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2012.12/09 酸化第二スズゾル

酸化第二スズは、酸素欠陥の量で、物質の抵抗が1000倍以上変化する。そしてInやSbをドープしなくとも1000Ωcm程度の導電性が出る合成条件も存在する。四塩化スズを加水分解して得られる酸化第二スズゾルは、合成条件を制御すると、1000-10000Ωcmの超微粒子が分散したゾルとなる。このゾルとラテックスを用いると帯電防止用の透明コーティング剤となる。この帯電防止薄膜は昭和35年に小西六工業で発明されたが、1991年まで見捨てられた存在でありました。

 

この技術の面白い点は、この材料を評価した誰もがダメな技術と評価していたことです。原因は2つあり、酸化第二スズゾルの粒子の導電性が合成条件により1000倍以上変化することとパーコレーション転移の制御技術という概念が無かったことである。昭和35年の特許の実施例には驚くべきこととして処理し、この2点については触れられていませんでした。

 

パーコレーション転移については、1970年前後に数学者の間で研究が盛んになりました。また、高純度酸化第二スズの導電性については、1980年ごろに無機材質研究所でその導電性と酸素欠陥の関係が研究されました。このような状況ですから、1991年まで酸化第二スズゾルが良好な透明帯電防止剤として認識されていなくとも納得できなくはないですが、昭和35年の技術は小西六工業で発明されていますから技術の伝承がどうあるべきか、という問題を抱えています。

 

酸化第二スズゾルが透明導電性薄膜に利用できる、と再発見できましたのは、ライバル企業の特許網がきっかけでした。ライバル企業はATOを帯電防止薄膜に使用していました。ただ、ATOは若干青みがかっている問題がありました。この問題について、弊社の電脳書店で販売しています「問題は結論から考えろ!セミナー」、「なぜ当たり前のことしか浮かばないのか」で取り上げている問題解決法で問題解決し、酸化第二スズゾルの実用化に成功しました。ただ、この企画立案時に調査を行い、昭和35年の特許を発見したのですが、正直申し上げますと、特許網に穴をあけるには役立ちましたが、新材料開発に対するモチベーションは少し下がりました。

 

 

カテゴリー : 一般 高分子

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