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2021.08/05 コロナ感染者拡大中

最近救急車の往来が多くなったと思ったら感染者が3000人を超えた。このままでは、おそらく5000人を超えて1日1万人となるかもしれない。


昨年は、八割おじさんの感染者のシミュレーションを見ていてその精度に感心したが、それ以外のシミュレーションとの比較を楽しむ余裕があった。


しかし、今年はそのような心の余裕はない。当方は焦っているが、街中の人出を見ていると焦っている様子はない。1日1万人の恐怖が分かっていないようだ。


感染者が1日1万人になるとどのような世界になるのかは、インフルエンザの大流行を経験しているので想像しやすいが、日常のあいさつで「かかってしまいましてね」と言う状態である。


インフルエンザならばこのような挨拶でもあまり恐怖ではなかったが、すでに15000人の死亡者が出ているコロナ感染では、ワクチンを打っているとはいえ、安心できない。


若い人の中にはワクチンを打っていない人も多いので、重篤となる確率が高い。コロナは通常の風邪とは異なるのだ。かかればひどい呼吸器系の炎症となり、一生治らないかもしれない。


昨日の東京都4100人越えを恐怖の数字と見る知性を期待したい。15000人の死者というのはPCR検査で見つかっている死者である。実数は現時点で2万人と推定され、これは10年前の東日本大震災で12都道府県の死者数22000人にほぼ等しい。怖いのは、まだ終わっていない、現在進行形の状況であることだ。

 

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2021.08/04 研究部門のテーマ(2)

ゴム会社の主力事業が70%以上の売り上げを占めており、その事業の研究開発部門は、当方が配属された研究部門とは別の組織として存在していた。すなわち当方が所属した研究部門は、全社共通基盤技術の肥やしあるいは新事業の種となるような研究テーマ推進がミッションとして存在していた。

 

当方は、1.電池、2.メカトロニクス、3.ファインセラミックスを3本の柱とした新事業を推進するという当時の社長方針に基づき高純度SiCの企画を提案したのだが、これが実際に採用され実行されるまで地獄の毎日だった。

 

地獄の状態については、無機材質研究所(現在の物質材料研究機構)で高純度SiCの合成に当方が成功した時に頂いた研究所の某主任研究員の手紙に少し書かれている。

 

もっともこの手紙を頂けた背景は、当時のファインセラミックスフィーバーの社会情勢において数社から転職の誘いを受けていた当方は、それを公言していたため留学後の進路を心配してのことである。

 

当方としては、留学前に研究所の先輩社員から留学を終えて戻ってきても居場所はないぞと脅されていたので転職する覚悟で行動していただけであるが、今から思い出すとこの先輩も当方も社会人として大人げない会話をしていた。

 

転職について実際に転職する直前までそれを公言してはいけないことをサラリーマンの常識として当時理解していた。理解してはいたが言いたくなるような研究所の風土であり精神状態でもあった。実は、高純度SiCのテーマについて、研究所内で誰も興味を示しさず盗られる恐れのないテーマを目指して企画している。

 

全社共通基盤技術あるいは新事業のテーマを企画するには大変なエネルギーのいる作業で、他人の考えたテーマを盗ったほうが簡単である、とうわさされていた。また、それが実際に行われていた(注)ために各課で研究内容は社外どころか社内機密となっていた。

 

(注)当方のFDが壊された背景ではないかとも思っている。住友金属工業とのJVを立ち上げ後、写真会社に転職しているが、その後の高純度SiCテーマの扱われ方は、当方が転職してからテーマがスタートした、と書かれた内容が公開されている。そこには無機材質研究所の貢献も書かれていなければ、住友金属工業とのJVの話も書かれていない。

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2021.08/03 研究部門のテーマ(1)

連載の最初に現在研究部門のリーダーになられている方には信じられない光景かもしれないが、研究部門のテーマに関わる実話を書く。この理由は、研究部門の、特に事業からの距離が離れている組織では起こりうることであり、また、トップマネジメントからは理解できない、見えないが、テーマ企画担当者の置かれた立場を知るためには大切なことだと考えているからである。

