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2012.10/23 高分子の難燃性評価技術

高分子の難燃化技術は、科学的に開発を進めることができる部分と非科学的なプロセスが必要となる場面があります。

 

例えば評価技術。研究者により意見が異なるかもしれませんが、実火災の全体像を科学的に再現できる評価技術は存在しません。例えば空気中で燃えやすいか燃えにくいかを試験する極限酸素指数(LOI)には温度依存性があり、その依存度は高分子材料により異なります。ゆえに高分子材料のLOI評価では温度を一定に保ち実験を行う必要があります。しかし実火災の温度の高いところでは500℃以上になるので、ザイロンなど一部の高分子を除き大半の高分子材料でLOIの差はこの温度領域においてほとんど無くなります。このような理由から実験データの再現性や線形性に優れた方法でも実火災に対する高分子の難燃性を保証できる万能評価技術になっていません。

 

しかし、実火災を想定した高分子材料の評価技術は材料開発に必要なので、使用状況、用途に応じた難燃規格が各業界に存在します。1980年頃からUL規格が注目され、この規格を採用している業界は多い。UL規格には測定条件が細かく規定され、実験データの再現性をあげる努力が見られます。この規格は30年以上の実績があり、難燃性の規格として信頼できるのですが、実火災との関係において評価手順がすべて科学的に裏づけられているのか、というと疑問の余地は残ります。それでも使用されているのは、UL規格のこれまでの採用実績にあると思っています。

 

高分子の難燃性評価技術の開発は現在でも行われていますが、すべての実火災に適用でき、評価プロセスの意味をすべて科学的に裏付けできる評価技術はできていません。このような理由から高分子の難燃化技術には、どうしても非科学的プロセスが入ってきます。

 

すべての実火災を実験室で再現することは不可能、と感覚的に理解でき、無意識のうちに非科学的プロセスを容認していますが、高分子の難燃性評価技術以外に製品開発における様々なシーンで非科学的プロセスが使われていることをどれだけの技術者が認識しているのでしょうか。非科学的プロセスを科学的ではないから、と言う理由で否定するのではなく、科学的プロセスを尊重しつつうまく活用する「技」が不確実性の時代に新しい技術を生み出すために大切と思っています。そのためのヒントは「なぜ当たり前のことしか浮かばないのか」に書かれています。ご一読ください。

 

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カテゴリー : 高分子

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