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2013.07/15 科学と技術(リアクティブブレンド3)

ポ リエチルシリケートとフェノール樹脂、酸触媒の3成分によるリアクティブブレンドは当初の予想よりも難しかった。お そらくコンパチビライザ-を用いればもう少し簡単にできたかもしれない。しかし、高純度の前駆体を合成したかったので、不純物を持ち込む原因となる添加剤を使 いたくなかった。

 

また、イソシアネート系化合物とポリオールのシステムと異なり、混合時にポリエチルシリケートに反応点は存在しない。フェノール樹脂と反応するためには、ポリエチルシリケートが一部加水分解してシラノール基を生成しなければならない。ポリエチルシリケートの加水分解速度は酸触媒で加速される。この時問題になるのは、反応速度だけで無く、加水分解したときに出てくるエタノールである。またフェノール樹脂からは反応が進行すると水が出てくる。

 

すなわち、ポリエチルシリケートとフェノール樹脂のリアクティブブレンドは、まず、ポリエチルシリケートの一部が酸触媒で活性化され、フェノール樹脂のメチロール基と反応が進行し、遊離したエタノールは、反応熱で系外へ蒸発してゲル化が進行する、というようにうまく反応バランスを調節できる触媒を選ばなくてはならない。

 

この反応バランスが崩れると、副生成物であるエタノールのため、ポリエチルシリケートだけの分解反応が進行しやすくなり、一気にシリカが生成することになる。午前中の実験では、目視でそれを確認するような実験が大半であった。

 

最初の約50種の配合では、ポリエチルシリケートの加水分解に必要な水を添加していた。しかし反応を行いながら、水の存在がポリエチルシリケートの加水分解を促進していることに気がつき、水を用いない系に変更した。また、フェノール樹脂の相で反応が進行するように有機触媒を選択しているにもかかわらず、ポリエチルシリケートの分解反応が少しでも早くなると生成するエタノールのためゲル化反応が起きにくくなり、これが加速度的に進行しシリカの析出と相分離が生じる。

 

ごみの山を片付けながら、10時間以上行った試行錯誤の実験を思い返してみた。大半のゴミでシリカの析出が目立っていた。成功した実験では、まったくシリカが遊 離していない透明な樹脂が得られていた。面白い系である。

<明日に続く>

カテゴリー : 一般 電気/電子材料 高分子

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