50年以上前に研究所ブームがあり、各企業で研究所が組織された。当方がゴム会社に入社したのは40年ほど前であり、半年後に配属された研究所は、大学よりも恵まれた研究環境だった。

しかし、その職場風土は、半年間の研修で見てきた社内とは異色で、今でいうところのハラスメント(このような概念は無かった)は常態化しており、さらに各グループが秘密主義の状態だった。

この状態は当方が転職するまで続き、当方はFDを壊されるなど単なる精神的なハラスメントを越える、今では社会問題となるような扱いを受けてもそれが隠蔽化された。

また、この事件が起きる前に、半導体用高純度SiCの事業化を進め住友金属工業とのJVとして立ち上げたときに本部長が交代し、新たな本部長から電気粘性流体の業務を手伝うように指示が出たらしい。

ここで、「らしい」とは、新しく着任された本部長から、立ち上げたばかりの事業テーマ以外のテーマを行うように言われた記憶が無いからだ。

電気粘性流体のプロジェクトリーダーから、電気粘性流体用の加硫剤の入っていないゴム開発を命じられた時に、「本部長指示」と明確に告げられただけである。なぜそのリーダーに指示されなければいけないのか不明でもあった。

しかし、このプロジェクトリーダーに電気粘性流体に関してレクチャーを求めても関連する文献も含めて情報を一切見せてもらえなかった。

ただ、電気粘性流体の耐久性劣化が、そのケースとして用いるゴムから添加剤がブリードアウトするためと分かっているので、加硫剤等添加剤の入っていないゴムを開発せよ、と命じられただけだった。

カテゴリー : 一般

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2021.08/02 企業で活躍できる博士

コロナ禍となって年寄りは蟄居を強いられることになった。1年以上前にはその正体が見えないゆえに単なる風邪ではない、と直感的に判断し家に引きこもった。


高校時代の友人の何人かがそのように判断したが、かわいそうなのは医者だった友人である。引きこもりたくても引きこもれない。かわいそうだが、こちらは引きこもったまま激励するしかないと、たわいもないメール交換が始まった。


若い時ならば心ときめく異性でなければメール交換は長続きしないが、年を重ねてくるとその内容には異性と異なる色気と味わいが出てくる。


初恋により人は己に気がつく、という名言に若い時にはうなずいたが、年をとっても本音で語り合うと気づきはある。初恋のメールとの違いは、気づきにより人生の反省ができることである。


反省はサルでもできる、などという突っ込みもあるが、年寄りの反省は心に刺さったとげのようなものを抜く作用もあり、サルの反省とは次元が異なる。もうエサなどいらないのだ。エサよりも安らぎである。


ワイドショーでは怪しい医者が、コロナウィルスは単なる風邪の一種であり、正しく恐れましょう、などといい加減な発言をしていたが、友人の医者は、甘く見ると死ぬので隠居蟄居が重要だといっていた。


最初はいい加減な発言をする医者が多くいたので、有名なコメディアンなど芸能人の死亡報告がニュースになった。世界的なパンディミックの状況からワイドショーも方針変換し、いい加減な医者ではなく感染学の専門家を登場させるようになり、最近は死亡報告よりも感染者がニュースの中心になった。


おそらく内閣のサポートをしている医学系の専門家は怪しい医者ばかりだったのだろう。GOTOなどのような間違った政策を連発し、最近になってようやくコロナウィルスが単なる風邪ではないことに気がつき始めたようだ。


さて、このようなどうでもよい話を話題にメール交換しあっていたら、一人の友人から、企業でも通用する博士を教育するにはどうしたらよいかと大学の先生に相談されて、それでは今までの博士課程出身者は企業でくずだったのか、と答えた笑い話が飛び出した。


友人は某通信会社の役員まで務めた工学博士であり、立派に企業で通用しているのだ。自らの体験に基づく笑い話だが、もしかしたらこのような悩みは多いのかもしれないと考えた。


