活動報告

新着記事

カテゴリー

キーワード検索

2022.04/01 本日から新年度

日本では桜の季節に新年度が始まる。本日新入社員の出社式をWEBで行う会社もあるかもしれないが、気になるニュースがある。第二新卒が話題となり、若者の転職が問題にされてかなり経つが、当時に比較して最近の若者の退職理由が大きく変わったという。


最近はぬるま湯的な会社の雰囲気に社会人としての成長ができないので、より厳しい会社へ転職するというニュースを読んだ。


このニュース以外に、最近若者の自己実現意欲に関わる話題が多い。偽りのない自分の姿で好きなことをして、それが社会貢献につながる状態が自己実現であるが、現代においてこの状態に至るにはそれなりの知識や経験が必要となる。


ゆえに、若者はそれを身につけることができる環境を求めて転職するという解説を最近読んだが、本当だろうか。石の上にも3年というが、現代の高度なキャリアが要求される社会ではとりあえず1か所に3年がむしゃらに努力してみることをお勧めする。


当方の新入社員時代、4月に入社し、半年間の集合研修をえて10月に配属された。初めて担当した1年間の新入社員テーマ、樹脂補強ゴムの開発をがむしゃらに仕事をして3か月でまとめた。


指導社員が極めて優秀な人で、毎朝3時間座学で高分子の基礎を指導してくださったおかげだが、この3か月の仕事のおかげで写真会社でカオス混合技術を開発できた。当方は新入社員の時に運が良かったのだろう。

カテゴリー : 一般

pagetop

2022.03/31 明日から新ルール

昨年6月に公告となった高分子材料の環境問題に対する日本政府の回答が施行される。環境省のホームページにはRenewableと4つ目のRが示されている。


2015年に海洋ゴミの問題が世界で認識され、その30%前後が日本製だったため、日本に対する風当たりが強くなるとともに、「脱高分子」が叫ばれるようになった。


それまで、3Rが環境問題解決のキーワードとされたが、そこに新たな「R」、Refuseが加えられた。日本では、ポリエチレン製買い物袋が有料化あるいは廃止されたため、買い物袋の携帯が必須となった。


それだけではない。プラ製トレイは紙製になるなど、高分子材料排除の動きが世界の潮流となった。しかし、これが経済的にも技術的にも環境問題解決に最適な解となっていないことは明らかで、Refuseに代わる新たなRの提案を当方は環境と高分子のセミナーで訴えてきた。


今回の法律ではRenewableが4つ目のRの提案となっており、これから海洋ゴミ削減の国際ルール作りが始まるので、日本の提案がどこまで国際的に評価されるのか注目される。


実は15年以上前に名古屋市は、プラごみに関して細かい分別回収を行い、日本政府に各自治体も見習うように提案したところ、環境省からそこまでやらなくてよい、という回答が返されたので、時の河村市長が噛みついた歴史がある。


最近は金メダルに嚙みついて有名になった河村市長だが、今回の法律についても是非噛みついて頂きたい。なぜなら今回の法律では河村市長が目指された目標が単なる努力目標にされているのだ。


河村市長は軽い人物と誤解されているが、実は広い視野で先進的な思考ができる数少ない政治家である。15年以上前に明日からの法律に適合する取り組みができたのもその表れであり、河村市長の環境省への突っ込みに期待したい。


恐らく、Renewableに関しては、これまでの実績から河村市長が自治体の首長の中で最も造詣が深いと思っている。弊社に一声かけていただければ、いつでもご協力いたします。

カテゴリー : 一般 高分子

pagetop

2022.03/30 SiCの強度

SiCの引張強度あるいは曲強度は、成形体(焼結体)製造のために用いた粉末の結晶系により左右される。ただし、成形体密度が99%前後の成形体密度のときであるが。


また成形体製造温度が2000℃以上であると3CのSiC(βSiC)は6Hへ転移するためにその差も分からなくなる。1960-2000℃の温度で制御した場合に原料粉末の結晶系の差が見られる。


成形体製造に高度な技術が要求されるが、注意深く制御しながら成形体を製造すると、3Cの結晶系の原料を用いた場合に6Hの結晶系の原料を用いた場合よりも強度は1-2割ほど向上する。


