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2013.07/14 科学と技術(リアクティブブレンド2)

ポリエチルシリケートとフェノール樹脂を混合するとすぐに相分離する。高速剪断を使っても均一にならない。χパラメーターがかなり大きく混合比率が1に近いためである。だからフェノール樹脂とシリカの組み合わせやポリエチルシリケートとカーボンの組み合わせの特許が存在しても、ポリエチルシリケートとフェノール樹脂の組み合わせが存在しなかったのである。

 

リアクティブブレンドで行えば均一になるだろうと軽く考え、実験で確認せず企画書をまとめた。エンジニアリングセラミックスからエレクトロニクスセラミックスまでちりばめ当時の通産省のロードマップによる数兆円の市場規模を参考にした、高分子前駆体から合成された半導体用高純度SiCの応用展開を示す派手な企画書だったが、採用されなかった。

 

その後無機材質研究所へ留学機会ができ、猪股先生のはからいで留学中に1週間だけボツになった企画書の実験を行えるチャンスが訪れた。たった1週間で高純度SiCを合成するプロセスを開発しなければならない状況に少し鳥肌が立ったが、当時すでに考案していた弊社の問題解決法を使い、4日でやり遂げる計画を立てた。

 

高純度SiC前駆体の合成検討に当てた時間は8時間である。ポリエチルシリケートとフェノール樹脂のリアクティブブレンドが必ず成功するという確信のもとに実験を行った。美人のメンターが「当たり前」と表現したリアクティブブレンドだったが苦戦した。ひたすらポリエチルシリケートとフェノール樹脂、そして有機触媒の3成分をフェノール樹脂の種類や触媒の量と種類を変えながら混合し続けた。

 

300種類ぐらいの配合を試してある組み合わせでエタノールで膨潤した透明なゲルが得られた。それを加熱したところ相分離せずに透明なまま固まった。実験は朝から始めたが、昼飯も食べるのを忘れ気がついたら夕方になっていた。できあがった処方はロバストの高い処方だった。あきらめずに、美人のメンターの「当たり前」の一言を信じて実験を行った成果である。

<明日へ続く>

カテゴリー : 一般 電気/電子材料 高分子

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