そのような相談をされた先生あるいは同様の悩みを抱えられている先生は、弊社にご相談していただければもう少し丁寧な解答をご教示いたします。


弊社には企業向けの技術開発手法プログラムがあり、学生向けにニーズがあればそれを改良して提供できます。内容は、学校教育では教えない「技術」の本質を学ぶプログラムである。

 

カテゴリー : 一般

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2021.08/01 高純度SiC

自動車の電動化とともに伸びているのが高純度SiCのマーケットである。パワー半導体はSiCウェハーが必須となるが、その他のSiウェハーを用いた半導体でもその治工具には高純度SiCが使用される。


特にSiウェハーでは大口径化とともに必要となった、たわみ防止のためのダミーウェハーが高純度SiCを用いて作られるので高純度SiCをホットプレスしただけの安価な円盤が高価格で取引され、製造メーカーは笑いが止まらないかもしれない。


SiCの治工具を製造するときに高純度カーボンで製造する方法や、やや純度の低いSiCで製造する方法、反応焼結体で製造する方法もあるが、いずれも表面にはCVDを用いて高純度SiCで被覆する。


高級品はすべて高純度SiCで製造された治工具であり、表面だけを被覆した治工具よりも耐久性が高い。表面だけ高純度化した製品では、一部欠けただけで使用できなくなるので管理も大変である。


この高純度SiCを製造する方法として、純度の低いSiC粉体を何段階かの洗浄プロセスにより洗浄して高純度化する方法があるが、この方法ではせいぜい99.9%程度までしか高純度化できないと言われている。


さらに高純度化したい場合には、高純度化された原料が必須となるが、セラミックス原料ではその高純度化にコストがかかり現実的ではない。そこに着眼した技術が、有機物を原料として用いる方法である。有機物であれば高純度化にコストはセラミックスほどかからない。


40年以上前にここに気がついた研究者がいたが、すべて有機物の原料を用いる方法が難しく、カーボン源として高純度カーボンを用いて、Si源に有機物を用いる方法と、カーボン源に有機物を用いて、Si源に高純度シリカを用いる技術が開発されていた。


なぜすべて有機物を原料とした技術が実用化されなかったというと、高分子を少しかじられた方ならピンとくるかもしれないが、フローリー・ハギンズ理論により科学的に証明される相分離が起きて原料として使えなかったからだ。


科学的思考は重要であるが、科学に思考を支配される必要はない。ここで技術的に思考すれば均一に混合する機能と均一に混合された材料の状態を固定化する機能を開発すればよい。


40年以上前にポリウレタンの合成にリアクティブブレンド技術が実用化されていたので、それを用いればできるかもしれないと当方は考えて実験し成功した。


この技術の成功要因は、思考から実験まですべて技術的方法により実行した点にある。科学の無かった時代では、確率が低い方法だったが、科学の進歩した現代ではデータ駆動による開発手法マテリアルインフォマティクスを使用して成功確率を上げることができる。詳細は弊社に問い合わせてください。

カテゴリー : 一般 電気/電子材料

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2021.07/31 ボブ・ディラン

2016年にノーベル文学賞を受賞した時には驚いた。おそらく日本人でこの時に腰を抜かした人は60歳以上の老人たちではないだろうか。彼が登場したのは、映画「卒業」の描かれた時代でもあり、プラスチックが世の中にあふれだした時代でもある。


アメリカは公民権運動やベトナム戦争でてんやわんやの時代で、日本ではプロテスト・ソングと呼ばれたメッセージ性の強い歌を彼は次々と発表していた。


この影響を受けて、日本では「受験生ブルース」の高石智也や部落問題を扱った「手紙」の岡林信康などが登場している。1964年の東京オリンピック前後の時代に欧米ではカウンターカルチャーが全盛期を迎えていた。


日本ではロックと言えばビートルズだが、ボブ・ディランはアメリカ文学で起きたカウンターカルチャーの流れの中でビートジェネレーションのピークに現れ、欧米においてはビートルズの前にボブディランが音楽業界で有名だった。


