う。
このときうっかりと誤差因子を割り振ることが起きるのだ。信じられないだろうが、実験計画法では、因子を制御因子とか信号因子とかの区分を行わない。今ではTMが浸透したので50年前のこのようなうっかり実験計画を信じられないかもしれない。
特性要因図、いわゆる魚の骨を作成するときに50年ほど前には、制御因子や調整因子、信号因子などを区別しなかった。ましてや誤差因子を取り上げることは無かった。
過去に作成した特性要因図には、誤差因子まで因子として書き上げていた。タグチメソッドでは、誤差因子を明確にして取り上げ、それらの水準についても考察する。
そして機能を+側へ影響を与える誤差の水準とー側へ影響を与える誤差の水準とを考察し、誤差の調合を行った水準を用いてSN比を求めたりする。
このあたりの説明を聴いたときには衝撃的だった。特性要因図では、変動する因子について制御できるものと制御できないものという議論を行うことがあるが、制御できない因子についてそれを誤差因子と見なし、積極的にそれを取り入れて実験を行うなどという発想など50年近く前は無かった。
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ラテン方格の外側に機能を調整できる因子の機能に対する相関係数を割付けて実験計画法を行うと、その相関係数を大きくできる因子を見つけることができる。当方は新入社員時代にこの方法を考案している。
すなわち、ここで機能を調整できる因子とは、TMでいうところの基本機能の制御因子の一つである。TMでは、制御因子を見出した後、制御因子の中でSN比に影響を与えない因子を調整因子と呼んでいる。
また、TMで基本機能の感度やSN比を求めるために外側へ配置するのは、信号因子である。この信号因子を変化させて計算されるSN比を外側に割り付ける。そして、SN比を向上できる制御因子を見出し、調整因子で感度をあげるのが、TMでおなじみの二段階の実験法である。
実験計画法においてラテン方格の外側に測定の生データを割り付けて分散分析を行うと、誤差が小さくても最適条件を見出せないことがあったが、外側に相関係数を割り付けた実験計画法を行うようになってから、面白いように最適条件が当たるようになった。
また、このような実験を行うようになって、日科技連で指導された因子の見方以外に、誤差因子を意識するようになった。
TMではラテン方格の内側に割り付けるのは、制御因子だけだが、実験計画法では制御因子かどうか分からないものまで割り付けることがあった。
これは実験計画法を経験されている方ならばご理解いただけると思う。制御因子かどうか考えずにうっかりと誤差因子を割り付けて誤差因子が有意となるような笑えない結果が出たこともあった。
これは、実験における因子にどのような種類があるのか考えていないためにおこる。科学で仮説を立てるときにこのようなことは特に意識しないのでTMの視点では科学の実験姿勢に問題があることになる。
しかし、改善したい機能の相関係数をラテン方格の外側に割り付けるようになって、最適化するためには、それができる制御因子とその水準を知りたいと自然に考えるようになり、その結果誤差因子を意識するように変わった。
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元NECトップ技術者により、表題の原因について語られた記事がニュースとなっていた。大きなきっかけとして1986年に締結された日米半導体協定があげられていた。
その結果、やらなくてもよい無駄な仕事が日本政府から現場技術者へ求められたという。それ以外にもいろいろ婉曲に書かれていたが、ようするに身内が技術者の足を引っ張たのである。
これは、日本企業ではよくあることで、イノベーションが社内から起きると、周囲がその足を引っ張るのである。足を引っ張るだけでなく、当方は、一人で担当するようになってからFDを壊される以外に電気炉も廃棄されるなどあからさまな業務妨害を受け仕事の推進そのものが難しくなっていた。
NECの元トップ技術者は、当方のように明確には書いていないが、裏を考察すればその置かれた状況の苦悩の本音が透けて見えてくるのだ。
ソニーのような、やや日本企業の風土とは異なる企業では、NECなど凋落ブームとなっていっても、独自の半導体技術を育てイメージセンサーでは世界のトップレベルを維持している。
ゆえにすべての半導体メーカーがダメになったわけでなく、日本企業的体質の企業がダメになった、という見方が正しいのかもしれない。
NECトップ技術者による反省の弁からは、日本特有のイノベーションを嫌う風土を変えない限り、半導体産業の復活は無い、と読み取れる。
新入社員の社長講話では、火中の栗を拾えるような社員になれ、といいながら、それを実践しても火中の栗を拾って成果を出している社員が、火だるまとなるように周囲から油をかけられても、それを見捨てるような経営を行っていては、新事業など育たない。
ましてや犯罪と呼べるような行為があってもそれを隠蔽化する体質では、誠実真摯の技術者はそのような企業や国を見捨てるだろう。グローバルな時代において技術の流出を嘆くよりも問題のある日本的な体質を改善しなければいけない。
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タグチメソッド(TM)=品質工学として根づくのに20年以上かかっている。日本で普及が始まって以来30年以上経ち、データサイエンスとしても注目されるようになった。