この原因は、3C結晶系が熱膨張に関し等方的であるのに対し、6H結晶系が異方性であるためだ。これは40年以上前に科学的に確認され、当方の学位論文に6H結晶系の異方性について実験データとともに考察している。


高分子材料も含め、材料強度評価は、成形体製造技術や評価技術の影響も受けるので、原材料の影響だけを正しく評価することが難しい。しかし、すべての材料物性は原材料製造プロセスから成形体製造プロセスまですべての履歴の影響を受ける、ということを知っておくことは重要である。


高分子材料については製造プロセスの履歴の影響が良く知られているが、セラミックスや金属では、高分子よりもその影響が小さくなるので話題にならない時もある。

カテゴリー : 一般 電気/電子材料

pagetop

2022.03/29 高分子の混練技術

高分子の成形体を製造するにあたり、高分子には何らかの添加剤が混合される、と以前この欄で書いている。その時、重要となるのは混練技術である、と説明している。


混練技術とは、混ぜることと練ることの両方で高分子を変性し機能を向上する技術なのだが、その説明が難しい。難しい理由は、形式知よりも経験知の占める割合が大きいからだ。


この経験知が占める割合が大きい、ということさえ、理解していない技術者も多いので困る。原因は適当な混練機で一応コンパウンドができてしまうからである。


高機能を要求しなければ、そのように製造された適当なコンパウンドでも成形体を製造可能なので、混練技術をあまく適当に捉えることになる。


謙虚に現象を眺めれば、高機能を要求されないコンパウンドでも、十分な混練ができていないことを物性の計測から知ることができるのだが、物事を甘く考える技術者には成形体物性の評価もいい加減である。

カテゴリー : 一般 電気/電子材料 高分子

pagetop

2022.03/28 学ぶ

99歳で大学卒業、という朝のニュース。放送大学を17年かけて卒業をされた、大正11年生まれの99歳の学生が紹介された。インタビューに”勉強に終わりはないのでこれからも勉強したい”、と答えている。頭が下がる。


11年前に100歳で父が亡くなったが、亡父の口癖も同じような内容だった。亡くなった時にも机の上には、新聞に入っていたチラシの裏に書きかけのお経があった。写経を行っていたようで、遺品を整理したところ段ボール二箱以上の写経が出てきた。


紙の変色状態から10年20年前ではないことが伺われた。大量の蔵書とともに改めて知への飢餓感を知った。恐らくニュースで紹介された99歳の学生も知への欲求が高いのだろう。


放送大学は卒業証書も発行されて、知を学ぶ目標が明確であり、学びには数少ないよい制度である。情報化が進行した結果、書店がかつての半分に減少しただけでなく、知に関する雑誌も少なくなった。


かつては、雑誌”工業材料”はじめ、技術関係だけでも10誌以上あったように記憶している。少年ジャンプの5倍から10倍程度の価格だったが、読者がいたのだろう。発刊日に書店にはそれぞれ2-3冊おかれていたように思う。


当方は工業材料をよく購入していたが、定期購入ではなく、書店で他の雑誌を物色した後購入するのが習慣だった。ゴム会社の図書室にも同様の雑誌は置かれていたが、図書室に並ぶのは1か月遅れであった。


すなわち、新刊は管理職に回覧された後に図書室に並んでいたのだが、せっかく回覧されていてもそれを読んでいない管理職もいたので、知への欲求には個人差があることを上司の姿から知った。


当方の新入社員当時の上司は、知への欲求が高いようなそぶりをしていたが、本を読むのが嫌いだったようで、英文の雑誌だけでなく和文の雑誌についても、要旨を報告する役目をよく指示された。


本人が読んでいないだけでなく、部下育成の目的と言いつつそうでないことは、部下育成と明らかに無関係の記事などもあって迷惑だった記憶の方が多い。


ただし、今思いだしてみると知識の幅は広がったので、勉強嫌いの上司は部下育成がうまいという法則になるのかもしれない。しかし、要旨を報告してもそれが右から左へ受け流し状態ではモラールも下がったので、マネージャーとしての力量は他のメンバーの評価どおりだったのだろう。