すなわち、ボブディランは文学界のカウンターカルチャーの流れを音楽界に持ち込んだ功労者である。その後このカウンターカルチャーは衰えサブカルチャーとして昇華するが、カウンターカルチャーの申し子とボブディランが称されるのと日本で小山田圭吾らがサブカルチャーの旗手として持ち上げられるような価値とは雲泥の差がある。


ボブ・ディランはデビュー時にはカウンター・カルチャーの中心人物だったが、その後音楽性もがらりと変化し、ドラッグ常習者へ変貌しサブ・カルチャーの旗手となってゆく。ジョーン・バエズがコンサートで彼の批判をしたことは有名である。1970年前後に彼は麻薬中毒だった可能性がある。


彼の音楽と同時並行に進んでいたのが、ヒッピー・ムーブメントであり、日本でヒッピーはあまり良い印象を持たれていないが、アメリカでは社会変革を目指したカウンター・カルチャーだった。


故スティーブ・ジョブズがヒッピーだった、というとイメージが混乱する人がいるかもしれないが、カルチャーの流れを理解しておれば納得できる。


メインカルチャーが何か、というのが多様化とデジタル化の中で見えにくくなっており、当然そのカウンターとして位置づけられるサブカルチャーとの境界はわかりにくくなる。特に日本では取ってつけたようなサブカルチャーも存在している。ややこしいのはそれでも偽物と決めつけられないところが「文化」の難しいところだ。


ゆえにメインカルチャーからサブカルチャーを理解しようとするとかなり難しくなるが、サブカルチャーの視点から眺めると、メインカルチャーとして何を目指せばよいのかはぼんやりと見えてくる。


おそらくボブ・ディランのノーベル賞の意味はそのようなところにあったのかもしれないと、小山田圭吾の問題を考えながらボブ・ディランを再評価した。コロナがいつ収束するか、その答えは風の中にある?部屋の中に風を起こし空気の循環をよくして感染防止!

 

カテゴリー : 一般

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2021.07/30 日本文化の危うさ(2)

昔文化を語る時に目の前に広がる世界だけ考えればよかった。しかし、今文化を論じるときに電脳空間という見えない世界まで相手にしなければいけなくなった。文化人だけが語る文化論だけを信じていると時代遅れとなる。


一方で電脳空間を主な仕事場としている人たちの中には、高い教養が必要な文化もへったくれもなく、その香りがしそうなものを「文化」として見えるところに送り出してくる。


高い教養があればそのような文化のもつ胡散臭さに気がつくが、教養が無い場合には、そこに気がつかずやんややんやと持ち上げる。渋谷系と呼ばれた文化の大半はこれに近いものがある。ガンクロは死語となったがちびくろさんぼは今や差別用語となった。


子供の頃読んだ4匹のトラがおいしいバターに変わるおとぎ話がなぜ差別なのか、最初聞いたときにびっくりしたがそれが島国文化に慣れ親しんだ感覚の愚かさと悟るのに時間はかからなかった。白人だったならそのような物語展開とならなかったことに気づくからである。


教養と文化とは一体のものだが、今回の小山田問題は、教養の抜け落ちた文化が日本を席巻している現実を日本人に気がつかせたのではあるまいか。レンタルビデオ屋を街で見かけなくなって久しいが、レンタルビデオ屋でもAVの扱いには慎重で、人目のないところに見えないようにコーナーを設けていたり、良心的なところはそのコーナーさえなかった。


映像文化がメディアで販売される時代は終わり、ネット販売が一般化したとたんにAVの敷居が低くなり、見ようと思わなくてもうっかり奇妙なアイコンをクリックしたりするとそこへ飛び込んだりする。


ネット社会には本来隠されているべき世界とシームレスにつなっがている問題がある。リアルな人間社会には法律や慣習でそのような世界は閉じられているが、ネット社会は未だ無法地帯であり、サブカルチャーの多くはそのような世界で発展しているのである。

 

カテゴリー : 一般

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2021.07/29 弁当の大量廃棄

開催中の東京オリンピックではお弁当が大量に廃棄されているという。それに対して組織委員会は無観客開催になったために減ったボランティアの人数調整ができていないことを認めて昨日謝罪した。