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当方はTMが知られるよりも前に、ゴム会社の研究所で実験計画法をバカにされながらも使い続けた。ゴム会社では、日本科学技術連盟のBASICコースを修了することが技術系社員に求められていたが、研究所で必須となったのは当方の世代からだった。
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そのため、先輩社員や上司の理解が得られないまま、統計手法を職場で用いることになった。研究所では科学が唯一の哲学であり、仮説設定して実験を行えば検定など必要ない、という猛者までいた。
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統計科学の観点では、仮説の検証には検定が必要だと述べても頭ごなしに否定されている。困ったのは、実験計画法により実験を行っても有意となる因子が見つからなかった時である。
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科学の形式知から有意となるべき因子でも誤差分散が大きいと有意とならないのは、統計をご存知の方ならばすぐに理解していただけると思う。
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ゆえに明らかに有意となるべき因子が見つからない結果がでると上司も含め研究所内で大笑いの語り草となった。それでも実験計画法にこだわった。
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ある日、開発とは機能を向上するために行う行為なので、機能を向上できる科学の形式知から自明の因子をラテン方格の外側に配置する方法を思いついた。
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こうすることで分散分析の対象から外すことができると考えた。今ならば外側に配置した因子についても分散分析を行うことを考えるが、当時はそこまで思いが至らなかった。
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その結果、タグチメソッドの感度重視の実験にほとんど似た方法で実験計画法を行うことができた。ただし、当方は外側に割付た因子で分散分析を行いたくなかったので、外側には誤差因子を割り付けていない。
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タグチメソッド(TM)が日本で普及し始めてから30年以上経った。この間、マハラノビスのTMも含め各種応用分野が広がった。
TMの普及で大きく変わったのは、データ中心に実験が組まれるようになったことだろう。科学の実験では、仮説の検証に過ぎないがTMではデータを基に様々な解析を行い、最適条件を見出してゆく。
まだTMなど使ったことが無い人は、とりあえずラテン方格を用いる方法から始めるとよい。教条主義的指導者の指導でなければ1時間程度で理解できるようになる。
TMの普及が始まった1990年ごろ説明を聞いてもTMがよくわからない、という人が多かった。品質工学とは何ぞや、と言う哲学めいた話が指導の中心にあったからだ。
当方は統計学における実験計画法に気づき、相関係数を割り付けて実験計画法を活用していたので、タグチメソッドについて、故田口先生から初めて伺った1992年の1時間の講演ですぐに理解できた。
タグチメソッドには品質工学の側面と技術開発手法という側面の二面あり、技術開発手法としてとらえると簡単に理解できる。
当方のナノポリスにおける実績においてすべてタグチメソッドを用いているが、現場の技術者は1時間ほどの指導で簡単に理解している。品質工学云々はとりあえず忘れ、目の前の問題をTMで解くことから始めたい。
この時、よく用いられるL18で実験を行う手順について難しい哲学を考えなければ、単なる計算処理で済ませることができる。このようなメソッドはまず使いながら覚えてゆく、と言うことが大切だ。
要因効果図を基に最適条件を求めてゆくだけなので、誰でも機械的に実験を進めることができ、最適条件を見出すために個人差が出ない。ラテン方格を使い実験計画を立て、最適条件を求めて調整因子で感度調整を行いロバストの高い機能を設計することがTMで簡単にできる。詳しくは弊社のセミナーにご参加ください。
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小学校でもプログラミング教育が始まった。なぜプログラミング教育の導入が遅れたかは、日本の教育界を見てきて十分に理解できている。多くの人も現在の教育界に不満を持っているのではないか。
学校の先生があてにならないのなら、親がしっかりしなければいけない。Pythonでも身に着けようという気持ちになっていただきたい。プログラミング環境はパソコンさえあれば無料で手に入る。
また、無料のPython教室も検索すればいくつか見つかる。弊社のセミナーは有料だが、パーコレーションとかタグチメソッドなど実務に必要な知識をプログラミングにより獲得できるように工夫している。
無料のPython教室と異なるのは、実務で使用できるプログラムを受講者に配布している点である。当方の独力でプログラミングを勉強した経験から講義内容を工夫している。
実はプログラミングを学ぶとは、あるいはプログラミング能力を身に着けるという意味は、従来の科学的思考とは異なる思考方法を身に着けることと同義と考えている。
ゆえにセミナーでは問題解決のパラダイムも一緒に講義している。プログラミング能力とは、科学的思考方法とは異なる思考方法ができるようになる能力のことだと思っている。