ただし、当方は右から左へ何でも鮮やかに受け流す技には感心していた。右から左だけでなく、上から落ちてきた責任までも、見事に下へ受け流していた。


入社間もない時に訳の分からない始末書を書かされた記憶は今でもこの上司の秀逸な能力として思い出す。ホウ酸エステル変性フォームはこのおかげで誕生している。

カテゴリー : 一般

pagetop

2022.03/24 ワイブル統計

ワイブル統計は、最弱リングモデルで導かれている。最弱リングモデルとは、製品品質の最も壊れやすいところで品質劣化が起きれば、製品の機能の寿命であるという考え方だ。


大変わかりやすいモデルで、製品の故障解析手法として普及している。また、このモデルの統計的扱いと式の導出方法は、高校の数学の知識があれば理解できるので、統計手法として易しい部類である。


ただ、セミナーを通じて感じることは、品質管理部門に比較して研究開発部門で普及していない不思議さである。そこで、弊社はこのホームページにワイブル統計のプログラムを無料公開して普及に努めている。


製品品質のデータ処理だけでなく、引張強度データについても処理を行うと、強度データのばらつき構造を整理できる。


例えば高分子材料の引張強度は、弾性率と靭性が影響するが、それ以外にサンプルの取り扱いプロセスも大きく影響する。


ワイブル統計でデータ処理を行い、傾きの大きな1本のグラフが得られれば良いが、複合型のグラフが得られたならば、弊社へご相談ください。

カテゴリー : 一般 電気/電子材料 高分子

pagetop

2022.03/23 成形体の均一性(5)

昨日は成形体の電気特性がコンパウンドの電気特性に影響を受ける話を書いた。力学特性も同様である。ただし力学特性は、電気特性に比較して物性評価時におけるばらつきが大きいのでコンパウンドの影響を議論しにくい問題がある。


引張強度の測定を事例に物性評価のばらつきについて説明する。まず、物性評価時にサンプルを評価装置へ取り付けるときのばらつきが存在する。これは5人ほどに同じサンプルについて引張強度測定を実施してもらうと明らかに有意差として観察される。


測定時の注意点を細かく指導し、測定時に監視しながら実施するとそれが小さくなるか無くなるので、こうした物性評価に不向きな人がいることにも配慮する必要がある。


高偏差値の大学を出ていても精度の良い力学特性評価をできない人がいることも知っておいた方が良い。力学特性評価は、個人のスキルが出やすい項目である。


次にサンプルの形状の影響である。射出成型時の歪が形状に現れることもあれば、サンプル保管時に形状ばらつきが生じることもある。新入社員の時に当時最先端の樹脂補強ゴムを開発していた。


その時、引張強度サンプルについては測定本数よりも1本多く作成することを指導された。さらに、シートサンプルから切り出した後2日ほど静置して評価サンプルを選び出すように、とも指導された。


たいていの場合に予備の1本は無駄だったが、まれに変形していることがあった。このような場合に1本だけでなく2-3本ダメになることもあったので、予備の本数を増やした記憶が残っている。


力学特性について電気特性よりも測定技術上の問題の影響を受けることが意外と知られていない。測定技術上の問題を解決してから成形体の不均一性を評価すると成形ロットや位置の影響などを検出できる場合がある。

カテゴリー : 一般 連載 高分子

pagetop

2022.03/22 成形体の均一性(4)

成形体の均一性にペレットの均一性が影響を及ぼすことが意外と知られていない。高分子の混練技術の目的に成形体の均一性を実現できるコンパウンドの提供という項目があることをご存知ないコンパウンドメーカーも存在する。


これは絶縁体である高分子にカーボンなどの導電体をブレンドし半導体シートあるいは半導体ベルトを製造して平面の表面比抵抗を数点計測して確認できる。


コンパウンド段階で電気特性が均一であると、押出成形あるいはインフレーション成形を行ったときにシートなりベルトの面内の電気特性が均一となる場合が多い。


ここで、コンパウンドの電気特性が均一ならば確実に成形体で均一になるとは限らないことに注意する必要がある。パーコレーション転移という現象が起きるためだ。


すなわち、コンパウンドの電気特性を均一にしただけでは不十分で、パーコレーションが安定化されていることも要求される。


パーコレーション転移については後日説明するが、混練技術の重要性を示す現象の一つが半導体高分子の成形プロセスで起きる。半導体シートや半導体ベルトを製造するときに、コンパウンドの電気特性が不均一であると電気特性を均一化できないことを知っておいてほしい。


