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2012.12/08 酸化第二スズ

酸化第二スズの高純度単結晶は絶縁体です。このような金属酸化物は、酸素欠陥が生じると半導体になります。また三価もしくは五価の金属をドープしますと半導体から導体になります。InをドープしたITOやSbをドープしたATOは透明導電膜の材料として有名です。1950年代にこの化合物の導電性については研究されており、1960年には小西六工業から高純度酸化第二スズゾルを塗布した帯電防止フィルムの特許が出願されています。この特許が公開されてからコダックからITOを蒸着したフィルムの特許が、また富士フィルムから類似の特許が出願されていますので金属酸化物半導体の研究が活発に行われていたものと推定されます。

 

しかし、1991年にコニカへ入社しましたときにこの1960年代の状況をご存知の方はいませんでした。たまたま帯電防止技術について特許を整理していましたら、富士フィルムが金属酸化物系透明帯電防止技術の緻密な特許網を構築していた状況に遭遇し、ここにどのような穴をあけたらよいのか興味がわき、詳しく調べてみました。面白いことに1970年代中ごろから従来技術に1960年代の技術が特許に全然出ていないことに気がつきました。あたかも富士フィルムが特許権について独占しているかのような状況が出来上がっていました。

 

20年以上前の特許状況を丁寧に調べていて、特公昭35-6616という小西六工業の特許を見つけました。世界初の塗布による酸化第二スズ透明導電膜の特許です。この特許を軸にして新たな特許網を構築することにしました。無事ライバル特許の緻密な網に穴をあけることができ、デジタル向けの感材の帯電防止技術として使うことができました。

 

この時の経験は「特許で困ったら温故知新」という格言として当時の部下に伝承しました。

 

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カテゴリー : 高分子

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