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単身赴任していたころ、すなわち今から10年以上前Pythonのブームがあった。まだ、ver2の時代である。当方はC#を使っていたのでPythonがどのようなものか、試してみるだけだった。
文法書を購入し読んでみたが、オブジェクト指向言語として完成したC#に比較し、どちらかと言えばC++に近く、さらにC++よりも手続き型言語の特徴を残した、オブジェクト指向の言語として中途半端な印象を受けた。
Pythonがスクリプト言語に分類されたりする理由でもあるが、オブジェクト指向としてはC#よりも使いにくくても一応オブジェクト指向の3つの仕掛けを実装していた。
そして、この3つの仕掛けを備えていたので、Pythonのライブラリーが多数開発されるようになった。すなわち、ver2あたりからPythonは急速に普及していったのである。
ネット上には多数の情報が公開され、その教育プログラムまで無料公開されるようになった。さらにGAFAの標準言語に採用されたとの情報は、さらにPythonの普及を加速させて最近のブームがある。
ver3.となってさらに使いやすくなった。当方も数年前そのライブラリーの豊富さからPythonを使い始めた。今ではC#をわざわざ立ち上げることも無くなった。
Pythonのエディターを立ち上げておくと、エクセルを使うことも無くなった。これまで電卓代わりにエクセルを立ち上げていたのだが、今は電卓代わりにPythonである。
Pythonの便利さは、BASICよりも手軽でズボラなプログラムを書けるところである。まさにスクリプト言語の簡便さが電卓代わりとなっているのだが、それだけならばエクセルでも十分で、エクセルならばVBを使うこともできて、とPythonより便利そうである。
しかし、当方はエクセルでVBを使うぐらいならばC#を使っていた。このような人は多いのではないか。VBにできることはC#で十分にできて、C#ならばVBよりも洗練されたオブジェクト指向であり、一応きれいなコードを書けた。
すこし不格好なオブジェクト指向が実装されたPythonがここまで普及した背景は、無料ライブラリーが豊富に公開されたことだろう。これが無ければ当方もPythonを使う気にはなれなかった。
オブジェクト指向の実装は、無料ライブラリーを部品のように使え、スクリプト言語として簡易記述により、難解な処理のプログラムを実現できる。これがPython普及に大きく貢献した原因だろう。
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半導体治工具用に高純度SiC成形体(高純度SiC100%の成形体)を世界で初めて市場に提供したのは住友金属工業である。この事業はブリヂストンとのJVとして1990年に始められた。共同出願特許も出されている。
住友金属工業から提案が無ければ、ブリヂストンでこの事業は始まらなかった。彼らは反応焼結により高純度SiC成形体を製造することを提案してきた。当時ブリヂストンは、ホットプレス焼結技術と常圧焼結技術によりパイロットプラントで成形体開発を行っていた。
高純度SiC成形体のこれらの技術は、無機材質研究所との共同研究として進められ報告書も当時発行されている。無機材質研究所では、当方が留学中にすでにカーボンだけ添加したホットプレス焼結に成功していた。
また、プロチャスカの配合系よりもホウ素の添加量が少ない常圧焼結にも成功していた。これらは無機材研の二人の先生によるご指導による。当方含め3名の連名による発明者として無機材研から特許も出願されている。
あれから40年近く経ったが、高純度SiC成形体を製造する技術は、ホットプレスか反応焼結、あるいはHIP(当方のアイデア段階)程度しかない。常圧で焼結体を製造したいならば反応焼結プロセスを選ぶことになる。
反応焼結プロセスについて、この仕事を離れてから眺めているが、さほどの進歩は無い。もし、コストを下げたいならば、アイデア段階であるが、面白い方法がある。ご興味のあるかたは問い合わせていただきたい。
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SiC(炭化ケイ素)の成形体を常圧焼結プロセスにより製造するためには、セラミックスフィーバーを引き起こしたプロチャスカの配合を用いる必要がある。
ゆえに高純度の常圧焼結体を製造することはできない。不純物として助剤が必ず0.2%以上含まれる。プロチャスカの配合ではホウ素を0.2%、カーボンを2%以上添加する必要がある。
この2種類の助剤にはそれぞれ役割があり、ホウ素だけを用いた場合には異常粒成長が起き、緻密化しない。カーボンだけでも、やはり緻密化しない。
ホウ素の役割として界面エネルギーを低下させて緻密化を促進することが知られているが、単独に使用しても緻密化が起きない。
また、カーボンだけならば2%の添加でも片目をつぶって高純度SiCと主張してもお客さんは許してくれそうだが、ホウ素はSiCの組成と異なるゆえに、その添加で高純度SiCと呼べなくなる。
カーボンが多少余分に入っていても高純度SiCとお客さんは呼んでくれるのかどうかについては、現実に高純度SiCヒーターや半導体製造プロセスで用いられているダミーウェハーの組成は、カーボンが余分に入った高純度SiCである。
カテゴリー : 一般 電気/電子材料
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