昨日5Gに関するセミナーが技術情報協会主催で開催された。これまで当方が一人で講演していた内容を1.5時間に短縮しなければいけなかったので大変だった。
5G関係において材料技術開発の機会が無くなったのかというとそうではなく、これから自動車のCASEに基づく新製品が登場し、車の概念も変革されるようなイノベーションが始まるので、まさに開発タイミングとして旬な時期である。
ところが、高分子材料の低誘電率化について科学的な手法は、1.分極率を減らすことと、2.モル容積を大きくすること(低密度化)である。
1については、分極率の小さいフッ素原子、炭化水素骨格の導入、双極子を固定化(液晶配向、球晶)すなわち分極固定化などが検討されてきた。2については、CPUのlow kで実績があるミクロ空隙の導入による低密度化である。
これらはClausis-Mossottiの式から導かれる30年以上前から公知の内容であり。PIではかなり開発が進められ、特許フリーの技術も多い。
科学的に考えるともう技術開発のネタが無いのだが、最近負の誘電率に関する特許が開示され始めた。すでに10件以上登場している。昨日はその中で3件程度紹介している。
また、当方は中国ナノポリスでこの8年ほど関連する材料開発の指導をしてきたが、射出成形体の薄肉化は隠れたテーマである。
特に新しいエンプラ、PPSやPESはそれが難しい。このため新添加剤PH01を開発している。詳細は弊社出願の特許を見ていただきたい。
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高分子材料についてLOIを21以上にするために材料設計手法は一つになる。LOIが21以下でも空気中で自己消火性になればよい、と言う条件であれば2種類の材料設計手法となる。
UL規格との対応を考慮に入れると、V0以上に合格するためには、LOIを21以上となるように材料設計しなくてはいけない。
V2以下の合格であればLOIを21以上に調節する必要はない。ここでLOIを21以上となるように材料設計した時に必ずV0以上に合格するかと言うとそうではない。
LOIが23であってもV0に合格しないサンプルがある。これは以前ここで述べたように、試験サンプルの設置方法と火源、着火方法の違いから相関性が崩れている。
UL規格とLOIとでは、LOIの方が少し評価法として手軽である。規格通りに行う必要もなく、酸素と窒素の混合ガスを流しながら測定すれば、そこそこの値が得られるからだ。
ただし、その値が規格値となるかというと手作りの装置の出来栄えにより、規格値からのずれが大きくなる。しかし、あまりお金をかけずに手軽に試験をおこなえるという観点でLOIは、材料設計するときのスクリーニングに活用できる。
中国のローカルコンパウンドメーカーで燃焼試験装置どころか力学試験装置その他の評価装置を持っていない企業の指導をした経験がある。1年後にはとりあえず力学試験装置は揃ったが、燃焼試験装置までお金の関係で揃えることができなかった。
そのような劣悪の環境の中でUL94V0に通過するPC/ABSの新処方を開発することに成功している。市場で要求される燃焼試験装置を揃えておくことは商品開発で必須であるが、開発を急ぐときには、いざという方法がある。
難燃性PC/ABSの開発は難易度の高い技術であり、科学的に進めようとするならば、各種評価試験装置が整っていないと開発は不可能である。
しかし、技術を持った職人であれば評価装置が無くても技術開発可能である。逆に技術を持っていない研究者は開発どころかそのような現場で右往左往するだけだろう。
すなわち科学と技術とどのような違いがあるのか知るためには、このような現場で働てみるとよい。技術者ならばこのような現場でもゴールを達成することが可能である。ひ弱な研究者は手足も出せないだろう。
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「ある高分子材料を難燃化するには?」という問題を解くことはできない。これがすぐに解けるという人は、高分子の難燃化の実務を御存じない方だ。
高分子材料の用途が明確に決まって、はじめてこの問題を解くことができる。あるいは、この問題について、回答者がとりあえずの難燃化規格を決めれば、一応解くことができる。
材料の用途が決まると、その用途に対応した難燃化規格が存在する。難燃化規格が存在しない時には、その用途において関係する製品に準じた難燃化規格を採用し、材料の目標となる難燃性を決める。
すなわち、高分子材料を難燃化する問題では、まず評価技術として何を採用するのかが重要になってくる。用途が決まっていない材料については、とりあえずUL規格とLOIで測定された難燃性のレベルを付記することになる。
ここで、UL規格とLOIを持ち出したのは、前者についてこの規格を採用している分野が多いからである。UL規格以外にLOIを評価しておくとよい理由は、空気中の燃えやすさの基準として、多くの難燃化規格の中で直感的に理解しやすいからである。
燃焼が急激に進行する酸化反応であることを考慮するとLOIは、科学的な指標とみなしたくなるが、それが誤解を生む原因になることを以前書いている。
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高分子の難燃性について、燃焼という現象を科学の形式知で正確に論ずることが難しいゆえに評価技術が製品の分野ごとに様々である。
その評価技術さえほぼ出そろったのは20世紀末だ。だから高分子の難燃化技術は科学として未だ完成していない技術といっても間違いない。
