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2012.12/26 高分子の難燃化手法

高分子の難燃化技術についてこれまでの経験を公開していますが、要点をまとめておきます。大別して溶融型と炭化型があります。前者は、燃焼時にドリップしやすい高分子に有効です。ただしUL94-V2レベルまでの難燃化が限度です。LOIは21以下でも難燃レベルになる手法です。後者は炭化促進剤を添加し、LOIを21以上に設計しますと高分子を難燃化できます。UL94-V2以上も材料設計で狙えます。

 

溶融型では溶融物ができることで難燃化していますから、高い難燃化レベルの達成は至難の業となります。高い難燃化レベルを狙う場合には炭化型以外に方法が無く、溶融しないように材料設計するため、フッ素系高分子を1%前後併用したりします。溶融型ではLOIとの相関は低いですが、炭化型では難燃化処方とLOIとの相関は高く材料設計がしやすいです。炭化型ではLOIを21以上に材料設計し、ターゲットとする難燃化規格にに通過するよう難燃化処方を調整する、という手順になります。

 

具体的な難燃化処方は、酸化アンチモンとハロゲン系化合物の併用あるいはリン系化合物というのが一般的です。30年ほど前から大きな技術の進歩はありません。同等レベルの難燃性を得るための難燃剤成分の添加量(体積分率)でみた時に、酸化アンチモン系が一般的に少ない量で達成できますが、ポリウレタンに限定すれば(実験データが無いので他の系は不明)リン酸エステルとホウ酸エステルの組み合わせは酸化アンチモン系難燃剤よりも低添加量にできます。ホウ素原子は環境問題から使用しにくくなりました。

 

高分子の難燃化技術開発で難しいところは、難燃剤成分の分散状態が難燃性だけでなく他の品質に影響を与える問題です。ゆえにリン酸エステル系や酸化アンチモン系システムを使用できない場面も出てきます。そのような場合には水酸化アルミニウムのような金属水酸化物を30vol%以上も添加しなければいけない場合も出てきます。新しい難燃化技術か期待されるところですが、1970年代に研究された成果を見る限り、酸化アンチモン系あるいはリン系難燃化システム以外に低添加量で高分子を難燃化できる技術は無いようです。

 

難燃剤を添加しなくても難燃性の高い耐熱性高分子を使用するというのもよい方法ですが、物性とコストを考慮すると使用できる領域は少ないです。フェノール樹脂はコストも低いので物性を改良し用途を広げる研究がもう少し活発に行われてもよいように思います。フェノール樹脂の面白いところは高次構造で難燃性が大きく変化するところです。他の樹脂とのポリマーアロイ化で難燃剤を使用せずに難燃化できるポテンシャルがあると思います。例えばPETではUL94-V2レベルをフェノール樹脂との併用で難燃剤を添加せず成功しています。高分子の難燃化を目標にポリマーブレンドをアカデミアで研究していただけたら、と思っています。

 

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カテゴリー : 高分子

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