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2012.12/05 フェノール樹脂の難燃化(2)

M社のフェノール樹脂発泡体には難燃剤が添加されていなくともLOI=35前後という高い難燃性を示しました。他社のフェノール樹脂発泡体では同程度の難燃化レベルを達成するために難燃剤の添加が必要でした。リバースエンジニアリングを行うために化学分析を行いましたが、硬化触媒に硫酸と有機酸の2種を使用していることぐらいしか差異はわかりませんでした。高分子物性の観点から、パルスNMRを測定しましたら、他社のフェノール樹脂では観察されるソフトセグメントが全然ないことが分かりました。

 

フェノール樹脂は、高度に3次元化しているはずで、本来はM社の状態が理想です。このソフトセグメントの量が難燃性能と関係しているのではないかと仮説をたて、難燃剤無添加のレゾール型フェノール樹脂を触媒量や触媒の種類を変えてサンプルを作成し、パルスNMRと熱分析、LOIを測定しました。触媒の種類や量によりソフトセグメントの量が様々に変化しました。そして仮説通り、LOIは、ソフトセグメントの量に相関していました。また熱重量分析で350-400℃の領域で観察されるカーブの状態がソフトセグメントに関係していました。分解速度と残存量の数値化を行い、グラフ化しますと相関していることが分かりました。相関係数は低くなりますが、単純に変曲点の残存量だけでも相関していました。

 

以上のことからレゾール型フェノール樹脂の難燃性を上げるためには、ソフトセグメントの量を減らすことが重要である、との結論が得られたのですが、単純に触媒の種類や量を制御してもM社のような状態になりません。実験計画法を用いて酸触媒の組み合わせ効果を調べましたら有機酸と硫酸との併用が最もソフトセグメントが少なくなることが分かりました。

 

難燃性とソフトセグメントの量が関係しているのならば、ソフトセグメント部分に質量の大きい超微粒子を分散してやれば、見かけ上ソフトセグメントの量を減らすことができます。シリカゾルを前処理し、レゾール型フェノール樹脂に分散しましたところ見かけ上のソフトセグメントの量を制御できることが分かりました。面白いのは難燃剤ではないシリカゾルがソフトセグメントに分散したことにより、LOIが3程度上昇したことです。これらの実験から、高分子の難燃性にメソフェーズ領域の構造が影響していることを理解できました。

 

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カテゴリー : 高分子

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