ところがこれを理解されていない人が多い。高分子の難燃化技術に関しては、経験知が極めて重要である。またこれを無理に科学の形式知で記述しようとしたとたんに誤解を生みだす恐れがある。
評価技術さえ実務的な視点で決められてきたので、評価の物差しさえ科学の形式知といい難いからである。
このような前提で、高分子の難燃化を研究するときにどのように進めればよいのか、当方の経験知について次回から説明したい。
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1980年ころまで各企業の研究開発はシーズ指向で行われてきたが、その効率向上を狙いマーケットインで行われるようになって現在に至る。
しかし、情報化社会の進展で情報が溢れるようになって加速された技術開発により、先端技術市場で活動している企業以外では新興マーケットの状況が見えにくくなっているのではないか。
ただし、これは今に始まったことではなく、マーケットインが叫ばれていた時にも同様で、見えていたマーケットをターゲットに技術開発してみてもその市場で勝者になれず痛い思いをした経験のある企業は多いと聞く。
当方はゴム会社で半導体治工具の市場をターゲットに低コストの高純度SiCを武器にエンジニアリングセラミックスの開発を始めてみたが、参入が早すぎてお客さんがいなかった経験がある。
6年間迷走のあげく住友金属工業とJVを立ちあげてみて分かったのは、先端マーケットのニーズはそれ自体がお客さんの機密事項だった事実である。
換言すれば、お客さんが門を叩いてくれなければ見えない市場があるということだ。特許情報から1年半遅れでこのような市場を知ることもできなくはないが、現代の技術進歩が加速している時代においては1年半後に知っていては手遅れである。
1年半の遅れを取り戻すためにアジャイル開発は有効な方法となるが、ソフトウェアー以外の分野ではあまり採用されていない。ご関心のある企業はご相談ください。
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会長の辞任により新しい五輪組織委員会会長の議論が国民を巻き込み行われた。このような議論はかつて日本であまりみられなかったことである。
川淵氏が後任というニュースが発せられた時に、その決定プロセスに国中が反発し、今回の流れになっているが、コロナ禍における五輪開催の是非も含め、選ばれるや否や、聖火リレーの方法など解決しなければいけない問題もある。
候補者として公開された橋本氏らそれぞれに就任するときの障害や不満点など指摘されている大変な役職である。今回の候補者から誰が選ばれてもそれがすぐに唯一の正解だったとは判断できない。
このような問題に対してドラッカーは、メンバーの合意が得られる解答が重要と指摘している。すなわち、ドラッカーは正解が無いような問題についても解答を導き出す問題解決法を提案している。
ドラッカーが問題解決法の先生という視点をあまり見かけないが、その著書の中で問題解決に際し参考となる名言をたくさん残している。
例えば、異なる意見や見解こそ重視すべき、という名言は、リーダーの職にある人に役立つ名言である。
今回の組織委員会のリーダーについて珍しく国民の見解が重視されて運営されたような流れになった。これをパフォーマンスといった評論家がいたが、それは的外れだろう。
コロナ禍で開催そのものに反対する空気が蔓延している状況で、反対意見を軽視した運営をしたならば、今後の政局にも影響を及ぼすことは必至である。
高橋大輔氏が早くからハラスメントを否定するなど橋本氏をマスメディアが応援しているような流れで進んできたが、橋本氏がリーダーを引き受けるならば大臣を辞任しなければいけないのでその後任選定など、この問題では合意を得るために調整が必要となる障害がまだ残っている。
問題にはいつも正解が一つとは限らない場面がある。科学では真理が一つとなる問題を解くことになるが、人間の営みである技術では今回の問題と同様に正解が一つとはならない。
市場でユーザーに指示される技術が生き残ってゆく。モノがあふれ出した20世紀末にはコトの重要性が指摘されたりしたが、環境問題はだんだん深刻になってきており、この問題にかかわる技術では、やはりモノが重要となる。
ただ具体的なモノが見えにくいので、メーカーから提案されたモノが市場でどのような評価を受けるのかがポイントとなる。ドラッカーもこのような問題の考え方を提示しており、詳しくは弊社にご相談ください。
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LOIは、燃焼が急激な酸化現象であるという科学の視点から高分子の難燃性のグレードを決めようとした評価法である。
一方で、UL規格は、高分子材料の用途により燃焼時の挙動や求められる難燃性のレベルが異なるので、現実的な視点で実火災における材料の難燃性のレベルをモデル化して決めた規格である。
モデル化しているので当然のことだが実火災における材料のもらい火を100%実現しているとは言えない。しかし、40年近くの実績があり、産業界でUL規格を採用している製品は国内外に多い。
しかし実績のあるUL規格でも十分ではなく、分野ごとに難燃性の規格が存在する場合もあるので、製品開発に当たっては注意を要する。
30年ほど前に登場したコーンカロリーメーターは、UL規格よりも大きなサンプルと大きな火源を使用して、煙量なども評価できるので建築基準に採用されるようになった。
分野ごとに異なる難燃化規格を前提として、材料設計をどのように行うかは深刻な問題である。難燃性材料を設計するたびに目的とする燃焼試験を行い、材料設計できれば良いが、コーンカロリーメータのような大きなサンプルを用いるときには、事前にスクリーニングする方法がどうしても必要になる。