そのうえで適切な発注で廃棄物を減らすよう心がけるとしか今の時点で応えようがない、とのこと。環境問題は2015年で大きく様変わりし、SDGsが共通認識となった時代に信じられない回答である。


もっともこの回答は、時代錯誤もはなはだしい無知を露見したものであることは明らかであるが、これまでの記者会見で共通した責任感の無さもセットで存在している。組織委員会会長や事務総長は今回の大量食品ロスの問題放置で即刻辞任すべきだろう。


そのくらいの問題である。国会議員もSDGsを理解されているのだったら、すぐに組織委員会に引導を渡すべきではないか。会長や事務総長はサラリーマンでいえば一流企業の役員クラスの給与が支払われているのである。しかもそのお金は税金からでている。


このお弁当の大量廃棄問題について、地球環境の視点から国民はもっと怒っても良い。記者会見の答弁中に廃棄されたお弁当のゴミをスポークスマンの頭からかけるぐらいの事件が起きても良いような状況だ。


今回の東京オリンピックでは環境問題に配慮していると宣言しているので、各会場でゼロエミッションが守られているべきであるが、おそらく組織委員会の幹部は、ゼロエミッションの意味など理解されていないと思われるから無駄かもしれない。


しかしこれまでの廃棄弁当代だけでも云千万円、と聞いたらどう応えるか?人数なら毎日4千人分と少なく聞こえるが。オリンピック反対を叫び、選手に誹謗中傷をSNSで繰り返されている方は、もっと深刻な状況をよく見てほしい。


廃棄された金額を計算すれば、日本国民全員で弁当代返せ、と叫んでも良いような額である。おそらくこの金額がゴミに見えるほどもっと多額の金額が無駄に使われているのかもしれない。開催前に鉄道で不審死されたJOCの経理担当者の真相は闇の中であるが。

 


(注)ニュースの値が平均値ならば金額にして昨日まで4000x5x1000=20000000円分廃棄されたことになる。おそらく発注量を減らすことは難しいと思われるが、それを実行すると言っている。組織委員会の会計監査をどなたがやられるのか知らないが、週刊誌は是非スクープしていただきたい。オリンピック開催直前の経理担当の事故死の原因がわかるかもしれない。

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2021.07/28 マテリアル・インフォマティクス(7)

材料に関する多量のデータから知を取りだすためには多変量解析が有効である。シミュレーションと多変量解析とを組み合わせる手法もある。多変量解析とマハラビノスタグチメソッドとどちらを使うのか、については、すなおに多変量解析を用いた方がアイデアを練りやすい。


理由は材料に対する経験知を用いることができることと、データの癖に振り回されないためだ。ここでデータの癖とは、サンプル集団が何らかの理由である偏りをもっているサンプリングがなされた場合に隠れてしまう情報がある、と言う意味である。


例えば既存の公開されたデータを使う場合には、その時間における形式知と経験知で集められたデータを用いることになる。高分子科学に限って言えば、複雑で未だ解明されていない現象が存在するので完璧なランダム状態のサンプリングが難しい。


例えば混練プロセスであれば、溶融温度近辺で混練している場合がほとんどであり、剪断混練やカオス混合が行われた樹脂データはほとんど無い。すなわち二軸混練機による剪断混練やカオス混合で改良される物性データが存在しないか極めて少ない条件のサンプリングしか公開データからではできない。


ましてや配合設計に関して全く新しいコンセプトで行われたデータなど存在しないのでどうしてもデータ群にそれら新技術の入っていない癖が残ることになる。


このような問題を理解すると、何らかの新しいコンセプトにより材料を創り出そうと考えたときにマテリアルインフォマティクスでは、いちばちということになる。もう少し気の利いた方法はないのか、と思われた方は弊社にご相談ください。


なお、弊社のホームページに多変量解析でもよく使用する主成分分析と重回帰分析の解析ソフトウェアーを公開している。現在使用料は無料であるが使用した結果については弊社は責任を負わないし、使用した履歴も何も残らないように配慮している。弊社では使用した結果発生した問題点の問い合わせを期待している。