ただし、コンパウンドの電気特性についてどこまで均一性とパーコレーションの安定性を実現すべきかは、求められる成形体の電気特性により変化する。


コンパウンド段階で10%程度のばらつきがあっても成形体で5%程度のばらつきに抑えることも可能である。このあたりはコンパウンドの配合設計にも依存する難しい問題である。ただ、成形体の均一性に混練技術が影響することを知っておいてほしい。

カテゴリー : 一般 連載 電気/電子材料 高分子

pagetop

2022.03/21 成形体の均一性(3)

PETやPENフィルム、PPSベルトの開発で正体不明のボツや目玉故障を経験している。いずれも1mm以下の大きさなので満足な分析ができず、正体不明となる。


そこで、粘弾性測定ができるほどの量を採取する努力を行い、正体不明部分の粘弾性を測定した経験がある。馬鹿げた作業という人もいたが、それなりの結果が得られた。


高分子材料の高次構造について研究がかなり進んだが、実務におけるすべての故障について科学的にこたえられるレベルにまだ到達していない。


例えば1種類の結晶性高分子について、構造は結晶部分と非晶部分が必ずできる。高分子の静置場でできる結晶は球晶だが、これはラメラと非晶部分で出来上がっている。


非晶部分には大きさが不確かな自由体積部分が存在し、無機ガラスのように均一性が高くない。すなわち高分子の非晶部分はかなり不均一な構造である。


この非晶部分の科学的研究が十分に進んでいない。球晶の構造については研究がかなり進んだが、非晶部分については不明確なところが多い。


多くの高分子の成形プロセスでは、高分子を高温にして溶融するプロセスが使用される。この時溶融温度付近の高い温度で溶融させて流動性を得るのだが、この高分子融体についての研究が不十分である。


PPSで実験を行っても、実験条件を機能に着眼して設定すると理解に苦しむ結果が得られる。ただ、ある仮説を設定し思考実験を行うと説明可能だが、これは科学的ではない。

カテゴリー : 一般

pagetop

2022.03/20 遺された声

朝寝坊をして6時に目が覚めた。支度を整えて本欄を書こうとしたら、NHKで表題の番組を放送していた。1972年2月にグアムから帰還した横井庄一氏の話である。


彼が雑誌社に頼まれて一人テープに吹き込んだ声を中心に番組が構成されていたが、当方の文章では表現できないほどの壮絶な体験がそこに記されていた。そして彼が語り部としての使命感だけで生き延びていたこともそのテープから理解できた。


まだ二十歳前の当方にとって横井庄一氏の帰国シーンは衝撃的だった。当方だけでなく日本全国が彼の帰国に沸いた。彼のグアム生活の展示会では長蛇の列ができたことからも、その関心の高さを理解できる。


帰国してから彼はその体験を語り始めたが、ある日突然語るのを辞めてしまった。これは今の時代でも想像できるように、彼の語った内容に対する批判からである。


この放送で紹介されたテープは公開しない条件で録音されたものであるが、一人の人間がジャングルで戦争が終わっても苦労して生きてきた体験談は、戦争というものを知ることだけでなく、人が生きるとは何かを知る意味でも重要である。


記録を見る限り、彼と小野田氏以外戦後のジャングルで壮絶な人生を生きた人はいないのである。彼らの人生を学ぶ意味は、まさに「戦争」と「命」を学ぶことかもしれない。


敗戦が濃厚ならば投降すればよい、あるいは兵士でなければ逃げ出せばよい、という意見が今起きているロシアとウクライナの戦争において安易に語る人がいるが、彼の声を聴くとそれでは命をつなげない甘い意見であると理解できる。


ひとたび戦争状態になれば人道など保証されないのだ。それだけではなく、グアムでは部下を見捨てて戦争が終わっていないのに投降した上官の話などが彼の語りから飛び出した。

カテゴリー : 一般

pagetop