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UL規格とLOIとは相関しない。すなわち、LOIが高くてもULのあるグレードに合格しない材料が存在する。一方ULの最も低いグレードで難燃性試験に合格したからと言って、LOIが21以上となるわけでもない。
このUL規格とLOIと相関しない原因は、難燃性評価時の炎とサンプルの位置関係と炎の強さの影響が最も大きい。
まず炎の大きさだが、LOIはローソクの炎程度の火力(LOIのことをローソク試験と言っていた老人が当時いた)であるが、ULではそれよりもはるかに火力が強い。
この点はわずかな火力で着火する様子を観察する条件で評価しているという理由でLOIが厳しい評価条件となっている。ところが炎とサンプルの位置関係については、LOIは垂直に立てて、サンプルの上方から炎を近づける。
UL規格では、サンプルが水平あるいは垂直に置かれた状態で、下方から炎を当てる。実は、炎と言うのは先端が最も温度が高いので、炎とサンプルの位置関係からはUL規格の方が厳しい条件となる。
このようにLOIとUL規格では、評価試験方法が異なるので相関が無くても良いのだが、LOIは、継続燃焼し続けるのに必要な最低酸素濃度を指標化しているという科学的根拠なり考え方に納得できる。
それでは、それと相関していないUL規格では非科学的で問題があるのかというとそうではない。UL規格では火災における燃焼で「もらい火をしても火が消える」すなわち材料が着火しても燃えにくい、言葉をかえると難燃性という点をうまく評価測定法にとりいれている。
すなわち、実火災を想定した時に「燃えにくい」「万が一着火しても火が消える」材料とはどのような燃焼挙動を示すのか、という視点で評価試験法が作られている。
LOIは、化学反応の酸化現象に着目し考案された評価試験法であるが、UL規格は火災が起きたときの材料挙動を観察して決められた試験法である。
材料の用途により、火災のリスクは異なるので、製品設計時に経済性も考慮でき便利な規格なので多くの分野で採用されている。
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LOIは、燃焼という現象を急激に進行する酸化反応ととらえたときにわかりやすい高分子の難燃性評価指数である。しかし、この指数が見つかっただけで完成とならないのが高分子の難燃化技術である。
例えば家の構造材料と家電製品の構造材料では、LOIも含め同一基準で材料の難燃性を議論できないことは、すぐに気がつく。
出火する初期の原因が大きな火種となりやすい家の構造材料では、周囲の材料がすぐに高温にさらされるが、家電製品の内部において出火原因となる火種は小さくても密接している。
また、家電製品は構成材料の種類を制御管理することが可能となるが、家の場合には不特定多数の材料の製品がその内部に配置された状態で着火することになる。
すなわち、火災の初期における環境が同一ではなく、その差が大きい。ゆえに火災の発生初期における機構が材料の使用環境で異なることになり、使用環境ごとに適合した評価技術が必要になることに気がつく。
使用環境ごとに適合した材料の難燃性評価技術が必要になるので、市場の様々な分野に適した難燃性評価法が1970年以降開発されてきた。
その中でUL規格というアメリカの民間保険会社の研究機関が開発した評価法は、様々な火災現象における材料の変化と経済性リスクをうまくとらえた、難燃性のグレードとなっている。
建築の難燃性基準の多くがLOIで21以上の材料でなければ通過しないのに対し、UL規格において難燃性が低いレベルの難燃性材料ではLOIが21以下でも合格となる場合がある。
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極限酸素指数法(LOI)は、物質が継続燃焼するために必要な最低の酸素濃度を指数化した評価技術である。
空気の酸素濃度はおよそ21%なので、LOIが21以下の物質は、空気の酸素濃度よりも低い領域で燃焼できるので、火がつけば空気中では必ず継続燃焼する。
逆にLOIが21以上の物質は、酸素濃度が空気よりも高くなければ継続燃焼できないので、空気中で着火しても継続燃焼できないので自己消火性となる。
燃焼が急激に進行する酸化反応であることを示す、わかりやすい指数だ。しかし、実火災では、周囲の温度が800℃以上になることはよくあり、このくらいの温度になると、大半の有機物は、酸素濃度が低くても熱分解する。
高分子発泡体の難燃化研究を3年間行ったが、高分子の熱分析は欠かせない分析手法だった。この熱分析経験で600℃以上まで安定な有機高分子に出会ったことが無い。
窒素中において最も高い温度まで安定だったのは、特殊なフェノール樹脂で400℃まで熱分解しなかった。
高分子には280℃以下で1%以上熱分解するものも存在し、このフェノール樹脂の熱分析結果には大変びっくりした。ちなみに大抵のフェノール樹脂は280℃近辺から少し熱分解が始まる。
文献に書かれている限りの方法で製造したフェノール樹脂は350℃以下で熱分解が始まるので400℃まで安定なフェノール樹脂は世界初の材料だった。
この耐熱性が極めて高いフェノール樹脂でもLOIは38であり、40に届かなかった。ちなみに耐熱温度とLOIとは相関しそうで相関しない。
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