 

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2021.07/27 環境問題と脱プラスチック(4)

家電量販店に行くと入り口にインクジェットの容器回収ボックスがある。正規品ではない詰め替えインクを販売しているメーカーが設置している。面白い事業である。なぜ大手のインクジェットメーカーが行わないのか自明である。


インクジェットプリンターに限らず事務用複写機もビジネスモデルが消耗品で儲ける仕組みになっているからだ。同様の論理でニコンがカメラ市場でシェアーを落としている理由も明快である。サードパーティーの交換レンズの存在を認めていないのだ。


カメラ本体の価格を下げて販売すれば一気にシェアが伸びるはずだ。ただ、レンズは消耗品ではないのでこのような戦略が難しい。すなわち、プリンターや事務用複写機では、利益はともかくハードウェアー本体を安売りしてシェアーをたくさんとれば消耗品の売り上げが増えるのでそこで利益を回収するシステムができる。


その結果、純正品の消耗品では本体の利益もそこに入れる必要があり、どうしても消耗品が高くなる。すなわち、現在のビジネスモデルを成立させるためには、消耗品を高くする必要があるのだ。そこにサードパーティーの参入する機会を作ってしまった。


サードパーティーはインク容器を製造する必要もないので価格をさらに抑えることができる。サードパーティーのインク技術も高度になってきたのでアマゾンには純正品の半額で高品質のインクが売られている。


昔トナーも詰め替え用が売られていたが、静電気の制御で情報を紙に転写する技術は神業に近く、トナーの静電気特性も本体に合わせる必要があり、カラー複写機が普及すると消滅した。


カラー複写機では、トナーの設計がインクジェットのインクよりも難しい。インクジェットのインクでは、本体の目詰まりを起こすようなインクでもとりあえずカラー出力ができるが、カラー複写機では画像品質が著しく落ちる。


年賀状しか印刷しないユーザーはこれに気がつかないから、本体の壊れた原因がインクではなく経年寿命と勘違いする。写真画質インクジェットプリンターも出始めは高価だった。


これを純正インクで10年使用できたが、10年目に買い替えたときに安くなっていた。さらにサードパーティーのインクも販売されていたので買い替えたが、2年で目詰まりによりダメになった。


プリンター開発も経験していたので今では純正インク以外使わないが、プリンターの仕組みを知らなければプリンターメーカーの責任を疑うのかもしれない。しかし、これはサードパーティーのインクを使用したユーザーの責任である。


純正インクを使用し、本体を長持ちするように使うのも環境問題解決に貢献する。プリンターの環境問題の一部はサードパーティーのインクを使う消費者にあることに意外と気がついていない。自由競争経済の仕組みにも手を入れなければいけない問題かもしれない。


今の会社を始めたときに中国企業から詰め替え用のトナー製造のビジネスについて相談されたが、インクジェットのインク詰め替え事業の方が無難だ、と指導している。20年世話になった会社に気を遣ったわけではないが、事業の容易さからである。


この時、インクジェットメーカーには申し訳ないと感じた。しかし、今なら環境問題に対する考え方が当方も少し変化し、そのような事業はSDGsの観点から先行きが危ないからやめとけ、と指導するだろう。


この発想は環境問題とプラスチックを考えるときに重要である。今日本の産業は、素材産業から組み立て産業まで分業体制となっている。家電リサイクル法の成功により同様の法律が将来拡大して立法化される可能性がある。


その時、製品回収を事業としてどのように取り組むのか。回収された製品を資源と捉えるのか、ごみと捉えるのかにより、従来の分業体制に少なからず影響を与える。すなわち、組み立てメーカーが素材産業に進出する機会がこの時生まれるからだ。さて素材産業はどうするのか。


これから仁義なき戦いが環境問題解決のために勃発する。業界を越えた戦いが活発化すればするほど環境問題は解決する方向に向かうのではないか。環境問題の脱プラスチックというシナリオは、ダスティンホフマン主演ではなく菅原文太主演に書き換える必要がある。

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