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2013.07/07 科学と技術(静電気3)

「健康のために吸い過ぎに注意しましょう」と箱の横に小さく書かれている。本来タバコは吸わない方が良い。科学的にはよく分からないが、何故かフィルムの低周波数領域におけるインピーダンスの絶対値とタバコの灰付着距離との高い相関が確認されたので、タバコの灰付着テストを廃止した。

 
同じ時期にAGFAから、発振回路を用いたフィルムの抵抗測定法とその方法で評価した写真感材に関するパラメータ特許が公開された。発振回路のRに相当する部分にフィルムをセットし、静電容量を変化させながら共振点を探す測定法である。共振点における静電容量とRを求め、そのRをフィルムの体積固有抵抗とする巧みな方法だ。

 

この測定法で得られるRの値は、フィルムのインピーダンスを測定したときにコンデンサーと抵抗でつくるモデルを工夫してやると同じ値が得られる。AGFAの特許はセンサー部分も特殊な形状に設計した治具を使用していたが、市販電極で簡単に得られるパラメーターをわざわざ難しく見せている、と感じた。

 

ドイツ人のマニアックな発明と言ってしまえばそれまでだが、APSフィルムの五社連合(EK,F、ニコン、キャノン、ミノルタ)から仲間はずれにされたフィルム会社で、似たような発想によりフィルムの新しい帯電防止評価技術を開発していた点を指摘した人がいた。AGFAの特許もAPSで使用されるだろうPENフィルムをうまく権利範囲に含めていた。

 

しかし、特許のクレームを読むだけではそれがよく見えない。PENは、カラーフィルムに使用されていたTACよりも誘電率が高いので、フィルムのインピーダンスを評価すると少し高めになる。そこに気がつけば特許の本当の出願目的が見えてくる。当方も類似の発明を出願していたので、成立がどうなるか心配だったが、AGFAも当方の特許も成立した。

 

面白いことに異議申し立ては一件も無かった。特許は権利書である、とよく言われるが、科学と技術の違いを良く心得ていないと発明の真の目的が見えにくい事例である。
<明日に続く>

 

*本稿のインピーダンス法についてご興味を持たれた方はご相談ください。

カテゴリー : 一般 電気/電子材料 高分子

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