活動報告

新着記事

カテゴリー

キーワード検索

2012.11/11 帯電防止に必要な導電性の下限

高分子で帯電防止材料を設計するときに、導電性をどの程度にするのか問題となる。多くの高分子材料は絶縁体であり、添加剤の影響で抵抗が下がったとしても10の12乗Ωcmの体積固有抵抗レベルである。添加剤がブリードアウトし湿度が高い特殊な条件で表面だけの抵抗すなわち表面比抵抗は10の11乗程度に下がることもある。この程度になると、表面に滑り性を付与したりすると帯電しにくくなる。さらに帯電列というのがあり、それを考慮し表面を設計してやれば、使用環境が限られるが帯電防止性能を持つ材料になる。昔の写真フィルムの帯電防止技術はこの程度でありました。

 

写真フィルムの乳剤に含まれるハロゲン化銀は、帯電で容易に感光しスタティックマークと呼ばれる品質問題を生じる。写真フィルムの構造は80-120ミクロン程度の厚みの絶縁体樹脂フィルムに数ミクロンの乳剤(感光層)を塗布した構造なので、帯電防止材料設計無くして商品は成立しない。ゆえに帯電防止技術に関する研究はアカデミアよりも進歩していた。昭和35年ころには帯電防止を目標にした透明導電層を塗布で形成する世界初の技術が小西六工業で完成していた。コニカの図書室には昭和30年ころの資料も残っておりそこには今でも十分通用する帯電防止技術のいくつかがあったが、私が転職した時のコニカの帯電防止技術は、当時の技術に少し毛が生えた程度であり、当時の帯電防止技術の高さをうかがい知ることができた。

 

写真フィルムの体積固有抵抗は、導電性が悪い商品で10の12-13乗Ωcm程度なので教科書に書かれた帯電防止に必要な半導体領域ではなく絶縁体である。しかし、表面比抵抗を測定してみると、10の11乗Ω以下であり、帯電防止は、商品の表面設計が重要であることが理解できる。すなわち感光層の数10倍大きな絶縁体に接触しなければならない商品の帯電防止技術に関する研究は昭和30年前後にほぼ完成し、教科書に書かれた体積固有抵抗よりも1ケタ高い領域でも表面を設計すれば帯電防止できることが分かっていたのである。

 

しかし、表面比抵抗を10の11乗Ωに設計すれば、全体の体積固有抵抗が絶縁領域でも写真フィルムの帯電防止ができるのか、というとそうではない。摩擦抵抗とか、摩擦帯電とか帯電防止設計に必要な各種パラメーターがあり、これらパラメータを制御してスペック内に入れてはじめて帯電防止できるのである。転職した時にとんでもない技術だと印象を持ち、一つのパラメーターで制御できないか20年以上前に取り組みを始めた。

 

弊社では本記事の内容やコンサルティング業務を含め、電子メールでのご相談を無料で承っております。

こちら(当サイトのお問い合わせ)からご連絡ください。

カテゴリー : 電気/電子材料 高分子

pagetop