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2013.02/28 弊社の問題解決法について<42>

「勘(K)と経験(K)と度胸(D)の研究開発」は、新入社員の時に先輩社員から教えられた企業の研究開発精神です。KKDは、日本企業の共通精神と思っていましたら間違いであり、ゴム会社特有の精神でした。

 

ゴム材料については、現在も高分子科学で解明されていない技術が多く存在し、それがタイヤ業界の参入障壁にもなっています。特にプロセシングで材料物性が大きく影響を受ける現象は、現場を経験した技術者でなければ理解できない世界です。

 

しかし、そのような世界でもKKDプロセスで科学的成果は生まれています。KKDを大切にする企業では、技術の伝承に力を入れております。すなわちヒューマンプロセスによる技術は、人から人への伝承以外に正確に伝える手段がないからです。

 

入社後担当したゴム材料の開発では、バンバリーやロール混練作業の練習が日課でした。手動式の不便な道具をわざわざ使用して指導社員からプロセスとゴム物性の関係を教えていただきましたが、驚いたのは30年経過して樹脂開発を担当した時に、その時の勘と経験を問題解決に活かせたことです。

 

勘と経験は、「考える技術」としてどのように役立つのでしょうか。刑事コロンボは、「刑事は年に100回殺人事件を見てるんだ。しかし真犯人はたった1回の経験だから必ずどこかにミスがあるはずだ」と名言を述べています。すなわち、繰り返しの現場観察による積み重ねられた情報とその情報により支援を受けた逆向きの推論で過去の事件における犯人の行動とが結び付けられ、真犯人を推理しているのです。刑事コロンボのドラマには、死体から逆向きの推論を行うシーンがこの他の作品にも何作も存在します。

 

科学分析技術が進歩し、刑事コロンボに限らず多方面において現場観察により得られる情報量は大変多くなりました。高分子材料につきましても、製品の分析を行えば、分子レベルの考察が可能になっています。しかし、その製品が作られたプロセス内の挙動に関しては、現在の科学分析技術を駆使しても解明することはできません。刑事コロンボが、犯人しか知りえない情報をKKDを頼りに逆向きの推論を展開しているのと同様に、高分子材料ではプロセス開発で発揮されるKKDの占める割合は大きいと思っています。

 

<明日へ続く>

カテゴリー : 連載

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